微生物で排水浄化、そのプロセスを知る【排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識 第2回】

2023/09/14
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Chematelsの連載「排水処理を学べる!活性汚泥法の基礎知識」をお届けしています。今回は、国内で最も普及している排水処理技術である活性汚泥法の原理と種類について解説します。

目次

本連載で扱う項目

  • 第1回 水質評価の指標
  • 第2回 活性汚泥法の原理と種類
  • 第3回 運転管理のポイントと用語
  • 第4回 想定されるトラブルと対処法
  • 第5回 物理・化学的処理法と高度処理法

活性汚泥法は最も普及している排水処理技術

「活性汚泥法」は、日本で最も普及している排水処理技術です。1912年ごろに開発されて以来、その基本原理は変わっていません。生活排水の、ほぼすべてと産業排水の多くが、微生物を含んだ活性汚泥とよばれる汚泥によって処理されているのです。活性汚泥法はまさに現代社会にとって不可欠なインフラ技術の一つといえます。

有機物を吸着して酸化分解し、水を浄化

有機物を含む汚水を有する曝気槽に空気(酸素)を供給し、曝気操作をすると、微生物が増殖して浮遊性の活性汚泥が形成されます。活性汚泥中の微生物群などがなす固まりはフロックと呼ばれます。

フロックは、多種多様数の好気性徴生物や有機・無機性の浮遊物質などで構成されています。このフロックが、排水中に含まれ、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand)の成分となる溶解性有機物を吸着して酸化分解するとともに、凝集して沈降分離し、排水を浄化します。これが、活性汚泥法の原理です。

活性汚泥法のポイントの一つである曝気には、二つの目的、すなわち「BOD成分の酸化および生物の呼吸に必要な酸素の供給」と、「曝気槽内の汚泥混合液の均一な混合」があります。

また、活性汚泥と上澄水に分離するのもポイントです。活性汚泥のうち、沈殿したものの一部は曝気槽に戻し、余分な汚泥は余剰汚泥として廃棄物処理します。この活性汚泥処理により、溶解性BODは10mg/L以下程度、また固形物を含めたBODは20mg/L以下程度まで処理されます。従って、原水BOD200mg/Lのときは、90%ほどの除去率を期待することができます。

ズークレアがフロックを形成

「活性汚泥」に存在するフロックは、数千種以上の細菌類、原生生物、後生生物などを由来とし、汚濁物を活発に消化・分解します。活性汚泥のなかで凝集する細菌群はズーグレアと呼ばれ、ネバネバの成分を出してフロックをつくります。

ズーグレアには、微生物が分解できない粒子も取り込んで、汚水から除去する働きもあります。また、活性汚泥には、ツリガネムシをはじめとする原生動物なども生息しており、活性汚泥の性質の善良し悪しを判断する指標になります。

一方で、活性汚泥の中にいる微生物は、季節や水の処理状況によって変化し、また水処理メカニズムについては未解明の部分もあります。管理を怠ると予期せぬトラブルが発生しかねません。

最初沈殿池 → 曝気槽 → 最終沈殿池

活性汚泥法の代表的プロセスを下図に示します。主に、汚泥を沈降させる「最初沈殿池」、吸着・酸化する「曝気槽」、汚泥を沈降分離する「最終沈殿池」などの段階を経ます。

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図1:活性汚泥法のプロセス。代表的なもの

プロセスをより詳しく見ると、最初の排水の段階で、まず土砂や紙などの異物を除きます。

その後、「最初沈殿池」に排水を送り、固形物質や、油分などを除去します。活性汚泥法の処理は24 時間連続処理を原則としていますが、実際の排水では流量や濃度が変動するので、汚濁水の流量と濃度を均一化する目的で、「最初沈殿池」を「流量調整槽」としても用います。

さらに、処理した排水を生物反応槽とも呼ばれる曝気槽)に送り込み、曝気攪拌下で微生物フロックと接触させします(滞留時間は4~24時間)。 ここで排水中の有機物はフロックにより吸着・摂取・分解されます。

次の「最終沈殿池」で、重力沈降により活性汚泥混合液のうちフロックを沈殿させます。沈降時間は2~3時間です。上澄水を塩素殺菌して放流する一方、沈殿したフロックの一部を余剰汚泥として引き抜き、残りは返送汚泥として曝気槽に戻します。この活性汚泥処理では排水中のBODは95%以上除去されます。

標準法の他に長時間曝気法、分注法、汚泥再曝気法、酸化溝法も

活性汚泥法の処理方法にはいくつかの種類があります。

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図2:活性汚泥法の種類
⁠(出所:和田洋六著『ポイント解説 水処理技術』(東京電機大学出版局、2011年刊)p163〜165を参考に編集部作成)

1. 長時間曝気法

曝気時間を18~24 時間と長くとり、活性汚泥が自己消化により減量化することを狙った方法です。前述の代表的プロセスとして紹介した標準法と流れは同じです。曝気槽の入口で酸素消費量が大きく、出口で小さいので曝気量の調整が必要となります。曝気槽の容量が大きいので、中小規模の浄化槽や生物処理設備に適しています。

2. 分注法

曝気槽の全面に原水を分散注入する方法です。曝気槽全体に分散注入されるので、濃厚排水や有害物質が流入しても汚泥への悪影響を防止できます。曝気量を上流側で多くし、下流側で少なくするなど、適切な運転が可能です。

3. 汚泥再曝気法

沈殿槽から汚泥を返送する際、再度、曝気槽を通過させる方法です。通常、沈殿槽に沈んだ汚泥は酸欠状態になっており、これをそのまま曝気槽に返送して空気を送ると、活力を回復するまでに時間がかかります。その点この方法では、汚泥再曝気槽で汚水を高濃度の活性汚泥に曝気して、吸着物質をあらかじめ分解して安定化した後に曝気槽に流入させるので、安定運転が可能です。

4. 酸化溝法

回転ブラシなどの機械曝気装置により、曝気と流動を同時に行なう方法です。構造が簡単で維持管理が容易ですが、大きな設置面積が必要となります。

次回のテーマは「運転管理のポイントと用語」の予定です。

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。