深層学習の「画像認識能力」で品質が向上【AIでサクサク!製造業の課題解決 第1回】

2023/03/30
深層学習の「画像認識能力」で品質が向上【AIでサクサク!製造業の課題解決 第1回】

総務省のAI経済検討会の報告書によると、製造業で人工知能(AI:Artificial Intelligence)を導入している企業は全体の10%程度*1と、決して多くありません。大半の企業は関心がある一方で、「有用な効果が得られるか不安」「何に使ったらよいか分からない」などの理由で導入に踏み切れていないのが現状です。Chematelsの本連載「AIでサクサク!製造業の課題解決」では、製造業でのAI活用の促進と課題解決のために、各企業での導入事例とその効果を紹介します。

連載の目次

  • 第1回 深層学習の「画像認識能力」で品質が向上
  • 第2回 技能継承に悩む企業を新たな技術が救う
  • 第3回 革新的! 工程の熟知が必要だった生産計画を自動化
  • 第4回 設備保全、時代は「定期」から「予知」へ
  • 第5回 MIで材料開発のスピードが飛躍的に向上

AIとの協働により業務効率化が果たせる

そもそも製造業において、なぜAIが必要なのでしょうか。AIの定義はさまざまですが、ここでは「人間の知的活動を再現したもの」とします。最近ではAIという言葉だけが一人歩きをしてしまい、人間の仕事を奪う存在だとイメージする人も少なくないでしょう。

しかし、現在の技術ではAIが人間の代わりをすることは難しく、むしろ人間と協働し、サポートしてくれる存在です。業務を完全に自動化させることはできませんが、特定のタスク向けに作り込んだものなら高い性能を発揮し、時には人間を超えるほどになります。

製造業界は長らく人手不足という課題を抱えています。AIに対して間違ったイメージを持たず、適切にAIを導入すれば既存業務の効率化や高度化を実現できます。

深層学習により不良品を検出

AIがここまで発達した要因に、アルゴリズムの進化があります。近年のブームを牽引するアルゴリズムは、機械学習の一種である深層学習(ディープラーニング)であり、人間の脳の構造をヒントにして複雑な学習を可能とします。

そのディープラーニングが活用されている分野が画像認識です。画像データを読み込むことで、その中から規則性や特徴量を自動で学習するため、製品の外観検査に応用できます。

AIを検査工程に利用したケース

図1:AIを検査工程に利用したケース
⁠(出所:経済産業省「AI導入ガイドブック 外観検査(部品、良品のみ)」)

多くの工場では品質を守るために外観検査を行い、不良品をラインからはじく業務が存在します。検査自体は人が行なうため負担が大きく、製品の品質を保つことが難しい工程の一つでした。その工程にAIを導入し、効率化や品質向上を図るのです。

AIを導入するステップは、良品データと不良品データを読み込ませることで不良品判別モデルを作成し、検査に利用するというものです。不良品データを十分に用意できない場合には、良品データだけを読み込ませてモデルを作成することも可能です。

人間の目と同レベルの検査機も登場

AI外観検査は実際の生産現場で導入が進んでいます。たとえばAI外観検査装置などの製造・販売を行うMusashi AIという企業は、トヨタ自動車のトランスミッションギアの検査工程にAIの装置を実装しています。

AIによる外観検査装置

図2:AIによる外観検査装置
⁠(画像提供:Musashi AI

トランスミッションギアはエンジンの動力を車輪に伝えるための重要な部品であり、検査工程では一日に一人当たり約数万歯の歯面を見ていたようです。検査機を導入したことにより自動化が実現でき、現場の負担が軽くなったとの声も上がりました*2。AIと人との協働により品質の安定はもちろん、業務効率化を達成できた事例といえます。

第2回は「技能継承に悩む企業を新たな技術が救う」の予定です。ご期待ください。

堀内 孝浩(ほりうちたかひろ)

ライター 大学卒業後、食品メーカーにて工程管理、設備管理、製造オペレーターなどを経験。現在は製造業の分野を中心にライターとして活動しており、「文系でも分かりやすい」をモットーに製造業の魅力を伝えている。