アルカリ乾電池・ボタン電池が隆興―電池の基本、1次電池【時代を支える電池の基礎知識 第2回】
2022/07/28
連載の目次
- 第1回 電池の歴史と市場
- 第2回 電池の基本、1次電池
- 第3回 自動車を支える2次電池
- 第4回 リチウムイオン2次電池
- 第5回 電気自動車と電池の将来
Chematelsの連載「時代を支える電池の基礎知識」。第2回は、電池の種類と形状を説明した上で、電池の基本といえる1次電池について解説します。
電池の種類と形状
電池にはさまざまな形式がありますが、大きくは化学電池と物理電池に分類されます。電池の分類を表1に示しました。

表1:電池の分類。SOFCはSolid Oxide Fuel Cellの略。PEFCはPolymer Electrolyte Fuel Cellの略
(筆者作成)
物理電池は、太陽電池に代表されるように、外部から光や熱を加えることで、電子がエネルギーを得て電気として取り出される形式のものです。
一方、化学電池には1次電池と2次電池があり、どちらも化学反応により電子が取り出される形式となっています。1次電池は充電できないのに対し、2次電池は充電して繰り返して使えるという違いがあります。
電池の大きさは、単1、単2、単3、単4などの規格によって定まっており、形状は、円筒形、角型、ボタン型、平板型に分類されます。
材料は、電極、活物質、電解質、セパレータ、容器から成り立ち、電解質が外部に漏れないように、ガスケットでシールがなされています。このうち、最も重要な活物質は粒状物質ですが、酸化・還元といった電子授受に直接的に関わっているので、反応面積を確保するため、分散剤や導電材が混合された状態で用いられています。
最も普及しているアルカリ乾電池
ここからは、1次電池について解説します。
アルカリ電池は最も普及している電池です。「アルカリ」という言葉は、電池内部に使用されている電解液の水酸化カリウム水溶液がアルカリ性であることに由来しています。
従来のマンガン電池と比較すると、形状は変わらないものの、電池容量が2倍程度あり、使用中の電圧低下が少ないのが特徴です。デジタルカメラの普及とともにシェアを伸ばし、現在でも幅広く使用されています。
アルカリ電池の構造を図1に示しました。形状は円筒形や角型で、公称電圧は1.5Vです。材料としては、正極活物質に二酸化マンガンと黒鉛の粉末、また負極活物質に亜鉛粉末と水酸化カリウムの電解液、それに塩化亜鉛などが用いられています。

図1:アルカリ電池の断面構造例
(出所:電池工業会ウェブサイト図版を参考に編集部作成)
亜鉛粉末はアルカリ電解液とゲル化剤を均一に分散させた状態で用いられています。粉末にすることで、電解液との接触面積を大きくさせているのです。また、正極と負極を絶縁させるためにセパレータが設けられています。電解液には水酸化カリウムが用いられています。
電池の反応式は次式で示されます。

小型電子機器で広く使われる酸化銀ボタン電池
おなじく酸化銀電池は、正極材料に酸化銀、負極に亜鉛、電解液にはアルカリ性の溶液を用いた1次電池であり、アルカリ電池の一種です。
製品のほとんどはボタン型であり、小型の電子機器で広く使用されています。表1では「アルカリボタン電池」と表しています。
この電池の特徴は、開放電圧と放電電圧の放電量に変動が少なく、放電電圧が1.6Vと長期間安定していることにあります。従って、容積当たりのエネルギー密度が大きく、自己放電も少なく使用温度が広いことが利点です。高価ですが、アルカリ電池に比較して終止電圧に達するまでの時間が1.5倍程度あり、長期安定性を示しています。
ボタン電池の構造を図2に示します。

図2:ボタン電池の断面構造例
(出所:「一次電池技術発展の系統化調査」を参考に編集部作成)
負極材料には、粒状の亜鉛、電解液、ゲル化剤が混合されて用いられ、正極には酸化銀の導電性を高めるために少量の黒鉛が混入されています。
電池の反応式を以下に示します。

水銀電池の環境問題に業界が対処
電池における環境問題として、水銀問題に触れておきます。水銀は、マンガン電池の添加剤として初期から使用されていました。亜鉛による腐食を抑えるためです。その結果、使用済みの乾電池が土壌汚染を引き起こすなど問題となりました。
この問題に対し、電池工業会は1983(昭和58)年から電池での水銀使用削減に本格的に取り組みました。その結果、当初9%の水銀添加がありましたが、1992年には水銀の使用ゼロを達成しました。
ちょっと、寄り道「電気を出すウナギのしくみ」
デンキウナギは発電することが知られています。これは「生物電池」といえます。
人間も含め、すべての生き物は、体内にあるナトリウムイオンとカリウムイオンを用いて筋肉を動かしています。このとき微弱な電気が発生します。電気魚は、これを利用して、筋肉細胞が変化した発電器官で電気を生み出しています。
発電器官の中には小さな発電組織がたくさん集まっており、1個では0.05V程度の弱い電圧ですが、これらを直列につなぐことで大電圧を発生させています。ちなみに、デンキウナギは、600Vもの高電圧を発生させますが、自分自身は感電しません。
次回テーマは「自動車を支える2次電池」の予定です。
参考文献
1. 電池工業会ホームページ
https://www.baj.or.jp
2.吉田和正「一次電池技術発展の系統化調査」(2007年発表)
3.パワーアカデミー「電気ウナギは、なぜ電気を出せるのか?」
https://www.power-academy.jp/electronics/familiar/fam02300.html
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
