代替肉「だいたい肉」より期待大!【5分で5年後も見えてくる!世界と日本の食糧事情 第4回】
2022/06/14
連載の目次
- 第1回 さらば悪き風習!ルール変更とDXで「食品ロス」削減
- 第2回 遠からず!?回転寿司で「ゲノム編集ネタ」が運ばれる日
- 第3回 包装で延ばそーう!消費期限と賞味期限
- 第4回 代替肉「だいたい肉」より期待大!
- 第5回 昆虫食、ゲテモノからスグレモノに進化中!
最新テクノロジーを交えながら食品業界の注目テーマを取り上げるChematelsの連載企画「5分で5年後も見えてくる! 世界と日本の食糧事情」。第4回は、エンタメニュースなどでも話題に上がることが増えてきた「代替肉」です。代替肉の歴史を改めて振り返りつつ、最近のトレンドも紹介します。
代替肉の起源は1960年代にさかのぼる
代替肉とは、植物を原料として動物肉の食感に近づけた食品のことです。
「代替肉は最近の話題」という印象がありますが、代替肉そのものは1960年代からあります。「植物性たん白」や「大豆たん白」という呼称で、工場で生産されるハンバーグやシュウマイ、肉まんなどに混ぜて使われてきました。

図1:大豆たん白を使用した冷凍シュウマイ(筆者撮影)
植物性たん白は、大豆や小麦からタンパク質を抽出して粉末や粒状に加工したものです。ハンバーグやシュウマイでは、汁を吸収することでうま味を保持する役割があります。また、食感はひき肉に近く、水分を吸収してカサ増しできる利点もあります。
ただし、植物性たん白は、加工食品における高価な肉の代替品と位置付けされ、コスト削減という消極的な手段として使われてきました。
トレンドとなった大豆ミート
2010年代になると、植物性たん白を前面に押し出したハンバーガーなどが登場します。パティに動物肉を一切使わず、代わりに大豆を使っていることから「大豆ミート」と呼ばれるようになりました。主に健康意識の高い女性から注目を集めるようになり、いまもスーパーやカフェで見かけることがあります。

図2:大豆ミートを打ち出した商品(筆者撮影)
大豆ミートは、大豆加工品や、大豆から抽出したタンパク質に調味料や油脂などを加えて作られています。コスト削減という消極的な理由ではなく、大豆使用を打ち出したブランド戦略という側面があります。あらゆる動物性食品を避けるヴィーガンの人たち向けという目的もあるようですが、原材料に動物油脂や粉末卵白などの形で卵を使っている場合もあるため、個々に判断する必要があります。
そして2019年ごろから、「代替肉」という言葉が再度注目されるようになりました。大豆以外の植物も原料に使っているときに使われる言葉です。いままでよりもさらに動物肉に近づけ、焼肉のようにそのまま焼いても動物肉と同じ味や食感になるものも登場しました。サブスクリプションのミールキットとして、また焼肉店でもすでに導入されています。
ちなみに、似たような言葉に「培養肉」があります。培養肉は、動物細胞を培養して人工的に生肉にしたものであり、植物を原材料とする代替肉とは異なります。味だけでなく見た目も食肉に近づけるとして、大学や食品メーカーが開発に取り組んでいますが、基礎研究段階のため市場に出回るにはまだ時間がかかりそうです。
代替肉が食糧危機を救うかはコスト次第
代替肉が注目されている理由は、健康志向やヴィーガンブームが高まっているからだけではありません。増え続ける世界の人々の胃袋を満たし、地球環境を維持するためには、特に赤肉などの肉や乳製品の消費を抑え、野菜食を増やす必要があると考えられているからです。
畜産業では、大量の水や飼料、そして土地を必要とします。大きなコストとリソースをかけた割には得られる食肉や生乳が少ないという、いわばコストパフォーマンスの低さが指摘されているのです。また、ウシのゲップに含まれるメタンガスは温室効果ガスの一種であり、気候変動の要因として無視できない量とされています。
とはいえ、現在の代替肉はまだ高価です。いかに普及させて、どこまで生産コストを下げられるかが今後の課題といえます。
まだまだある「代替〇〇」
代替肉の他にも、さまざまな理由を背景に「代替〇〇」とよばれるものがあります。
「代替ウナギ」。土用の丑の日といえばウナギですが、ニホンウナギは2014年に「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」とされる「絶滅危惧1B種」として国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト」に掲載されました。産卵から成魚、そしてまた産卵まで飼育する完全養殖は実現しておらず、密漁や不透明な輸入取引などのリスクもはらんでいます。これらを背景に、ウナギの代わりにイワシを使ったものや、白身魚を加工してウナギの蒲焼きを再現した商品が出ています。
「小麦」。ウクライナ情勢による小麦の価格上昇を懸念して、小麦の代わりに米粉を使うことも想定されます。以前から小麦アレルギー対策のためにパンやケーキなどに使われることがありましたが、コスト削減という意味合いも含まれるようになっています。
「卵」。代替肉のように植物由来の原材料を使っているのが、代替卵です。スクランブルエッグや、オムライスの上に乗せるような半熟状態でつくられており、業務用やクラウドファンディングサイトで販売されています。卵アレルギーの人向けという側面もあります。
新しいテクノロジーによって「代替◯◯」が普及することは、新しい食文化の誕生を意味するのかもしれません。
次回は、「昆虫食、ゲテモノからスグレモノに進化中!」の予定です。どうぞご期待ください。
主な参照先
・日本植物蛋白食品協会「植物性たん白について」
https://www.protein.or.jp/protein/
・Willett W, et al. Food in the Anthropocene: the EAT-Lancet Commission on healthy diets from sustainable food systems. Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):447-492.
・消費者庁「プラントベース食品関連情報」
https://www.caa.go.jp/notice/other/plant_based/
島田 祥輔(しまだしょうすけ)
サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。
