包装で延ばそーう!消費期限と賞味期限【5分で5年後も見えてくる!世界と日本の食糧事情 第3回】
2022/06/07
連載の目次
- 第1回 さらば悪き風習!ルール変更とDXで「食品ロス」削減
- 第2回 遠からず!?回転寿司で「ゲノム編集ネタ」が運ばれる日
- 第3回 包装で延ばそーう!消費期限と賞味期限
- 第4回 代替肉「だいたい肉」より期待大!
- 第5回 昆虫食、ゲテモノからスグレモノに進化中!
テクノロジーから食品業界の未来に迫るChematels連載企画「5分で5年後も見えてくる!これからの食糧事情」。第3回のテーマは、消費期限・賞味期限です。消費期限・賞味期限は消費者の安全のために設定されているものですが、その基準が厳しすぎると、「本当はまだ食べられるのに廃棄されてしまう」となり、食品ロスの問題につながります。
こうした中、包装技術の進歩により、以前よりも長持ちする食品が増え、消費期限・賞味期限を見直す動きがあります。ここには化学業界が参入できる可能性が大いにあります。
劣化スピードで「消費」と「賞味」、明確な線引きはなし
まず、消費期限と賞味期限の違いについて解説します。
消費期限は、「その期限を過ぎたら食べないほうがよい期限」のことです。品質低下のスピードが早く、細菌増殖などによって食中毒のリスクが急上昇する場合に使われます。刺身や生麺、店内調理の惣菜などには消費期限が設定されています。
一方の賞味期限は、「おいしく食べることができる期間」のことで、この期間を過ぎたからといってすぐに食べられないわけではありません。スナック菓子や冷凍食品、香辛料などに使われます。
消費期限は比較的短く設定され、賞味期限は長めに設定されます。両者に明確に区切るラインはありませんが、10日前後が一般的なようです。

図1:賞味期限と賞味期限の違い(筆者作成)
安全係数をかけて期限を決める
では、消費期限や賞味期限はどのように決められているのでしょうか。厚生労働省と農林水産省が定めた「食品期限表示の設定のためのガイドライン」では、食品の特性に配慮した客観的な項目(指標)に基づいて期限を設定する必要があるとしています。
同ガイドラインでは、客観的な項目(指標)のことを、理化学試験や微生物試験などによって数値化することができるものとしています。
理化学試験とは、粘度、濁度、過酸化物価、水素イオン指数(pH)などを測る検査です。また、微生物試験には、一般生菌数、大腸菌群数、大腸菌数などの測定があります。特に微生物は食中毒に直結するため、食品の種類ごとに細かく基準が設けられており、実務では都道府県の保健所に基準値などを問い合わせることになります。
また、人が味や香りを感じることで品質を判定する官能検査も、一定レベル以上の味覚や嗅覚をもつ複数人で評価すれば、客観的な項目(指標)にできるとしています。
上記の検査によって、例えば「9日間は毒性なく食べられ、見た目も味も問題なし」という結果が得られたとします。しかし、食品はどうしても均一に作ることができないため、品質にはばらつきがあるはずです。そこで、「安全係数」というものをかけて、より安全側に振るようにしています。
安全係数は企業や商品によって異なりますが、0.7から0.9が使われています。検査結果では9日間大丈夫だとして、安全係数に0.8を用いると、
9日間 × 0.8 = 7.2日間
となり、1日単位で表示するときの消費期限は7日間に設定されます。
包装技術で期限を延ばせ
消費期限や賞味期限の設定手順には、これらの期限を延ばす手がかりがあります。酸化を抑制する包装資材があれば、理化学試験をクリアできるはずです。細菌の増殖には酸素が必要不可欠ですが、酸素を含まないガスを充填してパッケージングすれば、微生物試験をクリアして賞味期限を延長できる可能性があります。
例えば、日本即席食品工業会は2014年に、製造技術や包装技術の進歩を理由に、袋麺の賞味期限を6カ月から8カ月に、またカップ麺は5カ月から6カ月に延長しました。他にも、高い酸素バリア性の素材を個包装や容器に使うことで、賞味期限を延長した切り餅やマヨネーズの事例もあります。
パッケージングするときに窒素ガスを充填すると、酸化防止と細菌増殖抑制の両方を実現できます。スキンパック包装という方法を使うと、肉や魚にフィルムを密着して真空包装でき、ドリップとも呼ばれる液汁が出にくくなるため消費期限を延長できる場合があります。
新しい素材や包装機器によって、消費期限や賞味期限を延長できる可能性があります。ここには食品業界だけでなく、化学メーカーや機器メーカーからの協力も欠かせません。
次回は、「代替肉『<span class="emphasis">だいたい</span>肉』より期待大!」の予定です。どうぞご期待ください。
主な参照先
・消費者庁「食品の期限表示に関する情報」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/expiration_date/
・厚生労働省・農林水産省「食品期限表示の設定のためのガイドライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/expiration_date/pdf/syokuhin23.pdf
・厚生労働省「食品別の規格基準について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/jigyousya/shokuhin_kikaku/index.html
島田 祥輔(しまだしょうすけ)
サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。
