さらば悪き風習!ルール変更とDXで「食品ロス」削減【5分で5年後も見えてくる!世界と日本の食糧事情 第1回】

2022/05/24
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連載の目次

  • 第1回 さらば悪き風習!ルール変更とDXで「食品ロス」削減
  • 第2回 遠からず!?回転寿司で「ゲノム編集ネタ」が運ばれる日
  • 第3回 包装で延ばそーう!消費期限と賞味期限
  • 第4回 代替肉「だいたい」より期待大!
  • 第5回 昆虫食、ゲテモノからスグレモノに進化中!

今回から5回にわたり、「5分で5年後も見えてくる! 世界と日本の食糧事情」を連載します。テクノロジーの発展により、食品業界にはかつてない変革が起きています。これからの食糧事情を、食品業界以外の人も身近に感じることができるように紹介します。

第1回は、持続可能な開発目標(SDGs)にも直結する「食品ロス」についてです。

日本では毎日1人が茶碗1杯分のご飯を捨てている計算

食品ロスとは、「食べることができるのに廃棄される食品」のこと。賞味期限内の売れ残り、規格外品、食べ残しなどを指します。

日本では、2018年度の推定で、1年間に約570万トンもの食品ロスが発生しています。企業からは約309万トン、家庭からは約261万トンとなっており、国民1人当たりに換算すると1日に約124グラムの食品ロスが発生しています。誰もが毎日、茶碗1杯分のご飯を捨てている計算です。ささやかな量に思えるかもしれませんが、日本の食料自給率が40%以下であることを考えると、「輸入に頼っていながら捨てている」という矛盾した行動をとっていることになります。

「持続可能な開発目標」(SDGs:Sustainable Development Goals)にも「食品ロス」が明記されています。ゴール12「つくる責任 つかう責任」のターゲット12.3には、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」とあります。

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図1:「持続可能な開発目標」(SDGs)のゴール12「つくる責任 つかう責任」には食品関係も含まれる

日本の法律では、「食品リサイクル法」の中で、食品関連事業者が取り組むべき対策が述べられています。食品リサイクルというと、余った食品を肥料や飼料にすると想像しがちですが、最も高い優先順位として食品ロスの「発生抑制」を挙げています。そもそも余らせない、ということです。

では、食品ロスを減らす方法には何があるのでしょうか。ここでは、食品業界にできること・求められていることを三つ紹介します。

その1 ―「3分の1ルール」の見直し

筆者は2006年から2012年まで食品メーカーに勤務していましたが、当時からあった風習が「3分の1ルール」です。これは、「賞味期限の3分の1が過ぎるまでに小売店に納品しないといけない」というもの。小売店としては、賞味期限が迫っているものを並べたくないため、いつからかこのようなルールが生まれたようです。

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図2:「3分の1ルール」の概要。実際には小売店でも、「賞味期限が3分の1を切ったら在庫処分セールを行う、または廃棄する」といった風習があり、これもセットで「3分の1ルール」と呼ぶことがある(筆者作成)

図2の場合、製造から4カ月以内にスーパーに並ばないものは、賞味期限があと8カ月もあるのに廃棄されることになります。これは大きな食品ロスです。

この「3分の1ルール」について食品業界や卸売業界、小売業界そして政府が議論を行い、「賞味期限の2分の1を切るまでに小売店に納品できるようにする」という「2分の1ルール」への転換が進んでいます。大手スーパーでは、賞味期限が180日以上の飲料や菓子などで「2分の1ルール」を採用するようになっています。

ちなみに、米国では以前から「2分の1ルール」、フランスではさらに長い「3分の2ルール」が一般的なようです。

その2 ― 賞味期限表示を「年・月・日」から「年・月」へ

「3分の1ルール」の見直しと同時に進んでいるのが、賞味期限表示の変更です。これは通常、「年・月・日」のところ、賞味期限の長いものは「年・月」と、月単位で区切るようにすること。これにより、1日単位で発生する食品ロスを減らすことができます。卸売業や小売店にとっても、月単位でまとめて管理できるようになり、管理コストの削減も期待できます。

国の基準では、年月表示は、賞味期限が3カ月を超える食品で認められています。飲料や菓子、レトルト食品、調味料ですでに実施されており、冷凍食品などでも検討する企業が増えています。

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図3:賞味期限が年・月表示の菓子。一緒に印字されている英数字は、メーカーが独自に暗号化した製造日や時間帯、生産工場などを示す(筆者撮影)

もちろん、賞味期限や消費期限そのものを延ばす取り組みもあります。これについては第3回で詳しく取り上げます。

その3 ― 売れる量だけ発注する

小売店や外食産業では、過剰発注しなければ食品ロスは発生しません。食品ロスの廃棄にもコストがかかるため、適切な発注量はコスト削減にもつながります。

商品や食材の発注は、これまで感覚に頼っていたところも多くありましたが、さまざまなデータを組み合わせて需要を予測するテクノロジー面の進化があります。意外なコラボレーションでは、気象会社がもつ気象データと組み合わせて、豆腐や冷やし中華つゆの売上を予測するというものがあります。これも一種のデジタルトランスフォーメーション(DX)といえそうです。

風習とは変えられるもの

食品業界や外食産業は長い歴史があるがゆえに、なかなか風習を変えにくいかもしれません。しかし、風習は絶対に守るというものではなく、明確な理由があれば変えるべきものです。

筆者は10年以上前の会社員時代、中国に出張へ行く機会が多くありました。中国では、客人をもてなすときに「食べきれないほどの料理を注文する」という風習があり、客人はわざと食べ残しをして「食べきれないほどの料理を提供してくれてありがとう」という意思を表明するのがマナーとされてきたのです。

ところが、中国でも食品ロスの問題が注目されるようになり、この風習も変わりつつあります。北京や上海などの大都市では、「食べ残しはよくない」という考えが広まっています。

日本でも最近は、おせち、恵方巻き、クリスマスケーキなどは事前予約制にするところが増えてきました。商品を大量に並べて購入意欲をかき立て、余ったら捨てればいいという考え方は過去になりつつあります。

みなさんの業界や会社でも、今の時代にそぐわない風習がないか、その風習はどのように変えられるか、考えてみてはいかがでしょうか。

次回は、「遠からず!? 回転寿司で『ゲノム編集ネタ』が運ばれる日」の予定です。どうぞご期待ください。

主な参照先
⁠・農林水産省「食品ロスとは」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html

島田 祥輔(しまだしょうすけ)

サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。