【化学業界の基礎知識 -SCM編-】第5回 今後のサプライチェーンマネジメントに情報共有と技術導入は必須

2022/04/05
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連載の目次

「化学業界の基礎知識 SCM編」最終回として、これからのサプライチェーンマネジメント(SCM)についての共通課題を見ていきます。加速するグローバル化、ITなどの情報技術の進展、深刻化する環境問題、電気自動車(EV:Electric Vehicle)の急展開などが挙げられます。

グローバル化をめぐるSCMの課題はどういったもの?

サプライチェーンを構成する海外グループ企業との情報共有が重要課題の一つといえます。

日本の企業では2018年の海外子会社売上が2009年比で1.8倍になっています。

また、日本を取り巻く経済協力協定として、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)がありますが、日本の成長戦略として各国との連携は外せません。

コスト削減、在庫量の最適化、納期短縮などを図る場合、海外現地企業との情報共有化を行い、全社的にSCMを環境整備することが必須といえます。

情報技術についてはどんなことに注目すべき?

モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、第5世代移動通信システム(5G)、デジタルツインなどが、これからのSCMを技術的に支えていきそうです。

モノのインターネット(IoT:Internet of Things)は、あらゆるモノがインターネットでつながることにより実現するサービスやビジネスモデル、またそれを可能とする技術を指します。SCMにおける活用例としては、梱包容器やパレットに電子タグを付け、出荷情報や在庫情報をリアルタイムで共有可能にするといったものがあります。

人工知能(AI:Artificial Intelligence)はご存知のように、人間の能力に近い機能を持ったコンピュータによる情報処理のしくみのことです。SCMにおける活用例としては、ビッグデータ、つまり従来のデータベース管理システムでは記録、保管、解析が難しい巨大データ群を、ベイズ統計という手法で分析し、需要予測を行い、SCMに携わる各部門で共有するといったことが可能になります。なおベイズ統計とは、不十分なデータでも、本来起こるであろう事象の確率(主観確率)を導き出す統計手法のことで、人工知能の一要素である機械学習などで用いられています。

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第5世代移動通信システム(5G:5th Generation mobile communication system)は、従来の移動通信システム(4G)の通信速度をさらに高めた移動通信システムのことです。クラウドサーバーと多数の機器間の通信に、速度と同時多接続性が有効です。SCMでも地図や図面、動画での情報提供が容易にできるようになり、情報の的確な把握と共有化がリアルタイムで可能となります。それにより、適切な意思決定が迅速にできるようになります。

デジタルツインとは、IoTなどで集めたリアルな情報をもとに、コンピューターの仮想世界で現実に近い物理空間を再現する技術です。これをSCMに活用し、あらゆる状況やその変化をシミュレーションし、生産フローを最適化することが可能となります。

環境問題をめぐるSCMの課題はどういったもの?

サプライチェーンのパートナーとの協働が取り組むべき課題の一つです。

環境問題は地球規模の課題であり、1社だけでは対応できません。場合によっては1地域や1国だけでも対応不可能でしょう。企業はサプライチェーンのパートナーと協働して環境保全に取り組む必要があります。

環境省と経済産業省は共同で、脱炭素経営に関する情報プラットフォーム「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」において、サプライチェーンとしての排出量の基準を示しています。

自動車産業のSCMはどうなっていく?

電気自動車(EV)と自動運転の技術がSCM技術の向上に寄与し、SCMがさらに発展していきそうです。

全世界の自動車産業に起きている波が、従来のガソリン車に代わる電気自動車(EV:Electric Vehicle)と、高度なIT技術の上に成り立つ自動運転技術の普及促進です。

従来、自動車業界のSCMは産業界の先端を行くものでしたが、電気自動車の技術はさらに高度で広範囲なSCM技術の向上に寄与します。

すでに自動車業界では製品開発において前述のデジタルツインが使われており、今後SCM全体に幅広く生かされていくことが予想されます。

SCMは常に変化し、発展するもの!

サプライチェーンマネジメントに完成形はありません。社会が変化すればSCMも変化を求められ、また技術が進歩すればSCMも進歩していくものだからです。社会や技術の動向に常に目を向け、「SCMにどう影響するか」を考えることが、変化し、発展しつづけるSCMとの向き合い方の基本といえます。

「化学業界の基礎知識 SCM編」は今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。