【化学業界の基礎知識 -SCM編-】第2回 成功の鍵はサプライチェーンの可視化
2022/03/15
連載の目次
- 第1回 物流よりロジスティクスより大きなサプライチェーンマネジメント
- 第2回 成功の鍵はサプライチェーンの可視化
- 第3回 業界ごとに異なるサプライチェーンと管理方法
- 第4回 転ばぬ先のリスク対策
- 第5回 今後のサプライチェーンマネジメントに情報共有と技術導入は必須
サプライチェーンマネジメント(SCM)で大切なことは?
サプライチェーンの川上から川下までを「可視化」することが大切となります。
「可視化」は、単に見えるようにすることではありません。「そのままでは見えないものを、見えるようにすること」であり、また「見たい人が見たい時に見られるようにすること」でもあります。
可視化の目的は、もちろん見えるようにすること自体にあるのではありません。目的は、具体的な問題を特定し、実行策を判断し、具体的な改善効果を生み出すことにあります。

サプライチェーンマネジメントを可視化する上でのポイントは?
可視化の手段として、最新の情報技術を活用することがポイントの一つです。可視化のための技術には、モノのインターネット(IoT:Internet of Things)や人工知能(AI)などがあります。詳しくは第5回「今後のサプライチェーンマネジメントに情報共有と技術導入は必須」でお伝えする予定です。
もう一つ、ポイントがあります。業務部門自らが推進するアプローチが重要となります。SCMの可視化の一般的なアプローチは、以下の手順になります。
1. 各部門の管理すべき情報を可視化・共有化する。
2. その情報を部門横断的な視点から分析し、モノの動きをフローとして把握する。
3. 仕入れ先や物流業者、さらに消費者など、サプライチェーンに携わる企業や人などの構成員の関係性を可視化する。
4. サプライチェーン全体の動きを可視化し、分析する。
このようにして、あらゆる需要と供給の変化、また物流手段の変化に対して、サプライチェーンマネジメントを最適化するための立案をします。
在庫管理を効率的に行うには?
やはり可視化が重要です。つまり、「サプライチェーン上の在庫の可視化」を実施することです。
ただし、実施するにはいくつかの課題が考えられます。ここでは、3つの要因を挙げてみます。
1. 商品や顧客ごとに条件を決めていて出荷条件が一律でないためマスター登録ができず、一元管理ができない。
2. 営業上の慣例などから立てた不明確な予定をシステムに入れられず、統合した管理ができない。行き当たりばったりの在庫コントロールになってしまう。
3. 在庫状況がリアルタイムに見えない。管理システム上の不都合。
これらの課題に対しては前述のとおり、技術の活用が重要となります。AIや機械学習などの先進的な情報技術を効果的に活用して、「仮受注」や「キープ」などと呼ばれる不明瞭な状態も設定できるようにして、未確定情報も可視化できるようにします。SCMに関わる多くの作業を自動化できるようにして、SCMの最適化を迅速に図っていきます。
「在庫の可視化」でどんな利点を得られる?
出荷予定や入荷予定を加味した将来の在庫推移を見たいようなとき、確定した受注・発注だけに限った場合の在庫推移と、未確定のものまで含めた場合の在庫推移を比べることが可能になります。
在庫がリアルタイムに見えないという問題も生じえます。これは多くの場合、他社とのシステムがうまく連携できないことに起因します。解決の鍵は、物流倉庫と連携し、情報のやりとりを的確にしていくことです。
複数の物流倉庫システムと柔軟に連携できるようにし、タイムラグを減らして、情報精度を出荷判断に使える程度まで高めます。得意先との間でも、可能な範囲で在庫情報を共有するようにします。
可視化の先にあるものを考える!
状況を可視化することで、おのずと問題が見えてくることもあります。しかし、より意識的に、「可視化することで具体的な問題を特定し、実行策を判断し、具体的な改善効果を生み出す」といったことまで考えておくと、可視化の効果はさらに高まります。
次回は第3回「業界ごとに異なるサプライチェーンと管理方法」の予定です。ご期待ください!
鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net
1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。
