バイオマスプラスチックの開発と課題【バイオプラスチックの基礎知識 第3回】
2021/07/27
循環型社会の実現に向け、開発が加速するバイオプラスチック。本連載では、その開発状況や現状の課題、今後の可能性についてお伝えしています。今回は、植物資源を原料とするバイオマスプラスチックについて掘り下げます。
連載の目次
第3回:バイオマスプラスチックの開発と課題
第4回:政府の取り組み「バイオプラスチック導入ロードマップ」
第5回:生分解性プラスチックとマイクロプラスチック問題
バイオマスプラスチックの注目株は?
バイオマスプラスチックは、大きく分けて「新規化合物型バイオマスプラスチック」と「既存プラスチックの原料をバイオマス化したもの」に分類されます。

まず、新規化合物型バイオプラスチックとしては、2000年代初頭に米国のネイチャーワークス社によって生産が開始された、ポリ乳酸(PLA)が代表的です。PLAはバイオプラスチック開発促進の端緒となりました。PLAは生分解性プラスチックでもありますが、その用途としては、ほとんど非生分解性の製品分野で使用されています。現在では、コルビオン社(本社オランダ)のタイの生産拠点や、複数の中国企業での生産開始も報告されており、今後も拡大が期待されます。
各種のバイオナイロン(バイオポリアミド;バイオPA)は、ひまし油を主原料とし、耐油性、耐熱性等の特徴から注目されてきました。近年は、再生可能な原料由来というコンセプトから、さらに注目度が上昇しています。
三菱ケミカル社のDURABIO™(デュラビオ™)は、植物由来のイソソルバイド(イソソルビド)が主原料のバイオポリカーボネートです。高い透明性、優れた光学特性、従来のポリカーボネート(PC)に匹敵する耐衝撃特性があるバイオエンジニアリングプラスチックで、従来のPCを凌ぐ性能が注目されます。
既存プラスチックのバイオマス原料化も

一方で、従来の石油化学製品の基礎原料であるエチレン等をバイオエタノールから製造する計画を始めたのはブラスケム社(ブラジル)です。2010年にはバイオポリエチレンの生産を開始しました。
同様に、バイオPET(ポリエチレンテレフタレート)も、再生可能な資源由来のコンセプトで市場の注目を集めています。植物由来のバイオエタノールから、モノエチレングリコール(MEG)を合成し、これを原料にバイオPETが生産されます。
両製品とも、素材としては既存品と同一であり、従来の製造・加工体制をそのまま使える解決手段(Drop in Solution)として、大きく期待されてきました。しかし、機能や物性の面で従来との差別化が難しく、さらにコスト面では従来品に及ばないため、現在のところ、需要の大幅な拡大は見られていません。
最近の開発動向としては、エネルギー会社であるネステ(フィンランド)や大手の化学会社が、経済性と廃棄物管理の問題解決も絡めて、回収プラスチックゴミや、有機系廃棄物の再資源化として、石油化学の基礎製品であるポリプロピレン(PP)などを製造する開発計画に着手しています。また、PETを上回る高機能性が期待される、ポリエチレンフラネート(PEF)など、新規のバイオプラスチック素材の開発計画も積極的に取り組まれています。

表 主要バイオマスプラスチック製品(著者作成)
バイオマスプラスチック 普及の課題
再生可能な資源を原料に、日常生活に必要かつ有用なプラスチック素材を持続的に供給することを目指すバイオマスプラスチックの促進。その取り組みの意義に、異論の余地はありません。しかし汎用素材として受け入れられるか否かは、素材のコストパフォーマンスが趨勢を決めることは明らかです。コスト面の克服が最大の課題であり、従来の発酵技術をベースとした、多くの技術開発の取り組みの中で、今後の技術革新を期待したいと思います。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
