バイオプラスチックとは?【バイオプラスチックの基礎知識 第1回】
2021/06/29
今回から新連載「バイオプラスチックの基礎知識」が始まります。循環型社会の形成に欠かせない素材として、実用化に向けた開発が進むバイオプラスチック。この連載では、循環型社会の実現に向けて切り札としてバイオプラスチックの現状、将来の課題、今後の可能性についてお伝えしていきます。
連載の目次
第1回:バイオプラスチックとは
第2回:生分解性プラスチックの開発と課題
第3回:バイオマスプラスチックの開発と課題
第4回:政府の取り組み「バイオプラスチック導入ロードマップ」
第5回:生分解性プラスチックとマイクロプラスチック問題
なぜ今「バイオプラスチック」なのか
20世紀は「プラスチックの世紀」と呼ばれるほど、私たちの日常生活の中で、プラスチックはあらゆるところに使われています。ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)など身の回りで使われる汎用プラスチックから、自動車・航空機・ロケット・エレクトロニクス関連機器などの最新技術を支える素材である高機能プラスチック、スーパーエンプラ(「エンプラ」とはエンジニアリング・プラスチックの略で、高強度で耐熱性などの特性を付与したもの)等まで含め、その消費量は、世界で年間3億トンを越えています。

プラスチック産業の急速な発展は、利便性追求の強い社会の要請に支えられて、大幅な多様化・汎用化をもたらしましたが、その廃棄物管理が大きな負の遺産となって立ちふさがっています。また、地球温暖化防止対策と循環型社会構築の早期実現は、化石資源の大量消費をいかに縮減するかにかかっており、早急な対応が迫られています。
この問題解決のために、生分解性という機能を活用し、再生可能な資源としてプラスチック素材の持続的な供給確保を実現することが、バイオプラスチックの課題・使命です。では「バイオプラスチック」とは、どのようなものなのでしょうか。
バイオプラスチックには2種類ある
バイオプラスチック(Bioplastics)とは、生分解性プラスチック(Biodegradable Plastics)と、バイオマスプラスチック(Bio-based Plastics)の2つのプラスチック群の総称です。
「生分解性プラスチック」は、その化学構造から、自然環境の中で、草木と同じように、微生物の働きによって分解され、最終的に、炭酸ガスと水になるものです。
一方で、性質や機能とは関係なく、再生可能な植物資源(例えばサトウキビなど)を原料に作られるプラスチックを「バイオマスプラスチック」と言います。

(バイオマスプラスチックの原料にもなるサトウキビ)
全く異なる概念の2つのプラスチックを「バイオプラスチック」と総称するため、一般の誤解を招く場合もありますが、世界的に、この呼び方が広く使われています。

図 バイオプラスチックの概念(出所:環境省HP「バイオプラスチック導入ロードマップ(2021年3月デザイン更新版)※1」を参考に筆者作成)
バイオプラスチックの歴史は、1920年代にフランスのパスツール研究所で発見された生分解性プラスチックPHA(ポリヒドロキシアルカン酸)から始まりました。PHAは「微生物産生系」と呼ばれるもので、ある種の微生物が生命維持の飢餓対策のために体内に脂肪族ポリエステルを蓄えることに注目し、それをプラスチックとして利用しようという発想でした。
PHAは、当初は良好な物性が得られませんでしたが、バイオマス資源から作られ、優れた生分解性を有することから、物性改良に多くの努力が重ねられ、将来を有望視される生分解性プラスチックとして検討が続いています。
また、主要なバイオプラスチック素材のポリ乳酸も、でんぷん・糖などの再生可能な原料で、かつ、生分解性を有するバイオプラスチックです。この他にも、石油資源由来の生分解性プラスチックや、再生可能な植物資源物由来ではあるものの、非生分解性のバイオマスプラスチックなど、多種多様なバイオプラスチックが開発されています。
普及の壁は「コスト」にあり
バイオプラスチックは、初期のプラスチック関連技術では、十分な物性・性能が得られず、実用性のあるプラスチック素材としては注目されませんでした。
しかしその後のプラスチック関連技術の進展を基盤に、1980年代後半から、大きく取り上げられたプラスチック廃棄物問題と、2000年以降の地球温暖化防止対策の取り組みが、バイオプラスチックの取り組みを大きく推進しました。
まだ現時点では、経済性と機能の両面で、既存の石油化学系プラスチックを凌ぐことができず、その使用は限定的ですが、今後は多くの分野で普及することが期待されています。次回、第2回では「生分解性プラスチック」に焦点を絞り、現在までの開発状況と課題についてお伝えします。
【参考文献】
※1 環境省「バイオプラスチック導入ロードマップ」
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
