対象物の温度を電子機器でなくQRラベルで検知して適正管理―日立ハイテクネクサス【インターフェックスWeek東京レポート 第4回】
2024/10/032024年6月、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開催された医薬品・化粧品・再生医療に関する日本最大級の国際展示会「インターフェックスWeek東京」をレポートしています。出展した企業の中からChematelsが注目する技術やサービスを紹介するこのシリーズも最終回。最後に取り上げるのは、日立ハイテクネクサスの温度管理サービス「MiWAKERU」です。温度で色が変化するインクを含むQRコードラベルで、対象物そのものの温度を適正に管理します。
貼り付け面の温度でラベルの色が変わる
MiWAKERUの温度管理サービスでは、温度で色が変わるラベルを貼り付けることで、対象物そのものの温度を管理します。
温度管理というと、保管庫や保存容器の温度を測ることが多く、温度データロガーなどの装置で管理しているところもあるでしょう。しかし、環境温度と、対象物の温度は必ずしも一致するとは限りません。これは、冷凍庫を開けっぱなしにしていたからといって、冷凍食品の温度がすぐに上がるわけではないことからも理解できます。
そこで、環境温度ではなく対象物そのものの温度を検知しようというのがMiWAKERUのラベルです。対象物にラベルを貼ると、外側の温度からの影響はほとんど受けず、ラベルの貼り付け面である対象物そのものの温度を検知します。対象物の温度が一定の範囲から逸脱するとインクの色が変わり、ひと目で分かるという仕組みです。

図1:MiWAKERUのラベル。筆者がラベルの裏から手を当てたものは赤に変化した
(筆者撮影)
日立ハイテクネクサスのインダストリアルソリューション本部に所属する荒牧知嗣さんは、「マイナス10℃からプラス60℃の検知温度帯でラベルのラインナップを取り揃えています。温度を逸脱したら元の温度に戻っても色が変わらない不可逆性のものと、元の温度に戻れば色も元に戻る可逆性のものと2種類あります。不可逆性のものは10℃刻みで、可逆性のものは2℃刻みで用意できるので、ご要望の温度帯に合わせたラベルをご使用いただけます」と話します。
また、専用スマートフォンアプリでQRコードラベルを読み取ることで、ラベルの温度逸脱情報と対象物の情報を同時に取得でき、その情報をサーバーに送信して一元管理できるという特長もあります。流通過程の各ステップで読み取れば、対象物の温度変化リスクの絞り込みに活用できます。
保冷剤を適切な量にして輸送費削減も
現在は実証試験を行っている段階で、その一つに水産物のコールドチェーンにおける温度モニタリングがあります。荒牧さんは、「保冷剤が過剰に入っているか、もしくは不足しているかを魚1匹1匹の個品単位で温度モニタリングすることで、保冷剤の適切な量を見極めることができます。実証試験の中で、保冷剤の量が多すぎたと判明したこともありました」と話します。
特に海外に輸出する場合には、保冷剤の重量は輸出コストに直結します。「重量を下げることで、輸送に関わる二酸化炭素の排出削減にも貢献でき、コストダウンだけでなく環境にも配慮した輸送が可能になるでしょう」(荒牧さん)
インターフェックスWeek東京で同社は、以前から紹介していたQRコードラベルだけでなく、バーコードラベルを初めて展示しました。バーコードラベルは、バイアル瓶などの細い容器にも貼り付けることができ、医薬品業界の需要も掘り起こしたい狙いがあるとのこと。

図2:初披露となったバーコードラベル
(筆者撮影)
荒牧さんは、「さまざまな企業や業界からの意見を聞き、温度管理における課題解決に向けて提案をしたい」と展望を語ります。
2024年度の「インターフェックスWeek東京レポート」は今回が最終回です。お読みいただきありがとうございました。
島田 祥輔(しまだしょうすけ)
サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。

