RNA医薬品で注目! リン脂質製造をホスホリパーゼで効率化―旭化成ファーマ【インターフェックスWeek東京2024レポート 第2回】
2024/09/052024年6月、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開催された医薬品・化粧品・再生医療に関する日本最大級の国際展示会「インターフェックスWeek東京」に出展した企業の中から、Chematelsが独自に注目した技術やサービスを報告しています。第2回は、旭化成ファーマのホスホリパーゼという酵素です。注目を集めるRNA医薬品で重要な役割を担うリン脂質の構造を効率的に変えることができます。
DDSの担い手リン脂質を目的に沿って設計したい
ホスホリパーゼとは、リン脂質を加水分解する酵素のこと。リン脂質は、私たちの細胞を包む細胞膜の主な構成成分ですが、医薬品を体内の特定の場所に届けるドラッグデリバリーシステム(DDS:Drug Delivery System)においては、医薬品を包む膜成分としても使われています。
新型コロナウイルスに対するメッセンジャーRNA(mRNA:messenger ribonucleic acid)ワクチンでは、mRNAが脂質ナノ粒子(LNP:Lipid Nano-Particle)に包まれています。LNPの構成成分の一つがリン脂質であり、生体内で分解されやすいmRNAを保護しているのです。mRNAワクチンの成功を受けて、mRNAを活用した「RNA医薬品」がさまざまな疾患の治療や予防に向け、注目を集めています。
そこで重要となるのが、リポソームやLNPの主要成分となるリン脂質です。リン脂質の種類、特に親水性の頭部の構造のタイプによって分子の性質は大きく変わり、それがリポソームやLNPの物性に関わってきます。血中で安定的に存在させる、あるいはRNAを輸送するなどの目的によって最適なリン脂質は異なります。そのため、さまざまな種類のリン脂質を用意して組み合わせを試すことが、リポソームやLNPの開発では必要になります。
望みのリン脂質をワンステップで作る
旭化成ファーマ(東京都千代田区)は、リン脂質を位置・構造選択的に合成・分解する酵素を多く取りそろえています。その中でもホスホリパーゼD(PLD:Phospholipase D)製品のPLDPには、ホスファチジルコリンをホスファチジン酸とコリンに分解させる加水分解作用だけでなく、コリンを他の分子、例えばエタノールアミンやセリンなどと交換し、ホスファチジルエタノールアミンやホスファチジルセリンを合成する作用があります。
同社診断薬事業部の小西健司さんは、「リン脂質の頭部の構造を変えるには通常、複数の化学反応が必要ですが、それを一回で済ませることができるので手間が削減できます。通常の化学反応では有害物質や加熱、保護・脱保護の余計な工程が必要になることもありますが、酵素なら約37℃の穏やかな条件で選択的に反応できます。カルシウムイオンなどの補因子の添加も不要です」と話します。
反応後に不要となった酵素を固定化して除去
酵素反応によって目的のリン脂質を得た後は、余分なものを除去する精製が必要です。酵素も除去しなければいけないのですが、ここでも旭化成ファーマは一工夫しています。
小西さんは、「キャリア(担体)に酵素を固定化したものを使用すると、反応後に攪拌を止めれば沈澱するため容易に分離できます」と、酵素除去の仕組みを説明します(図1)。続けて「固定化酵素はカラムに詰めて使用することも可能です」と、使い勝手の良さをアピールします。

図1:酵素固定化を紹介する展示
(筆者撮影)
「ホスホリパーゼは、以前からリン脂質そのものを扱うお客さまには知られていました。RNA医薬品が注目されるようになってリン脂質に対する関心も増していると感じていますが、リポソームやLNPの構成要素としてリン脂質を使い始めた方にとって、ホスホリパーゼ自体の認知度が十分に広まっていないと感じていますので、さまざまな展示会などを通じてホスホリパーゼをアピールしたいと思います」(小西さん)
次回は、画像解析で指示薬法滴定試験を自動化する装置を展示する企業ブースを訪れる予定です。
島田 祥輔(しまだしょうすけ)
サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。
