「エタノール消毒が効く・効かない」の差はどこにあるのか【細菌とウイルス 第3回】

2021/02/03

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「細菌とウイルス」シリーズの第3回のテーマは、エタノール消毒です。「あのウイルスにはエタノール消毒が効く、効かない」の差はどこにあるのでしょうか。そこで今回は、エタノール消毒の原理、適切な濃度、似たような成分であるイソプロピルアルコール(IPA)について解説します。

なお、消毒や殺菌などの用語の違いについてはシリーズ第2回の「消毒・殺菌・除菌・滅菌・抗菌……これらの違いは?」をご覧ください。

 第2回はこちら:消毒・殺菌・除菌・滅菌・抗菌……これらの違いは?

エタノールは脂質構造を壊す

ヒトや細菌など、あらゆる生物の細胞表面は「細胞膜」という脂質で覆われています。エタノールは、この細胞膜の脂質構造を破壊することで消毒作用を発揮します。

エタノールは、消毒スピードが早い上に揮発性が高いため、ヒトの細胞には短時間しか作用せず、皮膚への毒性が低い特徴があります(多用すると皮膚がかぶれる場合もあります)。入手しやすく扱いやすいことから、医療施設や食品工場だけなく、一般店舗や家庭でも使われています。

エタノールは、食中毒の原因である病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌などの細胞膜を破壊して消毒できます。ウイルスについては、外殻の外側が「エンベローブ」という脂質膜で覆われているインフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどに有効です。

ただし、「芽胞」という、耐久力の高い殻のようなものを形成した細菌(ボツリヌス菌、ウェルシュ菌など)には無効です。また、脂質に作用するため、脂質膜をもたない、つまりエンベロープをもたないウイルスにも効果はありません。エンペロープをもたないウイルスの代表例は、ノロウイルスです。

70%エタノールが多い理由

何事も濃度が高ければ効果も高いと思いがちですが、この比例関係はエタノール消毒において成り立ちません。エタノールの消毒作用が強いのは、濃度が70〜95%の場合です。濃度100%では、むしろ作用が弱くなってしまいます。その原理は十分解明されていませんが、エタノールと水の分子の割合が1:1となる濃度70%が細胞膜の破壊に最適であると考えられています。実際、家庭用/業務用で販売されている消毒用エタノールは、十分に効果が期待でき、かつコストを抑えた濃度70%がほとんどです。

なお、厚生労働省によると、濃度60%台でもある程度の効果が見込まれるため、70%エタノールが入手しにくい状況では60%台に薄めて使用しても差し支えないとしています。

新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について|厚生労働省

イソプロピルアルコール(IPA)との違いは?

エタノールと似た成分にイソプロピルアルコール(IPA)があります。IPAもエタノールも、化学的には「アルコール」という分子構造に分類されるため、両者ともに同じ原理で脂質膜をもつ細菌やウイルスに対して消毒作用があります。消毒の強さはほぼ同じで、IPAのほうが安価に入手しやすいメリットがあります。

しかし、IPAは油分を取り除く脱脂作用が強く、手指に使うと手荒れを起こしやすい欠点があります。また、特有の臭いが強いので、手の消毒よりも物の消毒に向いています。実際、手指向けの消毒液はほとんどがエタノール含有のもので、IPAが含まれる消毒液はメガネやスマホのクリーナーなどで見られます。

次回は、もう一つの消毒成分である塩素系について解説します。お楽しみに。

島田 祥輔(しまだしょうすけ)

サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。