「消毒」「殺菌」「除菌」滅菌」「抗菌」……これらの違いは?【細菌とウイルス 第2回】
2020/12/07
「細菌とウイルス」シリーズの第2回は、有害な細菌やウイルスを取り除くときに使う用語について解説します。
皆さんは「滅菌、殺菌、除菌、抗菌、消毒」を正しく使い分けることができますか? 製品に対して間違った用語を表示すると、法律違反に当たる場合もあります。衛生用品などを開発する上で、これらの用語の正しい意味を知っておきましょう。
ちなみに第1回「細菌とウイルスの違い」で述べたように、ウイルスは生き物ではないのですが、ここでは便宜上、細菌とウイルスをまとめて「微生物」と呼ぶことにします。
第1回はこちら:細菌とウイルスの違い
「滅菌、殺菌、消毒」は薬機法と関係する
まずは滅菌、殺菌、消毒について解説します。これらの用語については薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)という法律と関係するので、間違った使い方をすると罰せられる可能性があります。
① 滅菌:菌を完全に死滅または除去させること
今回紹介する5つの用語の中で最も厳しい基準です。薬機法第41条をもとに定められた、医薬品の規格基準書である「日本薬局方」に記載されている用語です。この中にある「滅菌バリデーション基準」では、微生物が生き残る確率が100万分の1以下になることを「滅菌」と定義しています。滅菌方法には、高温・高圧処理、放射線照射などがあります。医療器具などに使われる言葉ですが、日常生活でも「滅菌ガーゼ」などを見かけます。
② 殺菌:微生物を殺すこと
何らかの方法によって微生物を殺すことが「殺菌」です。この場合、殺す対象となる微生物の種類や量は特に定められていないため、少しでも生きている微生物が減れば「殺菌」となります。この用語は、薬機法で定められている医薬品または医薬部外品のみ表示が許されています。薬用せっけんや薬用歯みがきなど、人間にすみついている微生物に対しても使うことが多い用語です。
③ 消毒:病原性微生物の毒性を無力化すること
殺菌とやや似ていますが、人に有害な微生物の感染力を失わせたり、毒素を作らせないようにしたりするなど、毒性をなくす性能があれば「消毒」と表示できます。こちらも、薬機法で定められている医薬品または医薬部外品のみ表示可能です。
「抗菌、除菌」は業界による自主基準
医薬品または医薬部外品に該当しない製品、例えば台所用洗剤やウェットティッシュ、家電などは、微生物を殺す性能や成分があっても殺菌や消毒をうたうことができません。そこで、日本産業規格(JIS)に基づいて、各業界団体が独自に定めた用語として「除菌」と「抗菌」が使われています。
④ 除菌:微生物を減らすこと
微生物を殺すだけでなく、ろ過や拭き取りによって微生物を取り除くことも「除菌」に含まれます。その意味では、水道水による手洗いも立派な「除菌」です。
洗剤・石けん公正取引協議会では台所・洗濯用洗剤の除菌効果について、「物理的、化学的または生物学的作用などにより、対象物から増殖可能な細菌の数(生菌数)を有効数減少させること」、日本衛生材料工業連合会ではウェットティッシュの除菌効果について「拭き取ることにより、対象とする硬質表面(手指などの身体部分を含まない)から増殖可能な細菌数(生菌数)を有効数減少させること」と定義しています。
上記2つの業界段階の基準ではカビ、酵母、ウイルスが含まれておらず、試験対象となる細菌は黄色ブドウ球菌と大腸菌の2種類のみです。もちろん、独自に試験を行い、ウイルスへの効果を検証した上でウイルスに対する効果を表示することは可能です。
⑤ 抗菌:細菌の増殖を抑えること
経済産業省では『抗菌加工製品ガイドライン』において、抗菌を「当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」と定義しています。つまり、細菌を殺す効果はなく、増えないようにしている効果を指す用語です。もし、ドアノブに抗菌加工がされていても、病原性微生物が大量に付着していれば、そこが感染源になることもあり得ます。
抗菌についても、日本衛生材料工業連合会や日本建材・住宅設備産業協会など、業界ごとに基準や試験方法などを定めています。
法律と業界ルールに則した表示を
今回は「滅菌、殺菌、消毒、除菌、抗菌」の違いについて解説しました。いずれも法律や業界団体によって表示ルールが定められています。自社製品に該当するルールを確認し、消費者に誤解を与えない表示にすることがメーカーの責務です。
次回は、消毒の中でも、エタノール消毒の原理について解説します。お楽しみに。
【参考資料】
島田 祥輔(しまだしょうすけ)
サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。
