低誘電・高透過材料向け新規化合物と宇宙向け全固体電池【JPCA2026レポート第1回】
2026/07/30現代の電子機器開発において、通信の高速化や過酷な環境への適応は、製品の性能や信頼性を左右する要素となっています。2026年6月10~12日に開催された電子回路の総合展示会「JPCA Show」の取材報告として、前回お届けした先端基板技術の動向に引き続き、今回はデバイスの基盤を支える「部材」と「電源技術」に関する出展企業の動向を取り上げます。本稿で紹介するのは、独自の分子構造を採用することで高周波帯での透過性向上を目指すJNC石油化学の新規化合物と、宇宙空間をはじめとする特殊環境での稼働を見据えて開発された全固体電池をもつマクセルの2社です。回路設計や研究開発を担う技術者の方はもちろん、新たな製品企画や事業開拓の視点を探る幅広い読者の方に向けて、展示会で示された両社の具体的な技術的特徴と今後の展望を報告します。
JNC石油化学:独自の分子構造で高周波帯の透過性と柔軟性を両立する新規化合物
JNC石油化学は展示会で、シクロブタン環を有する独自の新規化合物を出展しました。従来のベンゼン環等に比べ計算上の双極子モーメントが大幅に低下するため、「低誘電率」「高透過率」「低屈折率」を同時に実現できるのが強みとのことです。これにより、ギガヘルツ帯はもちろん、次世代通信で注目されるテラヘルツ帯での透過性向上にも期待がかかります。また、構造的な柔軟性から硬化物を柔らかくできるため、フレキシブル基板などの用途を想定しているそうです。
実用化への課題はモノマー単体における誘電正接(Df)の低減ですが、今後は他社樹脂との最適な組み合わせを模索し、展示会を通じて新たなマッチングや用途開拓を目指していく方針だそうです。高周波通信分野を支える素材として、今後の展開が注目されます。

図1 高周波帯での透過性向上を目指し、独自のシクロブタン環構造を採用したJNC石油化学の新規「TMCB化合物」
(画像:JNC石油化学提供)
マクセル:宇宙空間での活用を見据えた高い安全性を有する全固体電池
マクセルは展示会に全固体電池を出展し、注目を集めていました。なかでもJAXAと共同開発を進める「宇宙空間」での活用が大きな話題を呼んでいるそうです。
激しい温度変化や真空環境にさらされる宇宙空間では、従来のリチウムイオン電池だと液漏れや発火のリスク、膨張への対策として大がかりな断熱構造が必要でした。しかし、液を一切使わない同製品は高い安全性を担保でき、構造を大幅に簡素化できる可能性があるとのことです。
この宇宙でも通用する高い信頼性を強みに、地上ではソーラーパネルと組み合わせたインフラ監視用のIoTデバイスなどへの応用も見込んでいるそうです。すでに産業ロボット向けや産業機器向けなどで量産を開始していますが、今後はさらなる需要の創出や設備投資を進め、幅広い特殊環境下での実用化を目指していく方針だそうです。

図2 高い安全性を備えたマクセルの全固体電池ラインアップ、過酷な宇宙空間での活用を見据えJAXAと共同開発も進めている
(画像:マクセル提供)

図3 インフラ監視用のIoTデバイスなどへの応用も見込まれる、マクセルの全固体電池量産品「PSB401010H」(左)とモジュール(右)
(画像:マクセル提供)
今回の展示会取材では、材料や電源技術に関する各社の具体的な取り組みが報告されました。
JNC石油化学が出展したシクロブタン環を有する新規化合物は、低誘電率や高透過率などを同時に実現するもので、ギガヘルツ帯やテラヘルツ帯での透過性向上やフレキシブル基板などの用途が想定されています。今後はモノマー単体における誘電正接の低減という課題に対し、他社樹脂との最適な組み合わせを模索していく方針です。
一方、マクセルが出展した全固体電池は、JAXAと共同開発を進める宇宙空間での活用が注目されています 。激しい温度変化や真空環境でも液漏れや発火のリスクがなく、構造の大幅な簡素化を可能にするとしています。地上でもインフラ監視用デバイスなどへの応用が見込まれており、今後はさらなる需要創出や設備投資を進め、幅広い特殊環境下での実用化を目指す方針です。 展示会は終了しましたが、このように独自の分子設計や、構造の簡素化と高い安全性を両立する技術といった具体的なアプローチによる課題解決と、今後の実用化や用途開拓に向けた動きが進められています。
Chematels編集部
Chematels(ケマテルズ)では、化学業界に従事されている方へ、お役だていただけるコンテンツをお届けします。特集記事では、業界のトレンド情報や製品情報、基礎知識など、専門性の高い記事を配信しています。
