フッ素フリー、シリコーン親水化、抗バイオフィルム…中間素材を一挙展示―荒川化学工業【ケミカルマテリアルJapan2025レポート第2回】
2026/03/24東京ビッグサイトにて2025年11月27日・28日の2日間にわたって開催された化学の総合展示会「ケミカルマテリアルJapan」では、ユニークな技術を活用した素材を紹介する企業も多く見られました。同展レポートのシリーズ第2回では、粘着・接着剤用樹脂や製紙用薬品など、中間素材を主力製品とする荒川化学工業の展示ブースの様子をお伝えします。フッ素フリー、シリコーン親水化、抗バイオフィルムといった特徴的な機能をもたせた中間素材の数々が展示されていました。
食品向け包装紙にフッ素フリーの耐水性・耐油性を付与
荒川化学工業(本社・大阪市中央区)は1876年の創業。松やにの販売を祖業とし、現在は機能性コーティング剤やエレクトロニクス分野の製品でも存在感を発揮している化学メーカーです。
展示ブースではさまざまな素材や技術が紹介されていました。Chematelsがまず注目したのは、フッ素フリーの高機能水系製品「AWシリーズ」です(図1)。主に食品向けの包装紙に利用されるもので、機能や用途に応じた複数の製品ラインナップがあります。

図1:フッ素フリーの高機能水系製品「AWシリーズ」の展示パネル
(筆者撮影)
例えば、AW-100タイプは耐油性と耐水性のいずれにも優れたヒートシール膜を形成でき、水蒸気を閉じ込めたい食品包装に適しています。他方、AW-200タイプは耐油性が高い一方で通気性は維持されており、ハンバーガーの包み紙のように水蒸気を飛ばしたいときなどに推奨されるようです。
また、独自技術が光っていたのがAW-600タイプです。これは紙や紙の立体成型品であるパルプモウルドに耐油性を付与するためのものですが、表面にコーティングするのではなく、基材の製造工程で他の材料とともに練り込む内添タイプです。コーティングタイプで課題となる端面の耐油性不足を解消するものであり、通気性も維持できるとのこと。
同社経営企画本部副本部長で事業戦略部つなぐ推進グループリーダーも務める川瀬滋さんは、「フッ素系耐油剤を製造するメーカーが使用を止めようとする動きがあるため、代替品を模索している包装メーカーから問い合わせを多くいただいています」と話し、注目が集まっていることを伺わせます。
ライフサイエンス向けのシリコーン親水化剤を開発
ライフサイエンス分野に向けた製品が、シリコーンを親水化する添加剤です。川瀬さんは、「荒川化学工業は2026年に創業150周年を迎え、さらなる成長のためにライフサイエンス関連の素材開発にも力を入れています」と言います。
従来、シリコーンを親水化するにはプラズマ処理やコーティングなどの後工程が必要でした。これに対し、同社の添加剤は硬化前のシリコーンに添加するため、後工程での処理が不要です。あらかじめシリコーン内部に添加する方法は、「世界的にも例がないほどユニークな技術」(川瀬さん)とのこと。添加量に応じて水接触角の調整ができ、目的に応じた特性をもたせることができます。
現在開発中のMMS-003は、細胞を扱う実験や医療での用途を想定しています。再生医療分野で用いられるマイクロ流路デバイスは用途の一つ。シリコーンのような疎水性材料を用いると水溶液が流れにくくなりますが、これを親水化することで流れやすくなります。また、医療用チューブの内壁を親水化することで液体の流速を高めることも可能。こうした用途を想定し、細胞毒性が低いことも確認されています(図2)。

図2:シリコーン親水化剤の展示パネル。PDMSはシリコーンの一種ポリジメチルシロキサン(dimethylpolysiloxane)の略称
(筆者撮影)
抗菌・抗バイオフィルムが来場者の注目を浴びる
展示ブースで人が途切れることのなかった材料が、松やに系の材料をベースにした抗菌・抗バイオフィルム剤です(図3)。高い抗菌性と抗バイオフィルム性をもつ天然由来物質で、溶出性が低いためバイオフィルムが生じやすい水回りでも持続性が高いとアピールしています。コーティングおよび練り込みのいずれにおいても抗バイオフィルム性能が示されており、プラスチックやインキ、コーティング剤、スプレーなどの用途への展開が想定されています。

図3:抗菌・抗バイオフィルム剤の展示パネル
(筆者撮影)
川瀬さんいわく、抗バイオフィルムは「ホットな分野」とのこと。2023年7月、抗バイオフィルム加工製品の評価試験方法が国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)の規格「ISO4768」として発効されました。日本では抗菌製品技術協議会(SIAA:Society of International sustaining growth for Antimicrobial Articles)が制定する「SIAAマーク」に抗バイオフィルム加工の表示が2024年7月から追加されています。荒川化学工業としては、マーク取得を目指す企業と連携したいとのことでした。
そのほか、同社のブースでは、「プラズマエッチング耐性付与UVナノインプリント材料」「低誘電粘着剤」「二酸化炭素吸着用ポリアミン」「水系化で脱・溶剤、乳化・分散技術」「細胞培養用コーティング剤」といった紹介もあり、来場者は熱心に説明を受けていました。
次回の第3回では、2025年ノーベル化学賞のテーマとなった素材の社会実装を目指す大学発スタートアップ企業を紹介する予定です。
島田 祥輔(しまだしょうすけ)
サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。
