「塗らない接着」で機能面・環境面ともに貢献! ナノ多孔構造も…フィルムの有望さ実感―アイセロ【サスマ展レポート2025 第3回】

2026/03/05
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2025年11月に開催された「サステナブルマテリアル展」のレポート、最終回となる第3弾をお届けします。Chematels編集部が注目した企業は、各種機能性フィルムと容器の技術開発型メーカーで、90年以上の歴史を誇るアイセロです。フィルム化したことで、サステナブル性を実現した熱接着フィルム「フィクセロン」と、ユニークな構造や機能を持つ、用途探索中のナノ多孔フィルム「クレイズフィルム」を紹介します。

塗らずに貼る接着は多用途に対応し、環境にやさしい

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図1:アイセロの熱接着フィルム「フィクセロン」
⁠(画像提供:アイセロ)

アイセロ(本社:愛知県豊橋市)の主力商品には機能性フィルムが並びます。そのなかに、塗る接着剤とは一線を画す機能をもつ熱接着フィルム「フィクセロン」があります。

フィクセロンは、熱と圧力で異種材料でも接着でき、ポリプロピレンやポリエチレンなど、難接着素材とされる素材も接着可能です(図2)。しかも、プライマーによる表面処理が要りません。

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図2:フィクセロンの接着性能。アルミニウム合金やステンレス、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)も接着可能
⁠(画像提供:アイセロ)

商品開発本部主査の内田喬さんは、「フィクセロンは、接着面を折り曲げたときにかかる応力を緩和します。曲面をスライドする蓋がついた自動車用のセンターコンソールにもフィクセロンが採用されました」と説明します(図3)。従来は蛇腹でないとこのようなカーブを実現できませんでした。ほか、高級自動車用ステアリングの一部に薄くスライスした木を貼り付けるのにも、フィクセロンが使われています。

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図3:フィクセロンで接着された自動車内装部品。高級車のハンドル、フットレスト、センターコンソールに使われた実績がある
⁠(画像提供:アイセロ)

環境配慮面でのフィクセロンの特長として、内田さんは2点を挙げました。

1点目は、溶剤が不要なこと。揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)が製造工程でも、製品からも出ないため、安全性を大幅に向上できます。

2点目は易解体性です。「フィクセロンで接着した面は加熱すると剥離できます。しかも、金属と樹脂を接着した場合、これまでの経験上、金属側に残るフィクセロンが少なく、金属のリサイクルがしやすいという点でお客さまから好評です」と内田さん。

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図4:本社内にあるフィクセロンテクニカルセンター。アイセロの技術者のサポートを受けながら、フィクセロンを試すことができる。接着装置として、熱板プレス装置、高周波誘電加熱装置、電磁誘導ウェルダー装置、抵抗溶接装置、赤外線溶着装置などがある。引張試験装置、実体顕微鏡、小型環境試験器で接着性能の評価もできる。隣接する同社施設のアクセサブル・テクノセンター(ATC)で各種分析も可能
⁠(画像提供:アイセロ)

使い道募集中! 通気性にも光屈折性にも優れたナノ連続多孔フィルム

展示の中でもかなり大きく取り扱われていたのが、「クレイズフィルム」。ナノサイズの連続孔が周期的に形成されているフィルムです(図5)。商品開発本部部長の溝端一幸さんは、「大学発の技術ですが、私たちが連続するフィルムにする技術開発を行いました。現在、350mm幅のフィルムロールまで開発できています」と説明します。

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図5:クレイズフィルム(開発品)。厚さ約100μmのフィルムにナノサイズの連続孔が周期的に形成されている
⁠(画像提供:アイセロ)

このような微細な孔をもつフィルムには、たとえば、電池用セパレーターの多孔質膜や、オムツ用の透湿防水膜があります。これらの孔サイズは大きいと10μm程度であるのに対して、クレイズフィルムの孔の大きさは数十nmです。

「クレイズフィルムは孔があるところと、ないところがあるので、膜厚方向に圧力をかけても孔が押し潰されにくいという特長があります」と溝端さん。熱を加えると孔が閉じて、引っ張ると、また孔が開くという性質もあります(図6)。

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図6:クレイズフィルムの通気性。ガーレー値は紙や布などの材料をどのくらいの速さで空気が通過するかを示す値で、数値が小さいほど、空気が通りやすい
⁠(画像提供:アイセロ)

クレイズフィルムは異方性をもつので、光が当てられると1方向のみに広がります(図7)。

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図7:クレイズフィルムの背後からスマートフォンのライトを照らすと、縦方向に光が広がる
⁠(編集部撮影)

また、フィルムを通過する光が、屈折するので、窓にクレイズフィルムを貼ると、天井にも光がとどき、部屋の奥まで日差しを届けることもできます(図8)。

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図8:クレイズフィルムによる光の屈折
⁠(画像提供:アイセロ)

溝端さんは、「お客さまに説明すると、面白いねといった感想をいただきます。有力な検討先はありますが、量産化に至っていません。ピンときた方がいらしたらぜひご連絡をいただきたいです」と話していました。

ユニークなフィルムだけに、イノベーションにつながるような使い道がありそうですね。

今回で2025年のサステナブルマテリアル展のレポートは最終回です。前回までのレポートをまだお読みでない方は、小松マテーレを取材した第1回ADEKAを取材した第2回の記事もぜひお読みください。


村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。