ギネス世界記録™認定! 世界一透明なPP樹脂を実現する添加剤を開発―ADEKA【サスマ展レポート2025 第2回】

2026/02/25
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2025年11月に開催された「サステナブルマテリアル展」のレポート第2弾をお届けします。今回、Chematels編集部が注目した企業は、創立100年超の素材メーカーであるADEKA(アデカ)です。同社は、プラスチックの機能を高める樹脂添加剤をはじめ、先端半導体材料、化学品、食品、農薬などを幅広く開発・製造販売しています。この記事では、今回の展示でイチオシだった、「世界一透明なポリプロピレン」をつくるための添加剤を紹介します。

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一目瞭然! ポリプロピレンが透明に……開発した添加剤を展示

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図1:自動車バンパー向け材料の透明性比較。(上)左はポリプロピレン(PP)に透明化剤「トランスパレックス™」を添加したもの。透明性が高く裏側の光源ドットがくっきり。右は通常のPP製。どちらも射出成形してシルバー塗装を施している。(下)トランスパレックスの添加で、光源ドットによる装飾を施したバンパー
⁠(上写真筆者撮影、下写真編集部撮影)

ポリプロピレン(PP:Polypropylene)は汎用性プラスチックの代表的な材料で、加工しやすく耐熱性や耐薬品性に優れています。身のまわりでは食品容器や衣装ケース、自動車のバンパーや注射器などに使われています。

「PPの白っぽさを解消したい、もっと透明にしたいという声がとても多く寄せられていました」と振り返るのは、ADEKA(本社・東京都荒川区)樹脂添加剤本部の樹脂添加剤開発研究所で主任研究員をつとめる宮園圭大郎さんです。

同社は、「透明性の高いPP」を実現する樹脂添加剤「トランスパレックス™(TRANSPAREX™)」を開発しました(図2)。同製品は「最も透明度の高いポリプロピレン用透明化剤」として、2025年9月にギネス世界記録™に認定されています。

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図2:トランスパレックスの形態
⁠(画像提供:ADEKA)

PP製造時にトランスパレックスを300~500ppmほど添加することで、従来の透明化剤より極めて少ない添加量で、これまでにない高い透明性が得られます(図3)。

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図3:トランスパレックスの性能。(左)横軸は透明化剤の添加量、縦軸は透明性で、下ほど透明。(右)添加して製造したPPの透明性は透明なポリスチレンやペットなどの非晶性樹脂に匹敵
⁠(画像提供:ADEKA)

冒頭写真の自動車用バンパーでは、意匠性が求められる中国や韓国で、特に注目が集まっているとのこと。ブースでは他に、石鹸ケースも展示されていました(図4)。

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図4:石鹸ケースの比較。(左)トランスパレックスを添加したPP製。(右)通常のPP製
⁠(筆者撮影)

トランスパレックスを使用したPPでは剛性が高く、丈夫である点も特長の一つです。米国では食品接触材料として食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の認可を取得しており、高い安全性も誇ります。宮園さんは「溶液中で加熱しても化学物質の溶出が確認されておらず、医療用途への展開も期待できます」と説明します。

さらに、トランスパレックスはサラサラとした粉体で、製造時に装置で詰まりをおこしにくく、また種類の異なる透明化剤など他の添加剤が多少混じっても、本来の性能を発揮できることも特長です。製造工程での利便性の良さも普及を後押ししてくれています。

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透明性と剛性の高さの理由は「緻密な結晶」にあり

トランスパレックスは核剤であり、結晶の足場となって結晶を緻密なものにします。その結果、可視光が散乱せず透過し、樹脂の透明性が高まります。剛性が高まるのも、この緻密な結晶のおかげです。

宮園さんは「トランスパレックスを添加したPPの結晶サイズは従来の透明化剤を添加した時と比べて非常に小さいため、偏光顕微鏡を用いて観察しても全く結晶が見えません(図5)」と話していました。

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図5:PPの結晶の比較。偏光顕微鏡写真
⁠(画像提供:ADEKA)

サステナブル素材としての期待も、問い合わせ急増

透明なPPはサステナブルな素材ともいえます。宮園さんはその理由を二つ挙げます。

一つ目は、温室効果ガス(GHG:Greenhouse gas)の排出量を抑えられるからです。PPの生産・輸送時のGHG排出量は、他の一般的な樹脂に比べて低いです。GHG排出量の高い樹脂をPPで代替できれば、GHG排出量の削減が期待できます。

二つ目はモノマテリアル化に適しているからです。PPは丈夫ながら透明性が低いため、容器のふたのみにPPを使い、容器本体には内容物を分かりやすくするため透明な他の樹脂を使う場合がありました。しかし、透明性の高いPPであれば容器全体にPPを用いることができます。単一素材となるためリサイクルの効率が上がるわけです。

顧客からの反響について宮園さんは、「ギネス世界記録™のプレスリリースを出してから問い合わせが急増しています。企業と取り引きをする素材メーカーから個人を顧客とする雑貨販売小売業まで、あらゆる層のお客さまからお問い合わせをいただいています。トランスパレックスの担当者を増やして世界的に対応をしているところです」と説明します。

これからは、「透明ながらPP」という製品が増えていきそうな気運を感じました。トランスパレックスの紹介動画はこちらからご覧いただけます。

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次回は「接着剤は『貼る』時代へ」をうたう機能性フィルムメーカーの展示ブースからレポートする予定です。

村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。