再生正極材、CNT分散液、イオン液体を展示…少量受託で柔軟に材料開発―GSアライアンス【第24回 スマートエネルギー WEEK レポート第3回】
2026/01/272025年9月17日から3日間にわたって開催された「第24回 スマートエネルギーWEEK」では、環境・エネルギー分野における最新技術が多数、展示されました。Chematelsは、出展企業の中から注目の3社に製品や技術について取材を敢行。全3回にわたりその内容を紹介しています。最終回となる第3回では、GSアライアンス(本社・兵庫県川西市)を取り上げます。同社は、再生正極材、カーボンナノチューブ分散液、イオン液体を主に展示。少量受託を前提とした材料開発に取り組む同社の技術を紹介します。
少量受託を起点とした材料開発が特徴
GSアライアンスは、環境・エネルギー分野向けの材料を中心に、研究開発型の事業を展開する企業です。顔料メーカーである冨士色素の社内ベンチャーとして2010年に設立され、少数精鋭の体制で材料開発に取り組んできました。
同社の特徴は、少量受託を起点とした開発スタイルにあります。原材料の選定から開発、性能評価までを一貫して担い、量産前の評価や新材料の検討といった試作ニーズに対応しています。こうした柔軟に対応できる開発体制が、大手企業などからの相談や引き合いにつながっています。
以下では、同社が特に注力する三つの技術を取り上げます。
ブラックマスを活用し、リチウムイオン電池正極材を再生

図1:ブラックマスの展示
(編集部撮影)
パソコンやスマートフォン、電気自動車などに使用されるリチウムイオン電池をリサイクルする過程では、正極材に用いられているコバルトやニッケル、マンガン、リチウムなどの金属成分を含む黒色粉末「ブラックマス」が発生します。
従来は、このブラックマスから硫酸などを用いて金属を抽出し、アルカリ剤などで分離して、再び正極材を合成する方法が一般的でしたが、コストや環境負荷の面で課題がありました。
これに対し、GSアライアンスは、金属を抽出する工程を経ず、ブラックマスを独自のプロセスによって直接的に正極材として再生する技術を実現しています。「材料を分離して取り出すのではなく、できるだけそのままの形で正極材に仕立て直す点が特徴です」と、新規事業開発室プロジェクトマネージャーの井口高志氏は説明します。

図2:ブラックマスを材料とする正極材の再生
(画像提供:GSアライアンス)
工程を大幅に簡略化できるため、コスト削減に加え、廃棄物の発生量抑制も可能です。再生した正極材を用いたリチウムイオン電池では、新品と比較して95%以上の初期電池容量が得られています。
当初は不純物を除去せず再生していたため、サイクル特性に課題がありましたが、最近はサイクル特性も向上してきています。ニッケル・マンガン・コバルトの三元系、またリン酸鉄リチウム系のブラックマス両方に対し、再生正極が作れるようになってきています。さらに正極材の単結晶化などの技術改良を進め、特性の向上を図っています。
カーボンナノチューブ分散液を受託開発、多様なニーズに対応

図3:カーボンナノチューブ分散液などの展示
(編集部撮影)
カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nanotube)は、炭素原子のみで構成されるナノメートルサイズの円筒状材料で、高い導電性などを持つことが特長です。電池分野では導電助剤として用いられ、少量の添加でも性能向上が期待されています。
GSアライアンスは、CNTを用途や条件に応じて分散させた分散液を、受託により提供しています。「分散液の溶媒は水系および有機溶剤系のいずれにも対応可能です。他社では対応が難しい案件について相談を受けるケースも少なくありません」と井口氏は話します。一般的に、少量かつ条件が細かく指定される案件では、対応コストや設備の点から受託を見送られることもありますが、同社ではこうしたニーズにも柔軟に対応しています。

図4:カーボンナノチューブ分散体(単層、多層)
(画像提供:GSアライアンス)
また顧客からの要望に応じて、樹脂などをあらかじめ配合したインクの形で提供することもあるといいます。CNTの取り扱いに不慣れな場合でも評価や試作に使いやすい点が特長です。顔料メーカーを親会社とする同社は、多様な分散設備とノウハウを生かし、少数精鋭ならではのきめ細かな対応を強みとしています。現在は、量産化も視野に検討を進めています。
PFASフリーを実現するイオン液体を幅広く合成

図5:イオン液体
(編集部撮影)
イオン液体とは、陽イオンと陰イオンから構成される液体状の「塩」を指します。塩化ナトリウムのような一般的な塩とは異なり、融点が低く、100℃以下で液体として存在する点が特徴です。
「顧客ごとの用途や要望に応じてイオン液体を合成しており、これまでに160種以上を開発してきました」と井口氏は話します。同社のイオン液体は用途や組成によって特性は異なりますが、代表的な特長は三つあります。
一つ目は高い透明性です。帯電防止剤として、半導体用テープや光学系ディスプレイ周辺の粘着剤、保護フィルムなど、透明性が求められる部材に用いられています。また、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂に帯電防止機能を付与したい場合にも活用されています。
二つ目は安全性の高さです。不燃性で揮発しにくい特性を持ち、電池用の電解液としての利用も想定されています。
三つ目は、健康影響が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS:per- and polyfluoroalkyl substances)非使用に対応していることです。無機フッ素を用いたタイプや、フッ素を含まないタイプの合成も可能であり、規制動向や用途に応じた選択が可能です。

図6:イオン液体のラインアップ
(画像提供:GSアライアンス)
今後は、数十キログラム規模での対応も視野に、量産化に向けた体制整備を進めています。
量子ドット、金属有機構造体、深共晶溶媒、固体酸触媒などの材料開発も
なお、GSアライアンスは展示した製品・技術のほか、量子ドット、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)および多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)、深共晶溶媒、固体酸触媒など、種々の材料の開発にも取り組んでいます。例えば、量子ドットとMOFを組み合わせて、二酸化炭素(CO2)から燃料や化学物質の原料などを合成する人工光合成関連の技術も開発しています。
小回りの利く研究開発体制が技術開発を支える
少量受託を起点に、再生正極材、CNT分散液、イオン液体、さらに量子ドット、MOF、深共晶溶媒、固体酸触媒といった種々の材料技術を横断的に展開するGSアライアンス。量産前の評価や試作といった開発初期のニーズに応えながら、材料開発を支える同社の取り組みは、今後もさまざまな分野で活用の広がりが期待されます。
「第24回 スマートエネルギー WEEK レポート」は今回で終わりです。第1回の住友電気工業の記事、第2回のJCCLの記事ともどもお読みいただき、ありがとうございました。
和地慎太郎(わちしんたろう)
ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。
