最長30年使えるレドックスフロー電池、廃棄物・火災リスクほぼゼロで脱炭素に貢献―住友電気工業【第24回 スマートエネルギー WEEK レポート第1回】
2025/12/242025年9月17日から3日間にわたり、「第24回 スマートエネルギーWEEK」が幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催されました。再生可能エネルギー向け製品や蓄電池、二酸化炭素回収技術など、カーボンニュートラルの実現に向けた最新技術が一堂に集まる展示会です。出展社数は506社、来場者数は4万5741人にのぼり、会場は大きな熱気に包まれました。今回、Chematelsでは、出展企業の中から注目の3社に“イチオシ”製品について話を伺いました。全3回にわたりその内容を紹介します。第1回は、住友電気工業(本社:大阪府大阪市)が取り組む「レドックスフロー電池」です。廃棄物や火災リスクがほぼゼロの蓄電池で、実用化が進んでおり、普及に期待がもたれます。
40年以上の開発実績、国内外で導入が進む
北海道電力ネットワークの敷地内に整然と並ぶ2段積みのコンテナ群(図1)。その正体は住友電気工業が開発した大容量蓄電池「レドックスフロー電池」です。

図1:北海道電力ネットワーク南早来変電所に納入されたレドックスフロー電池
(写真提供:住友電気工業)
近年、再生可能エネルギーの発電量の変動を吸収し、電力の安定供給を実現するため、電力会社を中心に「系統用蓄電池*1」の導入が進んでいます。北海道電力ネットワークで導入されたレドックスフロー電池も、風力発電の出力変動を抑える目的で運用されています。
レドックスフロー電池は、電解液に含まれるイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池で、「レドックス」(Redox)は、「還元」(Reduction)と「酸化」(Oxidation)の頭文字に由来します。

図2:取材に応じる住友電気工業RF電池事業開発部の担当社員
(編集部撮影)
「住友電気工業では40年以上前から、レドックスフロー電池の開発に取り組んできました。カーボンニュートラルの実現に向けて蓄電池の活用が進む中、多くのお客さまにご利用いただいています」
同社RF電池事業開発部の担当社員はこう話します。同社のレドックスフロー電池は国内の電力会社をはじめ、米国、欧州、アジア、豪州など海外でも導入が進んでいます(図3)。

図3:導入実績の展示パネル
(編集部撮影)
「安全・長寿命・エコ」が強み
住友電気工業のレドックスフロー電池の特長について、次のような説明を聞けました。
「特長は安全性・長寿命・エコの三つです。電解液が不燃性で火災リスクがほとんどなく、劣化しにくいため最長30年の長期運用が可能です。さらに、使用後も電解液はリユースでき、部材の99%がリサイクルできます」
現在主流のリチウムイオン電池は小型・高出力である一方、可燃性の電解液を使用しており、火災リスクが高く、消防法上の制約があります。これに対し、レドックスフロー電池では水系の電解液を採用しており、安全性の高さが大きな強みです。
また、充放電を繰り返しても電極がほとんど劣化せず、充放電回数に制限がない点も強みです。長期的に見れば、ライフサイクル全体のコストを抑えられるといいます。
新型では省スペース化を実現
住友電気工業のレドックスフロー電池は、三つのコンテナで一つのモジュールを構成し、電解液を循環させて充放電を行う仕組みのものです(図4)。電解液のタンクを拡張すれば容量を増やすことができ、長時間の電力供給にも対応します。

図4:レドックスフロー電池のモジュールの構造の例
(画像提供:住友電気工業)
構造上、装置が大型化しやすく設置スペースの確保が課題ですが、2025年から展開する新型「V40シリーズ」ではエネルギー密度を高め、省スペース化を実現しているといいます。
「従来型では1モジュールあたり250キロワットの出力だったため、1メガワットを得るには4モジュールが必要でした。新型では334キロワットまで高め、3モジュールで同じ出力を実現できます」
さらに、リチウムイオン電池と違って設置間隔の制約が少ないため、モジュールを近接して配置できる点もメリットです。台数が増えるほど、全体の設置スペースを抑えられます。
脱炭素電源として普及への期待が広がる
今後は、政府が開始した「長期脱炭素電源オークション*2」を通じ、系統用蓄電池の導入がいっそう進む見込みです。長期間の運用が可能なレドックスフロー電池への注目は、さらに高まると考えられます。
また、災害時に公共施設へ電力を供給するマイクログリッド*3の非常電源や、事業所・工場で使用する電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうことを掲げる「RE100(Renewable Energy 100%*4」加盟企業の電源など、幅広い用途での活用も見込まれます。
最後に、担当社員から今後の抱負を聞くことができました。
「今後は1モジュールあたりの出力、エネルギー密度をさらに高め、省スペース化を進めていく方針です。これにより普及が進めばコストの削減にもつながります。こうした取り組みを通じて、再生可能エネルギーの拡大と脱炭素社会の実現に貢献していきたいと考えています」
40年以上にわたる開発の成果として進化した同社のレドックスフロー電池は、脱炭素社会を支える重要な技術となっていくでしょう。
次回は、低コスト・高効率・省エネルギー型の二酸化炭素回収技術の取り組みを展示するスタートアップ企業のブースからレポートする予定です。
注釈
*1:系統用蓄電池
電力系統の需給・周波数を安定させるために運用する大型蓄電池。
*2:長期脱炭素電源オークション
脱炭素電源の長期投資を確保するため、入札で支援と契約を決める国の制度。
*3:マイクログリッド
地域内の再生可能エネルギーや蓄電を束ね、災害時は系統から独立して電力供給できる小規模電力網。
*4:RE100(Renewable Energy 100%)
企業が事業で使う電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的な枠組み。
和地慎太郎(わちしんたろう)
ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。
