世界初の技術も! アミン含有ゲルで低コストCO2回収装置の実用化へ―JCCL【第24回 スマートエネルギー WEEK レポート第2回】
2026/01/142025年9月17日から3日間にわたって開催された「第24回 スマートエネルギーWEEK」では、環境・エネルギー分野における最新技術が多数、展示されました。Chematelsは、出展企業の中から注目の3社に“イチオシ”製品について取材を敢行。全3回にわたりその内容を紹介しています。第2回となる今回は、JCCL(本社・福岡県福岡市)が取り組む「CO2回収技術」です。大企業との協業が進み、世界初の成果も生み出している注目の技術です。
カーボンニュートラル達成に向けCO2回収技術の注目高まる
カーボンニュートラルの達成に向け、工場排ガスや大気中に含まれる二酸化炭素(CO2)を回収する技術が注目されています。特に化学、鉄鋼、セメントといった産業では、高温の熱源が不可欠で電化が難しい工程や、原料由来でCO2が発生する工程があり、省エネルギー化や再生可能エネルギーへの転換だけではCO2排出量を実質ゼロにできない場合があります。
このため、排出されたCO2を回収して削減につなげる取り組みや、回収したCO2を化学品原料などとして再利用するカーボンリサイクルの重要性が高まっています。排ガスのCO2濃度や性状に応じて適切な方式を選び、効率的かつ低コストに回収できる技術が求められています。
九州大学発スタートアップJCCL、事業化に取り組む

図1:JCCLの展示ブース。協業する三井物産プラスチックとの共同出展
(編集部撮影)
JCCLは、排ガスに含まれるCO2を高純度で分離するCO2分離材料の研究開発から回収装置の設計・製造までを手がける、九州大学発のスタートアップです。宇宙航空研究開発機構(JAXA)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、科学技術振興機構(JST)の支援を受けて進められた大学の研究成果を基に、2020年の創業以来、製品開発や事業化に取り組んでいます。
2023年12月には、地域の工場排出ガスからCO2を回収し、水素と合成して製造するメタンである「e-メタン」の実証試験への参画を発表し、同社の装置が採用されています(図2)。同プロジェクトでは、JCCLが回収したCO2と再生可能電力から合成された「e-メタン」がCO2を出さないクリーンガスとして認定されクリーンガス証書を取得しています。さらに2025年6月には、家庭用給湯器からCO2を回収し、99%以上に濃縮するという世界初の実証に成功しました。小規模設備にも安全かつ低コストで対応できる技術として注目されています。

図2:地域の原料を活用したメタネーション実証事業
(画像提供:JCCL)
同社の強みは、CO2分離材料、CO2回収装置、回収プロセスに関する特許を戦略的に活用し、研究開発から社会実装までを一気通貫で担える点にあるといえます。
固体吸収剤と分離膜…用途に応じた分離材料
JCCLのCO2分離材料には、「アミン含有ゲル」と呼ぶ固体吸収剤と、このアミン含有ゲルを材料に使った分離膜があり、工場排ガスのような高濃度から大気中の0.04%の低濃度まで、条件に応じたCO2回収プロセスの設計が可能です(図3)。

図3:アミン含有ゲルの固体吸収剤(左)と分離膜塗工液(右)
(左写真提供:JCCL/右写真撮影:編集部)
固体吸収剤は、CO2濃度が5%以上の領域で高い性能を発揮します。「湿度が高い排ガスでも事前乾燥が不要で、吸収後の再生も40〜60℃の低温で行えます。このため、未利用排熱の利用が可能になり、最適条件では従来方式の約8分の1のエネルギーで回収できます」と、同社代表取締役CEOの梅原俊志氏は説明します。従来のアミン水溶液による回収方式のような高温加熱が不要であり、低コスト化につながります。
分離膜はCO2を選択的に透過し、低濃度領域で有効です。アミン含有ゲルを多孔質膜に塗布するだけで成膜でき、製造コストを抑えられます。
梅原氏は「工業排ガスであれば固体吸収剤だけで99%程度まで濃縮可能ですが、分離膜と固体吸収剤を組み合わせることで、空気中のCO2などの低濃度のCO2であっても99%程度まで濃縮できます」と話します。濃縮したCO2はコンクリートや化学品原料、eメタン製造など幅広く活用できます。
2025年10月からは、大日本印刷と共同で、両分離材料を組み合わせた回収装置の開発も進んでおり、社会実装への展開が期待されます。
「世界中での活用」に向け、装置開発とスケールアップを展開中
JCCLは、CO2分離材料を組み込んだ回収装置の実用化とスケールアップを進めています。2024年5月には、研究開発や実証の用途に適した装置を発売。CO2を固体吸収剤により吸収した上で分離・濃縮し、CO2を回収する装置を「VPSA」、分離膜にCO2含有ガスを透過させ、膜の性能を評価する装置を「VSS」シリーズとして展開しています(図4)。また1日30キログラム規模の装置も開発し、前述のeメタン実証試験で運用しています。

図4:CO2回収装置と選択透過膜装置。CO2回収装置VPSA1は1日あたり2キログラム程度のCO2を97%以上に濃縮・回収できる
(画像提供:JCCL)
2025年3月からは、東洋製罐グループホールディングスおよび三井物産プラスチックと協業し、1日300キログラム規模の回収装置の開発と事業化に取り組んでいます。今後もスケールアップを重ね、2030年ごろまでに10トン級のプラント実現を目指す方針です。
梅原氏は「JCCLのCO2回収装置が世界中で活用されることで、カーボンニュートラルの実現に貢献したい」と抱負を語りました。
次回は、二次電池材料をはじめとする最先端材料の研究開発を紹介する企業のブースからレポートをお届けします。
参考文献
- 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 2023年8月22日配信「CO2分離回収技術の進化で、カーボンニュートラル実現を目指す!」
https://green-innovation.nedo.go.jp/article/co2-separate/ - JCCL 2023年12月7日発表「地域の原料を活用したメタネーション実証事業の開始について」
https://jccl.jp/archives/652 - 「JCCL・九州大学が西部ガスの都市ガス工場で回収したCO2からカーボンニュートラルな都市ガス『e-methane』が合成されクリーンガス証書を取得しました!」
https://jccl.jp/archives/2411 - JCCL 2025年6月5日発表「世界初!家庭用給湯器からCO2の回収に成功!-学校、自治体、企業の事務所や家庭など全国に分散したCO2排出源から安全かつ低コストにCO2を回収可能!」
https://jccl.jp/archives/1958 - JCCL 2025年9月11日発表「大日本印刷とJCCL CO2分離回収事業で協業を開始 ― DNP科学分析センターとも連携し、CO2分析サービスも提供開始」
https://jccl.jp/archives/2170 - JCCL 2025年3月31日発表「JCCL×東洋製罐グループホールディングス×三井物産プラスチック CO2分離回収技術の早期社会実装に向けた3社共同の取り組みを開始-CO2を低コスト・高効率で回収する技術で環境負荷低減に貢献」
https://jccl.jp/archives/1630
和地慎太郎(わちしんたろう)
ライター(元技術系公務員)。東北大学大学院応用化学修了後、大手製造業で電子材料などの製造開発に従事。その後、地方公務員の化学技術職として、製造業者など多数の企業に対し、廃棄物処理など環境分野での施策を実施。環境省認定制度脱炭素アドバイザー、公害防止管理者、廃棄物処理施設技術管理者の各資格を保有。ビジネス系webメディアや製造業者のwebサイトなどで主に執筆。新著に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)がある。
