原料バイオ化で植物性100%界面活性剤やCO2減ポリウレタン実現へ―クラリアントジャパン【新機能性材料展レポート2025 第2回】

2025/05/13
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2025年1月に東京ビッグサイトで行われたモノづくり関連の製品・技術の展示会「新機能性材料展」では、「新機能」として環境負荷低減をうたう材料も紹介されていました。同展からChematelsが紹介する2社目は、スイスに本部を置くクラリアントジャパン(本社東京都文京区)です。欧州の事情にも詳しい同社は、日本の企業に先駆けて環境負荷低減のための先進的な取り組みをしています。

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クラリアントジャパンとは

クラリアントは世界50カ国以上に現地法人・関連会社を有するスイスの化学メーカーであり、ケアケミカルズ事業、触媒事業、吸着剤・添加剤事業の三つを戦略事業としています。

日本法人のクラリアントジャパンは化粧品・洗剤などの原料となる界面活性剤や天然物由来のオイル、プラスチック向け添加剤、工業用無機触媒などを扱っており、静岡県内と富山県内それぞれに、製造工場およびテクニカルセンターを有しています。

今回の展示会に参加したのは、クラリアントジャパンの中でも界面活性剤を扱う部署です。機能化学品ビジネスユニットインダストリアルアプリケーションズ新規ビジネス開発担当の佐野昌史さんは、「エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを重合(アルコキシレーション)させて製造するポリエチレングリコールおよびポリアルキレングリコールは、弊社の技術的な強みを生かした製品であり、これらを脂肪酸や脂肪族アルコールと反応させると界面活性剤になります」と言います(図1)。

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図1:クラリアントジャパンのコアテクノロジー。ポリアルキレングリコール類は油剤や樹脂改質剤、ウレタン原料などとなる。界面活性剤は乳化剤、分散剤、洗浄剤などとなる
⁠(画像提供:クラリアントジャパン)

バイオマス度100%の界面活性剤を製品化

クラリアントは脂肪族エトキシレートを始めとする非イオン系界面活性剤において、100%植物由来を実現しています。

以前からクラリアントは、植物由来の原料を使った非イオン系界面活性剤を扱っていました。ただし、原料に化石資源由来のエチレンオキサイドも使っていたため、バイオマス度を一定以上、向上させることは不可能でした(図2上)。

しかし、2021年にバイオベースのエチレンオキサイド製造技術を保有するインド・グリコール社とクラリアントの合弁会社クラリアント スペシャリティケミカルズ(CISC:Clariant IGL Specialty Chemicals)を設立し、協業することにより、従来は化石資源由来であったエチレンオキサイドを含む全ての原料をバイオマス由来にすることに成功し、100%植物由来の界面活性剤「VITAシリーズ」を上市したのです。同社は製糖時にサトウキビから出る黒い廃糖蜜を発酵し、それにより得られるバイオエタノールをエチレンオキサイドの原料に使用しています。

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図2:VITAシリーズの展示。全て大量生産が可能。カーボンフットプリントの数値は、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)の「温室効果ガス-製品のカーボンフットプリント-定量化のための要求事項及び指針」(ISO 14067)に従って算出
⁠(画像提供:クラリアントジャパン)

「サトウキビが育つ過程で吸収した二酸化炭素量も考慮に入れると、VITAシリーズの製品のなかにはカーボンネガティブになるものもあります。VITAシリーズは全ての製品でカーボンフットプリントの数値を算出し、カタログに掲載しています。他社では、こうしたカーボンフットプリントの数値を公表しているケースはまだ稀ですが、お客さまの利便性を考え、環境負荷軽減度の基礎データの提供に力を入れています」と、佐野さんは特長を説明します(図2下)。

顧客からの反響について佐野さんは、「例えば自動車業界のお客さまは、突然、バイオマス度の法規制ができるなどの事態に備えておられるようで、いまからバイオマス度を上げる検討を始めておこうとVITAシリーズに興味をもってくださっています。欧州では、大手化学メーカーが弊社のVITAシリーズを原料として使った界面活性剤をラインナップ化して、上市しているといった動きもあります」と語ります。

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ポリウレタンがもたらす環境負荷を原料バイオマス化で低減

VITAシリーズには、界面活性剤だけでなく、その原料であるポリエチレングリコール(PEG:Polyethylene glycol)も含まれます。PEGはさまざまな樹脂の原料になりえます。

さまざまな樹脂のなかでもウレタン樹脂は、使用後のリサイクルが難しい樹脂です。そのため、環境負荷を低減するには、製造時の環境負荷を下げる方法が有効です。ポリウレタンの原料はイソシアネートとポリオールですが、そのポリオールにVITAシリーズのPEGを使うと、バイオマス度が高いウレタン樹脂を作れます(図3)。

「すでにVITAを原料としたバイオマスウレタン樹脂を試作製造しているお客さまもおられます」と佐野さん。

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図3:VITAシリーズの用途の展示。アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂などのモノマーを合成するための原料やインキ塗料の添加剤としての用途も
⁠(画像提供:クラリアントジャパン)

VITAシリーズの中にはカーボンニュートラルを通り越してカーボンネガティブになる製品もあり、環境負荷低減の強力な一手になるかもしれません。

また、クラリアントはVITAシリーズ以外の従来品においても、アルコキシレーション技術を用いた各種ポリエーテル製品群(ポリエーテルポリオール、反応性ポリエーテル、グリコールエーテル)を取り揃えており、それらの製品におけるカーボンフットプリントデータも順次提供を始めています。

クラリアントジャパンの展示資料は関連カタログをご覧ください。

次回は第3回。「0.03mmで熱を絶つ」と出展企業がうたう材料を紹介します。

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村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。