ナノ加工向け! 屈折率も耐光性も高い樹脂など展示―三洋化成工業【新機能性材料展レポート2025 第1回】

2025/04/22
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Chematelsが、モノづくり関連の製品・技術の展示会「新機能性材料展」を初レポートします。2025年1月に東京ビッグサイトで行われた同展から、今回3社の展示に着目しました。第1回は、研究開発型の化学メーカー三洋化成工業(本社京都市東山区)の展示から二つの製品を紹介します。1月16日に同社が開発を発表したばかりの「ナノインプリント用紫外線硬化樹脂」と、新規参入したという「セラミックス製造用添加剤」で、どちらも同社が強く推す新機能性材料です。

スマートグラスなどの用途へ、ナノスケールのパターン転写樹脂を開発

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図1:ナノインプリント用高屈折率紫外線硬化樹脂「ハイルシス(HILUCIS)」を用いてガラスウエハーにさまざまなパターンをナノプリント成型したサンプル。光を屈折させている
⁠(画像提供:三洋化成工業)

拡張現実(AR:Augmented Reality)や仮想現実(VR:Virtual Reality)向けのスマートグラスでは、ディスプレーから放出させた光を、専用の光学システムを用いてユーザーの視線に合わせた方向へ効果的に屈折させ、拡張現実の映像として提示する仕組みが求められます。そこで必要になるのが高屈折率樹脂です。三洋化成工業は、高い耐光性と屈折率を両立するナノインプリント用紫外線硬化樹脂「ハイルシス(HILUCIS)」を開発しました(図1)。

耐光性に優れていると、使用しているうちに樹脂が黄色く変色するのを抑えられます(図2高耐光性)。そのため、長期にわたり透明性を維持するスマートグラスを実現できます。同社高機能マテリアル電子材料営業部電子材料グループの山下真友子さんは「ハイルシスには、光触媒活性が低い特殊な無機フィラーを分散させています。高屈折率にするために一般的に用いる酸化チタン(TiO2)と比較して耐光性がよくなります。」と説明します。

また、100ナノメートル以下といったナノサイズの細かくて複雑なパターンも精度よく成型でき、光学設計の自由度を高めることに成功しています(図2ナノインプリント成型性)。成型の精度の高さは、樹脂がきれいに剥がれる離型性に優れているため実現できます。

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図2:ハイルシスの展示パネル。ナノインプリントの拡大写真は、ハイルシスを用いて、SCIVAX社にてナノインプリント成型したもの
⁠(画像提供:三洋化成工業)

同社はハイルシスの用途として、スマートグラス以外にも、顔認証システムや自動運転技術における3次元センサーや光検出・測距(LiDAR:Light Detection And Ranging)センサー、マイクロレンズアレイや回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)、ディスプレー用反射防止コーティングを挙げています。

新規参入! 歩留まりを向上させる添加剤

三洋化成工業は、自社の持つ技術を生かし、新たにセラミックス製造用の添加剤市場への参入を目指しています。その第一歩として、「アドプラスト」という新製品を開発しました。

コンデンサやセンサーに使われるセラミックスの製造工程では、溶媒中にバインダー樹脂や粉末材料、添加剤を溶かしたスラリーを塗工・印刷し、乾燥させて、グリーンシートというシート状の構造を作ります。その際、スラリーが分離してしまうと、グリーンシートの性能が狙った品質を満たさず、最終的なセラミックスの仕上がりに悪影響を及ぼします。そこで、スラリーを均質に保つために、可塑剤や分散剤などの添加剤が使用されます。中でも、使用する添加剤の種類や組み合わせの選定は、非常に重要な要素となります。

同社高機能マテリアル事業本部電子材料営業部エネルギー材料グループマネージャーの西田稔さんは、「アドプラストは、可塑剤の機能と分散剤の機能両方をもつ、一石二鳥というにふさわしい添加剤です」と説明します(図3)。

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図3:アドプラストの展示パネル。グラフはBM-1、BM-Sという2種のポリビニルブチラール(PVB:Polyvinyl butyral)樹脂にADS-001、ADS-002、ADS-103というアドプラストを添加したときの伸び率(左)と、ブリードアウト性(右)を示す。青系で示したジオクチルフタレート(DOP:Dioctyl phthalate)は汎用的な可塑剤。「樹脂により性能を出せるアドプラストの種類が異なるので、お客さまにはサンプルを取り寄せてご検討いただきたい」と西田さん
⁠(画像提供:三洋化成工業)

高機能マテリアル事業本部研究部機能性樹脂原料研究グループユニットチーフの山下泰治さんは、「一般的に、こうした用途にフタル酸エステル類を添加しています。ただし、フタル酸エステル類は環境ホルモン*1に分類されるため問題視されるようになってきました。アドプラストを使えば、フタル酸フリーを実現できます」と話します。

製品の供給について山下さんは、「すでに量産の体制も整っていますので、供給安定性のご心配はせず、サンプルを試していただきたく思います。ポリビニルアルコール(PVA:Polyvinyl alcohol)などの水系バインダー用、アクリルやポリビニルブチラール(PVB)などの溶剤系バインダー用についてそれぞれ複数の製品ラインナップをとり揃えています」と説明します(図4)。

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図4:アドプラストの製品ラインナップ。疎水性・親水性や直鎖タイプ・分岐タイプなど、性能や化学構造の異なる製品をとり揃える
⁠(画像提供:三洋化成工業)

セラミックスを使うコンデンサやセンサーは高単価となるため、歩留まりを上げることはコストダウンに大きく効いてきます。西田さんは「自社の強みを生かして新しく参入した分野なので、ぜひ多くのお客さまに知っていただければと思います」と抱負を語ります。

三洋化成工業が力を入れる二つの製品が、これまで解決策がなく困っていたメーカーを救うかもしれません。紹介した製品の紹介と同社へのお問い合わせのウェブページをお知らせします。

「ハイルシス」紹介ページ:https://solutions.sanyo-chemical.co.jp/products/hilucis/

「アドプラスト」紹介ページ:https://solutions.sanyo-chemical.co.jp/products/adplast/

三洋化成工業へのお問い合せ:https://solutions.sanyo-chemical.co.jp/inquiry/

次回はスイスに本社を置く化学メーカーの日本法人が出展するブースから、バイオ界面活性剤などの話題をお届けする予定です。

注釈

*1:環境ホルモン
生体内に取り込まれると、ホルモンに似た働きをする化学物質の総称。内分泌かく乱化学物質とも。人体への影響が問題視されています。

村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。