新型LIBSでリアルタイム元素分析を実現 SL&PS【Zoom up!企業ニュース】

2025/03/06
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編集長:レーザー光線って、何だかワクワクしないか?

デスク:分かります。特撮映画で怪獣が口から出してそうですものね。

編集長:強いレーザー光を当てると、当たった場所の温度が高くなってプラズマが生成されるんだよね。

デスク:ああ、プラズマもかっこいいですね。SFアニメの宇宙船の必殺技みたいで。

編集長:そのプラズマの発光を分析することで、製造ラインを止めずに対象物の元素組成を計測できるシステムを開発した会社があるんだ。取材のほう、よろしく頼むよ。

デスク:えっ!? 仕事の話をしていたんですか?

編集長:当たり前だろう、仕事中なんだから。

デスク:分かりました。さっそく記者に詳しい話を聞いてきてもらいます!

レーザーとプラズマの技術で製造ライン上の元素分析が可能に!

製造業では、新素材開発や品質向上のために、材料や製品の元素組成を正確に把握することが求められます。これらのために使う元素分析装置は据え置き型が主流で、測定対象を装置へ持ち込んで分析することが一般的です。

しかし、例えば次のようなケースから、製造プロセス中にリアルタイムで元素分析を行いたいというニーズが高まっています。

  • 鉄鋼製造の各プロセスでリアルタイムに組成をモニタリングし、融解金属の組成を制御したい。
  • リサイクル品に含まれる希少金属を特定し、効率的に回収したい。
  • 食品製造中に成分分析を行い、品質を調整したい。

これまで、製造ラインを止めずに元素分析を行うのに適した技術はありませんでした。しかし、Smart Laser & Plasma Systems(SL&PS)社が開発した「LS-DP-LIBS」(Long and Short Double Pulse-LIBS)は、従来は不可能だったリアルタイム元素分析を可能にしました。

同社代表の出口祥啓さんは、LS-DP-LIBSについて次のように説明します。

「LS-DP-LIBSは、レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS:Laser Induced Breakdown Spectroscopy)をプロセスラインで使用可能にしたシステムです。LIBSは、レーザー光を使い、非接触かつリアルタイムで試料の元素組成を計測します。従来はベンチトップ型の装置として利用されていました。このLIBSにオートフォーカス機能付きカメラや、サンプル表面の異物を除去するロングパルスレーザーを組み合わせることで、製造ライン上で連続的に元素測定を行うことを可能にしたのです(図1)」

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図1: PFASが添加されている製品の例
⁠(画像提供:SL&PS)

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遠隔での測定が可能

LS-DP-LIBSは、非接触でリアルタイムに元素計測できることから、遠隔での測定が可能です(図2)。通常の計測装置が近づけない環境でも使用可能なため、溶鉱炉中の融解金属の元素組成を測定したり、化学プラントやゴミ焼却炉など大型設備の内部をリアルタイムで可視化したりできます。

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図2:LS-DP-LIBSの利用イメージ 遠隔型
⁠(画像提供:SL&PS)

LS-DP-LIBSは福島第一原子力発電所の廃炉作業における燃料デブリの分析にも使える可能性があります。

「廃炉作業では、核燃料物質かどうかをその場で判別する必要があります。遠隔で分析できるLS-DP-LIBSは、燃料デブリを動かさずにその場で分析できる可能性のある有力な方法です。私たちは現在、日本原子力研究開発機構と協力して、分析プロジェクトを進めています」

分析が速い、汎用性が高い、ロスが少ない

LS-DP-LIBSの特長は遠隔測定できること以外にもあります。一つは、分析の速さです。レーザー光照射を最高 1kHz(1秒間に1000発)で行うことができます。図3のような組込型のLS-DP-LIBSを用いると、ベルトコンベア上の対象物を、ラインを止めずに分析することが可能になります。

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図3:LS-DP-LIBSの利用イメージ 組込型
⁠(画像提供:SL&PS)

汎用性の高さも、出口さんは特長に挙げます。

「ロングパルスレーザーで表面をクリーニングしてから測定するため、メッキや塗装が施された対象物でも測定できます。また、対象物は金属だけではありません。粉末や気体、水の中にある試料も測定可能です。さらに、X線を使用しないため、放射線管理区域の指定も必要ありません。非常に汎用性が高い測定装置といえます」

他に、エネルギーや資源を節約できる点も特長です。

「従来のサンプリングによる測定に比べてリアルタイムのモニタリングは簡便である分、ロスを少なく済ませられます」

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ブラックボックスの可視化を起点にDXを加速させていく

据え置き型の元素分析装置では、工程上の知りたい点を解明するのに限界がありました。その点、製造プロセス中の材料の元素をリアルタイムで分析できるLS-DP-LIBSは、ブラックボックスだった工程を可視化する技術といえます。

「工程が可視化されることで、原料や製造プロセスの最適化が可能になります」

この点から、製造業のデジタル・トランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)を加速させる可能性が見えてきます。

「さらに、計測して蓄積していくデータを活用すれば、将来的には人工知能を用いたプロセス全体の全自動化も実現できます。製造業はDXが進みにくい分野ですが、実測データが蓄積されていけば、シミュレーションによる製造プロセスの最適化や新たな製品開発などの道も広がっていくと考えています」

出口さんがこのように語るのは、SL&PS社が「デジタルツイン」の技術も開発しているからです。デジタルツインとは、現実世界と同様のものを仮想空間でのシミュレーションにより再現する技術のこと(図4)。出口さんが続けます。

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図4:デジタルツインの概念
⁠(画像提供:SL&PS社)

「SL&PS社は測定機器だけでなく、産業プロセス全体を全自動化するDX化プラットフォームを、複数の企業・研究機関とともに開発をしています(図5)。デジタルツインが産業界でも利用できるようになれば、製造などのプロセスを自動で制御できるようになるでしょう。作業プロセスも大きく変わっていくはずです。そのためには、データの蓄積が必要です。LS-DP-LIBSのようにリアルタイムに計測できる機器を導入することは、その第一歩といえるかもしれません」

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図5:企業・研究機関・大学との連携
(画像提供:SL&PS社)

顕微鏡型や10元素同時測定システムも開発中

SL&PS社は、現場のニーズに応えて、LS-DP-LIBSをさらに進歩させています。

「リアルタイム測定とは別に、手軽に組成を確認したいという要望があり、顕微鏡型のMS-LIBSを開発しました。真空環境が不要で、試料の表面を磨く必要もありません。顕微鏡として構造を見ながら、元素分析を同時に行えます。価格も抑えられたので、まずはMS-LIBSから試したいというお客さまの声を多くいただいています」

また、同時に10種類の元素が測定できるLIBSシステムも開発しています。ラインで流れてくるものを一度に評価することが可能になれば、作業効率は上がり、適用範囲も広がると出口さんは語ります。

「LS-DP-LIBSに興味を持っていただいた場合、最初のステップとしては、まず測定したい試料を送っていただき、こちらで分析をします。その結果を提出させていただき、うまくマッチングしそうであれば、装置の導入を検討していただく形です。顕微鏡型のシステムや10種類の元素が測定できるシステムも、間もなく製品化する予定なので、お気軽にお問合せいただければと思います」

これまでできなかった測定を可能にするLS-DP-LIBS。この技術の活躍は、産業界のDXを大きく後押ししそうです。今後の展開から目が離せません。

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寒竹 泉美(かんちくいずみ)

理系ライター・小説家 九州大学理学部化学科卒業後、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。小説を書く傍ら、理系ライター集団チーム・パスカルに所属し、研究者インタビューや理系企業のオウンドメディアを中心に執筆している。