粉末にも、可食フィルムにも…食の無駄なくす技が続々―大阪ガスリキッド/伊那食品工業【食品開発展レポート2024 第3回】
2025/02/182024年10月23日から25日まで東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された食品分野の専門展示会「食品開発展」のレポートはいよいよ最終回。食品開発展をまわり、印象に残ったのは環境に配慮した技術や製品が多いということでした。 食材を無駄にせず、おいしくするための製品や技術を紹介します。大阪ガスリキッドの「超低温凍結粉砕」ならびに、伊那食品工業の「クレール」です。
超低温で食品を粉々に、風味を損なわず
大阪ガスリキッドは、液化窒素の超低温(−196℃)を利用した粉砕システム「低温・凍結粉砕」を展示していました。

図1:大阪ガスリキッドの粉砕システム「低温・凍結粉砕」でパウダー化した食品。各展示物の左は原料、右は粉砕品
窒素は常温では気体ですが、冷却すると液化窒素になり、この中に食品を入れると瞬時に凍ります。凍った食品は粉砕しやすくなり、水分を多く含む野菜や油分を多く含むゴマなども粉砕できます。粉砕時の発熱も抑えられるため、原料の風味も損ないません。
果実味が特徴の缶酎ハイや鮮やかな緑色を保つ抹茶パウダーなどさまざまな用途で使われているそうです。さらに、この技術を用いれば、今まで捨てていた部分も粉砕できるとのこと。粉砕することで、用途が広がり食品を無駄なく利用できます。
同社の親会社である大阪ガスは都市ガスの原料である液化天然ガスを輸入し、それを気化して供給しています。そのときに排出される冷熱エネルギーを利用して、空気から液化窒素を製造し、低温凍結粉砕に利用しているという、エネルギーも食品も無駄にしない技術です。
海藻由来の“食べられる”フィルムを開発
寒天を製造する伊那食品工業は、寒天をはじめとした食品から可食性フィルムを開発しました。無味無臭で、加熱すれば溶けてしまうという特徴があります。透明なフィルム状の「クレール」という製品を紹介していました。

図2:伊那食品工業の食べられるフィルム「クレール」の紹介(左)。関連製品「トンボのはね」の紹介も(右)
クレールには、溶ける温度ごとに「高温」「中温」「低温」といった種類があり、用途によって使い分けることができます。水分の多い食材をまとめたり、水分の移行を防いだりするのにこのフィルムを使うことができ、加熱すれば、溶けてしまうので取り除く必要がありません。
例えば、電子レンジで調理する麺には、麺とゼラチンで固めたスープを仕切るフィルムが入っていますが、このフィルムならそのまま調理できるというわけです。カップ麺なら、スープや具などが別の袋にはいっていますが、袋ごとお湯を注いで大丈夫なのです。
同社はさらに、可食性フィルムを熱で貼り合わせて袋状にできる「トンボのはね」という製品も紹介していました。これらは、寒天の原料である海藻の物性を知り尽くしている同社ならではの技術とアイデアの成果といえます。調理がしやすくなり、ごみも減るというエコ素材として注目されています。
「食品開発展レポート2024」を全3回にわたりお読みいただきありがとうございました。
佐藤 成美(さとうなるみ)
サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)。東京大学大学院農学生命科学研究科修了(農学博士)。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。科学の幅広い分野について一般向けの記事のほか、研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『本当に役立つ栄養学』『「おいしさ」の科学』(以上、講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。
