「腸内代謝物」を機能性食品素材として製品化―ダイセル【食品開発展レポート2024 第1回】
2024/12/122024年10月23日から25日まで、東京ビッグサイト(東京都江東区)で「食品開発展」が開催されました。食品分野の研究開発技術者や製造技術者向けの専門展示会で、「健康」「おいしさ」「安全・品質」「フードロングライフ」をテーマに、950ほどの展示ブースが並び、各企業のプレゼンテーションが行われました。今回から3回にわたり、注目の技術や製品を紹介します。第1回で紹介するのは、ダイセルの腸内代謝物であるホップ抽出発酵物「アストロホップ®」です。同社は、化学品メーカーとして知られますが、独自の機能性食品素材も開発しています。
腸内細菌がもたらす「腸内代謝物」に着目
健康には腸内環境を整えることが必要と叫ばれています。そのためには、有用な腸内細菌を指すプロバイオティクスと、腸内細菌を育てる餌に当たるプレバイオティクスを食事で取ることが役立つとされています。
しかしながら、それだけでなく、腸内細菌が代謝した「腸内代謝物」の機能が重要であることが、次々と明らかになってきました。
ダイセル(本社大阪市)は、プレバイオティクスやプロバイオティクスに続く有用なものとして、腸内代謝物に注目しました。そして、腸内における腸内細菌の代謝を体の外部で再現する技術を開発し、その技術を用いて、さまざまな食品から、有用な代謝物を探しています。食品開発展では、腸内代謝物シリーズとして「アストロホップ®」のほか、「フラボセル®」「ウロリッチ®」などの機能性食品素材を紹介していました。

図1:アストロホップについての紹介
ホップに機能性成分が見つかった
「筋肉ケアの新素材として、今回の一押しです」と、ダイセルヘルスケアSBUマーケティング部の髙田涼介さんが紹介してくれたアストロホップは、成分名を「8-プレニルナリンゲニン」(8PN:8 Prenylnaringenin)といいます。「キサントフモール」「イソキサントフモール」の腸内代謝物の一つで、ビールの原料として知られるホップに含まれます。
「昔から、ホップにエストロゲン様、つまり女性ホルモン様の作用があることが知られていました。その後、研究が進んでいく中で8PNの機能が明らかになってきたのです」と、同社ヘルスケアSBU事業推進室事業戦略グループ小原亜希子さんが説明してくれました。
8PNは、筋肉のタンパク質の合成を促進し、分解を抑制することで、筋萎縮を抑え、回復を導くことが期待できます。筋萎縮とは筋肉が痩せること。運動不足や加齢などで起こり、筋力の低下を招きます。
研究によれば、8PNには骨格筋へのアミノ酸の取り込みをよくし、それにより筋萎縮を抑える可能性があることや、腸内でキサントフモールから8PN に変換する能力は個人差があることが明らかになっています。これらに対し同社は、イソキサントフモールから8PNへの変換能力の高い腸内細菌を見つけました。そして、8PNを大量生産する技術を確立し、アストロホップとして発売できることになったとのこと。
「高齢者、アスリート、ダイエット中の人にも」
髙田さんは「筋肉の衰えやすくなる高齢者はもちろんのこと、アスリートや栄養不足になりがちなダイエット中の人にもおすすめしたいです」と話します。
高齢になると筋肉が衰え、寝たきりにもつながります。また、日常的に運動しているアスリートは、ケガなどで運動ができないと筋肉量を減らしてしまうので、トレーニング休止期間の摂取もおすすめとのこと。筋肉を鍛えるには運動するのはもちろんですが、それに加えてこのような素材で補うというのも新しい方法と感じました。
次回は、健康食品素材を手がける企業の展示ブースから「糖化を抑制する製品」について紹介する予定です。
佐藤 成美(さとうなるみ)
サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)。東京大学大学院農学生命科学研究科修了(農学博士)。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。科学の幅広い分野について一般向けの記事のほか、研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『本当に役立つ栄養学』『「おいしさ」の科学』(以上、講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。
