長寿命化! 大容量化! 二次電池を高性能にする材料を取り揃え―第一工業製薬【サスマ展レポート2024 第2回】

2025/02/06
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Chematels編集部がお届けする、第4回サステナブルマテリアル展(サスマ展)レポート2024の第2回は、「界面活性剤」「アメニティ材料」「ウレタン材料」「機能材料」「電子デバイス材料」「ライフサイエンス」の各事業領域を手がける第一工業製薬を取り上げます。ブースでは18アイテムの展示がありましたが、その中から電池用の機能材料を紹介します。

電池内の液体をゲル化するポリマー電解質材料

液漏れなどの心配がない全固体電池は、安全性が高く耐熱性に優れ、二次電池などとして長寿命化が期待できると注目されています。しかし、固体同士が接触する界面で抵抗が発生してしまい出力が上がらず、まだ実用化の例に乏しいというのが現状です。いまなお二次電池の主流は電解質に液体が使われているリチウムイオン電池といえます。

そこで、第一工業製薬はリチウムイオン電池の液漏れの弱点を解消する機能性材料として、ポリマー電解質材料「エレクセルACGシリーズ」を提案しています。この材料は電池内の電解液をゲル化させる役割を果たします。添加する量によってゲル形態を調整することができる点や、室温では粘性が低く60℃くらいに加熱して初めてゲル化できる点が特長です。ACGを添加することで、充放電を繰り返したときの電池性能の劣化を抑えることもできます(図1)。

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図1:ACG添加の効果。(左)添加量でゲル形態が調整できる。(右)グラフ横軸はサイクル回数、縦軸は放電容量保持率。ACGを添加すると充放電を繰り返しても電池が劣化しにくくなる
⁠(画像提供:第一工業製薬)

ACGを使うと電池の形状に制限がないことも利点にあげられます。またゲルの特長を生かして電極と良好な界面形成が可能なため、全固体電池のように電池作動中に圧力をかけ続ける必要がありません。

展示ではほかに、無溶媒タイプで電解質の自立膜を作ることができる電解質ポリマー「TA-210」や、無機粒子と架橋する電解質ポリマー「TA-501」も紹介していました。

「海外のお客さまからの問い合わせが多いですね。海外では、ポリマー系固体電池の開発路線が活性化していると感じます」と、研究本部エレクセル開発部京都研究グループ長の星原悠司さんは研究の最前線での印象を語ります。

リチウムイオンの高速移動を助ける表面改質材

電池の高速充電や高出力化には、リチウムイオンの高速移動が重要です。しかし、従来の液体系電池ではリチウムイオンの周囲は溶媒で囲まれた溶媒和の状態となっており、放電時に活物質内へリチウムイオンが移動するとき脱溶媒和をしなければなりません。しかしながら、脱溶媒和は物質拡散を伴うため時間がかかってしまいます。しかも、溶媒をまとっているので、活物質に近づけるリチウムイオンの数も限られてしまいます。これらがリチウムイオンが高速移動できない原因であり、高出力化を妨げています。

そこで、第一工業製薬は、溶媒をまとっていないリチウムイオンが活物質表面に存在しやすくなるように活物質表面にコートするポリマー表面改質材「SMG-101」を開発しました(図2)。

「あらかじめリチウムイオンが活物質の表面に待機している状態をつくれるので、より大電流で電池を使用できるようになります。ポリマー溶液での提供となりますが、簡便な湿式混合操作により活物質表面へのコートが可能です」と、星原さんは説明します。

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図2:SMG-101被覆の効果。左下グラフ横軸は1g当たりの容量。縦軸は電圧。SMG-101を1wt%コートすると、右グラフのとおりサイクル寿命特性に悪影響を及ぼさず高出力の電池として機能する。3wt%コートするとポリマーとしての抵抗が生じ、効果が薄れる
⁠(画像提供:第一工業製薬)

電池の膨張・収縮による劣化を防ぐバインダー

電気自動車用には航続距離の長さが求められます。そのため、自動車用リチウムイオン電池には、小型・軽量でエネルギー密度を向上させようという動きがあります。そこで使われるようになったのが、シリコン系活物質です。しかし、シリコンでは充放電時の体積変化が大きく、膨張と収縮が繰り返されることで電極構造が破壊され、電池性能の低下につながります。

そこで、第一工業製薬は膨張に追従し、収縮時に元に戻し、電極構造の破壊を抑制する結着剤「CRバインダー」を開発しました。水系のバインダーのため、従来プロセスへの適用が可能です。CRバインダーで、一酸化ケイ素(SiO)100%負極でもサイクル特性を向上させることができるようになりました(図3)。

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図3:CRバインダー添加の効果
⁠(画像提供:第一工業製薬)

ブースではまた、より強固に厚みの変化を抑え込むポリイミドの結着材料「エレクセルEPI」も紹介していました(図4)。

「電池系の材料にはフッ素系のポリマーが使われていましたが、環境規制の観点からフッ素が問題視されています。エレクセルEPIはフッ素フリーのポリミドバインダーです。また、汎用のポリイミド系の材料は高温処理を必要とする場合が多いのに対し、EPIは溶媒に溶解している可溶性ポリイミドであり、高温処理が不要です。現行のフッ素系ポリマーと同様に扱える点も特長の一つです」と、研究本部エレクセル開発部霞研究グループの坂本紘一さんは説明します。

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図4: EPIの添加効果
⁠(写真撮影:筆者、画像提供:第一工業製薬)

界面活性剤に強い第一工業製薬が、その強みも生かしながら開発する電池用機能性材料の数々、いかがでしたでしょうか。少量の添加で機能が向上する材料が揃っている印象でした。用途に合いそうな製品の試用を検討してみてはいかがでしょうか。

次回の第3回では「サステナブル素材のセレクトショップ」を紹介する予定です。

村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。