PFAS含有添加剤25年末に販売終了、フリー添加剤に ビックケミー・ジャパン【Zoom up!企業ニュース】
2024/12/05デスク:井戸水や河川からPFASの検出が増えてきて、PFAS除去の動きが盛んになっていますね。
編集長:PFAS……ああ、一部の種類で健康リスクがあるといわれる化合物のことね。でも、そもそもどうしてPFASが使われているんだろう。
デスク:撥水性や耐久性をもたらすから添加剤として使われることが多いそうですよ。
編集長:PFASの代替品があればいいのになあ。
デスク:そういえば、ビックケミー・ジャパンという添加剤メーカーが2025年末にPFASを使った添加剤の販売を終了するという話を聞きました。代替品への置き換えをしているとか。
編集長:おお、一足先に手を打っているという感じがするね。詳しい話を記者に聞いてきてもらおうか。
規制が始まっているPFAS
ペルフルオロおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS:Per and
polyfluoroalkyl substances)は、フッ素と炭素の結合を特徴とする化合物の総称です。すべて人工的に合成されたもので、現在までに1万種類のPFASが存在するとされています。一般消費者に身近なものでいえば、米国デュポン社の登録商標「テフロン」などとして知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE Polytetrafluoroethylene)があります。
PFASは高い安定性や耐久性、撥水性、電気・熱絶縁性などをもち、多くの工業製品に使用されています(図1)。わずかな添加量で効果を発揮するため、しばしば添加剤として使われることもあります。例えば、撥水性を生かしてレインコートや表面処理材に、また耐候性を生かして建築材料に、さらに界面活性特性を利用して塗料に添加されることがあります。泡消火剤用添加剤として使われてきた歴史もあります。

図1: PFASが添加されている製品の例
(画像提供:ビックケミー・ジャパン)
しかし、その特徴が難分解性や生物蓄積性というかたちで裏目に出ており、北極圏も含めて世界中で残留していることが分かってきました。そのことから、PFASはしばしば「永遠の化学物質」と表現されるほどです。
特に、PFASの中でもペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS:Perfluorooctanesulfonic acid)とペルフルオロオクタン酸(PFOA:Perfluorooctanoic acid)は健康被害が懸念されており、世界中で規制が始まっています。日本においても、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)という法律のもと、PFOSは2010年、またPFOAは2021年より製造や輸入が原則禁止されています。
河川や水道水などのPFAS残留について報道されることがありますが、日本における飲料水の暫定目標値は「PFOSとPFOA合算で50 ng/L以下」です。
2025年末にPFAS含有添加剤の販売停止へ
PFOSとPFOAはすでに世界的に規制されていますが、欧州の一部ではPFAS全廃を掲げる動きもあります。そのため、製品を海外に輸出する場合には、こうしたグローバルな動向を注視する必要があります。
そのような中、2025年末までに全面的にPFASフリーを掲げる企業が現れました。それがビックケミーです。
同社は、ドイツに本社を置く化学メーカーであるアルタナグループのメンバーで、添加剤の開発、製造、販売を主力事業としています。生産拠点はドイツ、オランダ、英国、米国、中国にあり、日本では海外で製造された製品を輸入して全国に販売しています。
製品には、消泡剤および脱泡剤、表面添加剤、ワックス添加剤などを取り揃えています。従来、これらの添加剤にはPFASが含まれているものがありました。
そのPFAS含有添加剤の製造および出荷を2025年末で終了するというのが、同社の宣言です。日本拠点であるビックケミー・ジャパンの担当者は、「今後なんらかの規制が行われるのは避けられないと考えています。そこで当社では、規制に先立ってPFASフリーを実現することにしました」と話します。
しかし、すでにPFAS含有添加剤はさまざまなところで使用されています。PFASフリー添加剤へ切り替える場合、顧客としては同じ性能を発揮できるのか、最終製品に影響は出ないのかという懸念が生じるのは当然のことです。
その点、同社はすでにPFAS含有添加剤の代替品となる製品を多く取り揃えています。例えば、ワックス添加剤では、従来のPTFE含有製品と同等の優れた耐摩耗性や耐擦り傷性、摩擦係数の軽減を実現したといいます(図2)。クリアコーティングや曇り度合の低さが求められる用途向けの「CERAFLOUR 1050」、さまざまな用途で耐摩耗性効果を付与する「同1051」、より低い摩擦係数が止められる際に有効な「同1052」の3種類をラインナップしています。

図2:PFAS含有添加剤と代替品などの性能比較。PTFE含有の従来品CERAFLOUR 996 R, 999, CREACOL 607 Rと比べて、CERAFLOUR 1050, 1051, 1052は同等の摩擦係数軽減と硬度を実現。Sheen硬度はTQC社のTQC Sheen硬度計による硬度
(画像提供:ビックケミー・ジャパン、一部を編集部で加工)
塗料向け消泡剤では、新規に変性シリコン系消泡剤を開発し、PFAS含有消泡剤と同等の性能を実現したとのこと。顧客の製品ごとに求められる性能は異なるため、PFASフリー消泡剤は「BYK-1810」「同1811」など5種類用意し、目的に応じたフローチャート(図3)も作成して顧客が対応しやすいようにしています。

図3:PFAS含有消泡剤代替フローチャート
(画像提供:ビックケミー・ジャパン)
同社は他にも、2024年10月時点で表面添加剤、熱可塑性プラスチック用途の加工助剤でPFASフリーの製品を用意しています。
PFASフリーはフィロソフィーである
ビックケミー・ジャパンの担当者によると、日本国内でPFASフリーに向けた動きはまだ鈍いとのこと。しかし、なんらかの規制が追加されれば、PFASフリーへの機運は高まるだろうと予測しています。
最後に、化学業界向けに次のように呼びかけます。
「どんな製品も、最終的には一般消費者に届きます。その製品の中に、健康被害が懸念されるPFASが含まれていることは今後、通用しないでしょう。企業として当然コストを考えなければいけませんが、地球や人類社会全体の持続可能性を考えれば、PFASフリーはフィロソフィーとしてあるべきであると考えています」
島田 祥輔(しまだしょうすけ)
サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。
