多孔性材料PCP/MOFを扱いやすい成形品に、瞬間消臭などに活用 大原パラヂウム化学【Zoom up!企業ニュース】

2024/09/25
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編集長:ところで、君は「PCP/MOF」って知ってるかい。

デスク:ピーシーピー…モフ、ですか。なんだか難しそうな名前ですね…。なにかの技術用語ですか。

編集長:まぁそうだな。非常に高い吸着能力と設計自由度を持つ多孔性材料のことだよ。活性炭とは比べものにならない程すごい材料らしい。

デスク:へえ! それは興味深いですね!

編集長:このPCP/MOFを応用して消臭剤に応用したのが、大原パラヂウム化学だ。「瞬間消臭」をうたっている。PCP/MOFに消臭剤としての驚異的なポテンシャルがあることに気づき、消臭に特化したPCP/MOFを開発・製品化したらしい。

デスク:「瞬間消臭」ですか! 家庭や工場など色々な場所で役立ちそうですね。いますぐ記者に取材に行ってもらいましょう!

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吸着能力・設計自由度が高い夢の多孔性材料「PCP/MOF」

多孔性配位高分子/金属有機構造体(PCP/MOF:Porous Coordination Polymer / Metal
Organic Framework)は、金属イオンと有機配位子がジャングルジムのように組み合わさった構造体です。1990年代後半に、京都大学の研究者によって発明されました。

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図1:PCP/MOFの模式図。金属イオンと有機配位子が組み合わさった構造で、内部には規則的な孔が無数に存在する
⁠(画像提供:大原パラヂウム化学)

PCP/MOFの内部には無数の孔があり、活性炭のように気体分子を吸着できます。多孔性材料の吸着能力を表す「比表面積」は1g当たりテニスコートおよそ27面分と極めて大きく、活性炭の何倍もの気体分子を取り込める点が特徴です。

さらに、PCP/MOFは金属イオンと有機配位子の組み合わせにより孔の大きさや性質を自由に変更できるため、特定の分子のみを高精度に吸着するよう設計できます。また、使用する金属イオンの特性、例えば銅イオンの抗菌性といったものも利用することが可能です。これらの特徴から、PCP/MOFは新世代の多孔性材料として材料科学分野にブレイクスルーをもたらしました。現在も、日々新たな構造のPCP/MOFが開発されており、気体の貯蔵・分離に役立てられています。

このPCP/MOFを多分野に広めようと挑戦を続けるのが、大原パラヂウム化学です。

消臭への強いこだわりから、PCP/MOFに出合う

大原パラヂウム化学は、1926(大正15)年創業の化学品メーカーです。祖業の繊維加工剤事業をメインに、さまざまな化学品事業を展開しています。

同社がPCP/MOFと出合ったのは、2019年。きっかけは「消臭」に対する強いこだわりだったと、同社専務取締役の大原正吉さんは振り返ります。

「私たちは長年、繊維の後加工剤としてさまざまな消臭剤を販売してきました。しかし、根強く要望の多いタバコ臭や排泄臭に対応できる技術の確立は困難で、ヒントを探し続けていました。その中で偶然出会ったのが、PCP/MOFだったのです」

活性炭よりはるかに優れた吸着能力を持つPCP/MOFならば、これまで取りきれなかった臭いを除去できるかもしれない。そんな希望を抱いた同社は、京都大学のアドバイスも受けながら、臭いの吸着に適した構造のPCP/MOFを探しはじめました。

しかし、本当に大変なのは「目的のPCP/MOFが見つかった後だった」と大原さんは言います。

「PCP/MOFは一般に非常に細かい粉なので簡単に舞ってしまい、そのままでは消臭製品として使いにくいと分かったのです。そこで私たちは、PCP/MOFの規則的な多孔性を維持したまま、PCP/MOFを粒状やシートなどの使いやすい形状に成形する技術を開発しました。苦労しましたが、創業時から蓄積してきた技術力を生かして何とかやり遂げました。このようなPCP/MOFの加工技術を持つ企業はほかにないと思います」

活性炭に比べて極めて高い消臭率、酸性・塩基性ガスの両方に対応

同社はこの加工技術を活用し、2023年に「b.cave」という消臭向けのPCP/MOF製品を上市しました。現在4つのシリーズを展開しています。活性炭に比べて極めて高い消臭率が数時間にわたって持続することを示す試験データや、酸性ガス類で腐ったタマネギのような臭いを呈するメルカプタンも、塩基性ガス類でし尿の臭い呈するアンモニアも、共に短時間で消臭できる試験データが出ています(図2)。

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図2:b.caveシリーズと各種試験データ。造粒品(上左)では生ゴミ臭などに対して100%に近い消臭率が5時間持続。押出成形品(上右)、打錠成形品(下左)、シート品(下右)では、酸性ガス類の硫化水素と塩基性ガス類のアンモニアなどを共に高率で消臭
⁠(画像提供:大原パラヂウム化学)

「b.caveはタバコ、生ごみ、排泄臭といった生活における不快臭だけでなく、下水道やゴム工場、食品工場、畜産・酪農場などで発生する強力な臭気にも対応できます。ぜひ多くの分野で活用していただきたいですね」と、大原さんは自信を見せます。

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使いやすさを追求し、フィルター組み込み式を構想

b.caveの使いやすさに着目すると、活性炭などの他材料を任意の割合で混合できるという特長があります。これにより、高価なPCP/MOFの使用量を調整できるだけでなく、PCP/MOFと他材料のメリットを両方活用して、より複合的に臭いを取り切ることができます。

同社は、さらにb.caveの使いやすさを向上させる新たな取り組みも進めています。

「b.caveをフィルターに組み込んでユニット化したものを販売したいと考えています(図3)。臭気源となる装置の後段にこの消臭ユニットを接続するだけで、臭気が取れる仕組みです。設置場所や設置方法を考える必要がないので、手軽にb.caveを使用いただけます」

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図3:b.caveを組み込んだ消臭ユニットのイメージ例。前段の集塵機・吸煙機から出た臭気を消臭ユニット内のb.caveで取り除く
⁠(画像提供:大原パラヂウム化学)

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独自のPCP/MOF加工技術を活用して、消臭以外の分野にもサービスを展開

大原パラヂウム化学は独自のPCP/MOF加工技術を消臭以外の分野にも提供することを目指しています。

「例えば、ある企業がPCP/MOFを使った二酸化炭素吸着事業を始める際に、弊社に相談していただければ、PCP/MOFを使いやすい形状に加工することが可能です。もちろん、PCP/MOFの配合量も自由に設定していただけます。このサービスによってPCP/MOFの応用先が多分野に広がれば、PCP/MOFの普及促進にもつながるはずです」と、大原さんは期待を込めます。

すでに、脱炭素関連の企業数社から「サービスを利用したい」と相談が来ているそうです。

PCP/MOFを通して「快適空間の創造」を

PCP/MOF事業の今後の展開について、大原さんは展望を語ります。

「今後はb.caveやPCP/MOFの加工技術を通して、より幅広い社会貢献に取り組みたいと考えています。例えば、リサイクルの推進や省エネ・省スペース対策、雇用創出、環境改善、衛生対策などです。アイデア次第で、PCP/MOFが貢献できる場面はどんどん増えると思います」

このような社会貢献を進める根底には、創業以来かかげてきた「快適住空間の創造」という事業方針があると、大原さんは続けます。

「弊社の合言葉は、『世の中の不快を見つけて快適にしよう』。人間や動物、環境にとって快適な空間をつくることが、大きな社会貢献になると信じています。快適性の概念は時代によって変化すると思うので、今後も常にアンテナを張りつつ、世の中に必要な事業をつくっていきたいですね」

PCP/MOFが今後どのような快適さを提供してくれるでしょうか。期待が膨らみます。

※“b.cave”は、大原パラヂウム化学株式会社の登録商標です。

太田 真琴(おおたまこと)

サイエンスライター・広報 1988年生まれ、大阪大学理学研究科化学専攻修了。組込み系SEとして就職したものの、「技術を使うよりも技術を伝える仕事がしたい!」と感じて科学系のフリーランスに転向。現在は、サイエンスライターやディープテック企業の広報として活動している。