でん粉というサステナブル素材を工業用途にも展開―松谷化学工業【関西サスマ展レポート2024 第3回】

2024/08/29
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2024年5月に開催された「高機能素材Week大阪」でのサステナブルマテリアル展(通称:サスマ展)をレポートしています。第3回は、でん粉の総合メーカーである松谷化学工業のブースを訪れました。でん粉はスーパーで見かける片栗粉などで身近な存在ですが、じつは加工によってさまざまな表情を見せる高分子材料でもあります。食品素材としてのでん粉を開発しつづけて100余年の歴史をもつ同社は現在、工業用のサステナブル素材としてのでん粉の可能性に注目し、新たな製品開発にも乗り出しています。社員たちにその想いを聞きました。

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でん粉の特性を体感してほしい

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図1:松谷化学工業のブース
⁠(編集部撮影)

松谷化学工業は、さまざまなでん粉加工製品を開発してきました。同社のホームページを見ると、でん粉製品が意外なところで活躍していることが分かります。例えば、ホットケーキのしっとり・もっちりした食感、レトルトカレーの照りやつや、ミルクティーの濃厚なミルク感などを付与する同社の製品が紹介されています。

また、同社はトウモロコシのでん粉を原料とする難消化性デキストリンも生産しており、多くの特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品向けに提供しています。

顧客と工業用途を探る「でん粉の特性を体感して」

加工によって幅広い機能を持たせることができるでん粉は、自然由来のサステナブル素材でもあります。松谷化学工業は、でん粉を「植物由来のポリマー」と捉え、食品分野で培った長年の知見を生かすべく工業用途への提案に乗り出しました。

「現在はお客さまと一緒に、どのようなことができるかを探索しているところです。そのためにも、でん粉の性質やでん粉を使って何ができるのかを広く知ってもらいたいと思い、今回の展示に参加しました」と、同社名古屋営業部支店長の長島智さんは説明します。

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図2:松谷化学工業の展示ブースでエプロン姿の長島智さん
⁠(筆者撮影)

松谷化学工業の展示ブースは、他社とは少し違った雰囲気です。サツマイモやジャガイモ、トウモロコシなどの野菜が並んでいました。そしてそれらのでん粉の原料から取れたでん粉も一緒に展示されていました。

展示の意図について、長島さんは次のように説明します。

「でん粉は身近な物質ですが、工業用材料として扱ったことがないという方がほとんどです。ですからこの展示では、でん粉そのものの基本的な物性や特性が分かりやすいサンプルを展示して、触って体感していただこうと思いました。加工方法によるテクスチャーや視覚的要素の違い、粘り具合、強度などを触って体感してもらうことで、どういう材料と置き換えることができるのか、一緒に探りながら話を進めています」

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図3:(左)でん粉にヒドロキシプロピル基を付与する「エーテル化」を経て作った透明でしなやかなフィルム。(右)さらに架橋を施すことで白濁したもろいフィルムに
⁠(筆者撮影)

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「原料×加工」で無限の可能性が広がる

でん粉を工業用途で用いる一番のメリットは、植物由来の環境に配慮した素材であることです。植物から作られるでん粉は、燃やした場合も植物としての二酸化炭素吸収量と相殺されてカーボンニュートラルとなります。

でん粉の原料は、キャッサバ(タピオカ)、トウモロコシ、ジャガイモなど多岐にわたります。でん粉を扱う会社によって、どの原料を得意とするかは異なりますが、松谷化学工業は多様な原料のでん粉を取り扱っていることを強みとしています。

「でん粉は原料によって粒子の大きさが違い、性質も異なります。この性質の違いを応用することで、製品デザインの幅は大きく広がります。また、加工方法によって、粘度や強度などの物性を変えることができます。原料の種類、加工方法、加工度をさまざまに変えることで、お客さまのニーズに合った製品を開発していくことができます」

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図4:加工でん粉の可能性
⁠(画像提供:松谷化学工業)

加工によってがらりと表情を変えるでん粉。その魅力について、同社の研究所の主任研究員の鈴鹿真也さんに尋ねると、「まだまだ分からないことがたくさんあること」だと語ります。

「調べても調べても、知りたいことは尽きません。それだけポテンシャルの大きい素材だと思います。食品分野では複数の原料について製品開発を行ってきた知見をもとに、安定した供給体制を生かして、お客さまへ提案をしていきたいと考えています」

「関西サスマ展レポート2024」は、今回で終了です。

寒竹 泉美(かんちくいずみ)

理系ライター・小説家 九州大学理学部化学科卒業後、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。小説を書く傍ら、理系ライター集団チーム・パスカルに所属し、研究者インタビューや理系企業のオウンドメディアを中心に執筆している。