バイオマス素材で抗菌・抗ウイルス・消臭の機能を付加―綜研化学【関西サスマ展レポート2024 第2回】

2024/08/01
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2024年5月に開催された「高機能素材Week大阪」でのサステナブルマテリアル展(通称:サスマ展)をレポートしています。第2回は、「くっつける」ことのプロフェッショナルである綜研化学を取材しました。さまざまな機能をもつ粘着剤の開発・生産を行っている綜研化学は、長年培ってきたポリマー設計技術を基盤に、バイオマス素材による各種製品の開発を行っています。

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水に溶けないポリフェノールで抗菌・抗ウイルス効果を継続

綜研化学のブースには、大きく分けて3種類の開発品が紹介されていました。

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図1:綜研化学の展示ブース
⁠(著者撮影)

最初に紹介するのが、植物のポリフェノールから作られた抗菌・抗ウイルス剤「TsumuGreen(ツムグリーン)」です。

ポリフェノールは、植物が紫外線や微生物感染から防御するためのメカニズムの一つとして合成される物質で、抗菌・抗ウイルス作用、抗酸化作用などを有しています。

しかし、水に溶けやすい性質があるため、その効果を長く持続させることが難しいという課題がありました。そこで、綜研化学は国立研究開発法人物質・材料研究機構の技術指導を基に、長年培ってきたポリマー設計技術を生かし、ポリフェノールを不溶性に変性させることで、抗菌・抗ウイルス効果を持続させられる製品の開発に成功しました。それがTsumuGreenです。

図2は使用例です。TsumuGreenは非水溶性の粉末ですが、エタノールには溶解するため、エタノールと水の混合液に溶かして除菌スプレー製品を作ることができます。エタノールのみを除菌成分とする場合、その効果はエタノールが揮発してしまうと消えてしまいますが、TsumuGreen入りの場合は、エタノール揮発後もTsumuGreenによる除菌効果が持続します。何度も消毒できない場所や、不特定多数の人が触れる場所などでも、TsumuGreen入りの除菌剤で消毒しておけば、より安心な環境を作ることができます。

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図2:「TsumuGreen」の使用例
(著者撮影)

他にもプラスチックなどに混合する用途を考えていると、同社の新規事業企画部の開発担当者は説明します。

「原料が植物由来で安全性が高いため、プラスチック製のベビー用品やおもちゃに混合してもらえると、より安全な製品にすることができると考えています。溶けだしもありませんし、金属成分も不使用です」

さらにTsumuGreenは抗菌・抗ウイルス性以外にも、消臭性、防カビ性、抗酸化性といった性質も備えています。このような機能を生かすことで、スプレー製品や成形加工品だけでなく、食品包装フィルムや衛生用品、塗料、繊維加工剤まで、多岐にわたる用途で使えるものと考えられます。

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ホットメルトを非可食バイオマスに置き換えて環境にさらに優しく

常温では固体であり、加熱すると融解して液体になる接着剤ホットメルトは、もともと環境に優しい接着剤として知られています。有機溶剤を使用せず、乾燥工程も不要なためです。

綜研化学はそのホットメルトの原料の90%以上を非可食バイオマスに置き換え、さらに環境に優しい製品を開発しています(図3)。本開発品は、金属やオレフィンに接着可能です。

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図3:非可食バイオマスホットメルト
⁠(画像提供:綜研化学)

想定している用途例として、開発担当者は紙おむつ用と段ボール用の接着剤を挙げます。

「紙おむつはさまざまなパーツで構成されていて、それらの接着にかなりの量のホットメルトが使われています。そのホットメルトをバイオマス材料由来のものに置き換えることができれば、より環境に配慮した製品になります。また、より広範囲で使用してもらえるよう、ペットボトルの飲料を入れる段ボールの接着剤としても使える接着強度を目指して開発を進めています」

バイオマス度を高めてサステナブルな粘着剤を開発

綜研化学の主力製品の一つである粘着剤についても、バイオマス製品の開発が進められています。その一つがアクリル粘着剤の原料をバイオマス由来のものに置き換え、バイオマス度を最大70%まで調整できる環境配慮型バイオマス粘着剤です。

住宅建材や電子材料、自動車など、高い汎用性をもつアクリル粘着剤をバイオマス度の高い製品に置き換えることで、さまざまな分野で環境に対応した製品を生産できるようになります。

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図4:環境配慮型バイオマス粘着剤の特徴
⁠(画像提供:綜研化学)

同社はさらに、100%バイオマスポリエステルの粘着剤も開発しています。は経緯をこう話します。

「ポリエステル粘着剤については当社として新しい取り組みですが、アクリルよりも100%バイオマスを目指しやすいことから、粘着剤化を検討しています。これまで培ってきた樹脂設計、配合、エマルション化の技術を活用し、環境負荷低減と性能を両立させた技術構築を目指しています」

あらゆる工業製品で使われている粘着剤のバイオマス化が進めば、環境負荷が低減し、持続可能な社会の実現が近づきます。今後、ますます高まるバイオマス素材のニーズを受けて、綜研化学のバイオマス粘着剤の用途は広がっていきそうです。

第3回のレポートもご期待ください。


寒竹 泉美(かんちくいずみ)

理系ライター・小説家 九州大学理学部化学科卒業後、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。小説を書く傍ら、理系ライター集団チーム・パスカルに所属し、研究者インタビューや理系企業のオウンドメディアを中心に執筆している。