紙・パルプというバイオマス素材で機能性追求―日本製紙【関西サスマ展レポート2024 第1回】

2024/07/09
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最先端の素材技術が集まる展示会「高機能素材Week大阪」。その第12回目が、2024年5月8日から10日に開催されました。Chematelsが注目したのは、「サステナブルマテリアル展」(通称:サスマ展)におけるサステナブル素材。編集長・松川が選んだ注目の企業を取材したレポートを3回にわたってお届けします。第1回として紹介する企業は、製紙業会社として売上高国内第2位を誇る日本製紙です。

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セルロースパウダーを加え、プラスチックの強度を上げる

木材から作られる紙は、植物由来のバイオマス素材です。また、木は再生可能な資源であり、成長する間に二酸化炭素を吸収することで地球温暖化の影響を緩和するのに役立ちます。木の温かみを感じさせる日本製紙のブースには、サステナブル素材としての木材の特長を生かした製品がさまざま展示されていました。

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図1:日本製紙のブース
⁠(編集部撮影)

その中の一つ、「KCフロック」は、木材繊維の有効利用を目的として開発されたセルロースパウダーです(図2)。高度に精製されたパルプを原料とするこの製品は、もともと食品添加物として開発されました。KCフロックを食品に添加すると、保水性の向上や食物繊維強化、結着防止、硬度付与など、さまざまな機能を食品に加えることが可能になります。

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図2:展示されていた「KCフロック」の代表的な銘柄のサンプル品
⁠(筆者撮影)

食品用だけでなく、工業用に展開する銘柄も開発されたことで、KCフロックの可能性はさらに広がりました。工業用途としては、濾過助剤や、樹脂充填剤、化粧品などに使うことができ、材料に新たな機能を付加します。

特に、サステナブルという観点から特に注目したいのが樹脂充填剤です。フェノール樹脂、メラミン樹脂、ゴムなどに添加することで材料のバイオマス度を上げるだけでなく、強度向上、軽量化、白色度向上など、製品開発という観点からもメリットを付与することができるのです(図3)。

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図3:「KCフロック」が採用された食器。軽くて丈夫
⁠(筆者撮影)

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銅イオンを担持させた紙を糸にした抗菌バイオマス素材

ブースの一角には、衣料品企業の出展と見まがえるような展示もありました(図4)。

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図4:「Cu-TOP」の糸によって作られた試作品
⁠(筆者撮影)

これは、銅イオンを担持させた機能性パルプ「Cu-TOP」の試作品です。用途を具体的に想像してもらうため、Cu-TOP配合シート紙を細く切ってよった糸に加工し、布製品にしました。

Cu-TOPは日本製紙の独自技術で高密度に銅イオンをパルプ繊維に担持させ、消臭・抗菌・抗アレルギー物質・抗ウイルス効果を持たせた製品です。Cu-TOPから作られた糸は、紙製でありながら洗濯もできます。また、銅イオンはパルプ繊維に化学結合しているため脱落しづらく、条件によってはほぼ半永久的に効果が続きます。

素材である糸が抗菌機能を有しているため、後から機能付与するよりも工程を減らすことができる可能性があり、その点でもサステナブルな製品といえます。図4の試作品のほか、パネルには、においや菌が気になりがちなスリッパやマットやシーツ、ワークウェア、ニット帽、医療用品、防災用品などへの利用が提案されていました。

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アルミやプラスチックを使わず紙で食品を守る

次に紹介するのは、紙を基材にしたバリア素材「シールドプラス」です。

酸素や水蒸気の透過を防いだり、におい漏れやにおい移りを防いだりするために使われるバリア素材は、食品や化粧品などの品質を保つために使われます。通常であればアルミやプラスチックフィルムで作られるところを、紙製のシールドプラスに置き換えることで最終製品のバイオマス比率を向上させ、生分解もする、環境に優しいバリア素材が実現しました。

展示会では、シールドプラスを採用した数々の製品が展示されていました(図5)。

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図5:「シールドプラス」を使った製品例
⁠(画像提供:日本製紙)

食品の外部パッケージとして使用することで紙の持つ優しい風合いを強調でき、商品の個性を際立たせられます。また、においをしっかりと封じ込めます。

カレー粉が練り込まれたパスタも、シールドプラスで包装されると、まったくカレーのにおいを感じません(図6)。

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図6:「シールドプラス」のにおい封じ込めを体感できる
⁠(筆者作成)

ラミネート加工せず、紙だけでパッケージ

また、ヒートシール紙「ラミナ」を使った製品も展示されていました(図7)。長年培ってきた製紙技術と塗工技術を応用した素材で、ラミネート加工なしに紙だけでパッケージすることができます。

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図7:「ラミナ」を使った製品例
(筆者作成)

見慣れたプラスチックやアルミのパッケージが紙に置き換わると、製品のイメージはがらりと変わります。環境への優しさが見た目や手に取った感触からも伝わってくるようです。

以上、展示会レポートをお届けしました。国内製紙メーカーとして培ってきた技術と信用をベースに、サステナブル素材である木材の可能性を追求していく日本製紙の製品づくりに、これからも期待が高まります。

第2回のレポートもご期待ください。

寒竹 泉美(かんちくいずみ)

理系ライター・小説家 九州大学理学部化学科卒業後、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。小説を書く傍ら、理系ライター集団チーム・パスカルに所属し、研究者インタビューや理系企業のオウンドメディアを中心に執筆している。