アロマ相場は国産ナフサ価格やACPに着目を 【新任担当者必見の基礎知識! 】

2024/06/25
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Chematelsのシリーズ「石油コンサルタントがずばり解説」でもおなじみの石油化学コンサルタント柳本浩希さんが、前回に引き続き、新任担当者向けの基礎知識をお送りします。前回の「石油化学製品の価格の鍵は『ナフサ』にあり」では、ナフサをめぐるアジア相場や国産価格の仕組みを説明しました。今回は、Chematelsをご覧の多くの人にとって関心事となっている、ベンゼンやトルエン、キシレンといった「アロマ」の基礎知識や相場の見方について、柳本さんが解説します。

ベンゼン、トルエン、キシレン……アロマから多様な化学品が生まれる

「アロマ」は、「アロマティクス」(Aromatics)とも、「芳香族」とも呼ばれます。炭素6個が環状に連なったベンゼン環という構造を持つ化学物質を総称したもので、甘く芳醇な香りがすることから「芳香」の名が付いています。つまり、アロマというのは一つの化学物質ではなく、あくまでベンゼン環を持つ化合物一般のカテゴリーを指しているわけです。

それでは、どのようなものがアロマといえるのでしょうか。ここでは、アロマの化合物の中でも代表的な、炭素原子(C)と水素原子(H)だけからなる炭化水素のみで構成される「芳香族炭化水素」について紹介します。

まず、ベンゼン環そのものである「ベンゼン」(C6H6)があります。ベンゼンは、エチレンと結合するとスチレンモノマーとなります。一方、プロピレンと結合するとキュメンが得られ、ここからアセトンとフェノールを生成できるので、多くの石油化学品の原料となっています。

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図1:ベンゼン

続いて、「トルエン」(C7H8)は、ベンゼン環にメチル基(CH3)と呼ばれる原子団が一つ付いたもので、塗料や溶媒、ウレタンやガソリンの原料として活用されています。

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図2:トルエン

最後に、「キシレン」(C8H10)は、ベンゼン環にメチル基(CH3)が二つ付いたものです。環状の炭素の鎖のどこにメチル基が付くかによって呼称が異なります。隣り同士の場合は「オルト-キシレン」、一つ離れたところに付いた場合は「メタ-キシレン」、反対側に左右対称となった場合は「パラ-キシレン」と呼ばれます。このうち、パラキシレンは高純度テレフタル酸(PTA:Pure terephthalic acid)の原料であり、このPTAはエチレングリコールと反応することでポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)樹脂やポリエステルへと変化していきます。

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図3:キシレン

このように、アロマはベンゼン、トルエン、キシレンという炭化水素化合物を包含しており、それぞれ多様な誘導品を持っていることが分かります。

では、これらの相場はどのように形成されているのでしょうか。国内と海外に分けて見ていきます。

国内アロマ相場は国産ナフサ価格やアジア契約価格で構成

まず、国内においては、国産ナフサ価格の重量ベースや、「アジア契約価格」(ACP:Asian Contract Price)と呼ばれる価格を基準に取引されることが多いです。

このうち、国産ナフサ価格の重量ベースというのは、「N重」と呼ばれる取引形式です。前回の「石油化学製品の価格の鍵は『ナフサ』にあり」で解説した国産ナフサ価格では、キロリットル(KL)が単位の容量ベースにするために比重を掛けましたが、今回はトン(T)が単位の重量ベースなので比重を掛ける必要はありません。

アロマの原料はナフサですので、ナフサ価格に加工費(α)を足し合わせたものがアロマの価格となります。

国産ナフサ価格(円/T)+α=アロマ価格(円/T)

この他、ベンゼンについては、上述の通りACPと呼ばれる指標も存在し、国産ベンゼン価格にも使われています。毎月初旬、日本のベンゼン生産最大手であるENEOS(エネオス)が当月のベンゼンの売り渡し価格をACPで通知しています。こちらは主に前月のアジアにおけるベンゼン相場や需給環境を加味しながら、大口需要家と協議した上で決定、通知されています。ENEOSのニュースリリースで毎月「石油化学製品(ベンゼン)の契約価格決定について」という見出しで発表されています。

このように、国内については国産ナフサ価格に準じた取引と、最大サプライヤーによる売り渡し価格に基づく取引という二つのケースが存在しています。

海外では韓国積み出し価格を主とするアジア相場が重要

一方、海外においては、ACPで参考にされているアジア相場があります。これは主に韓国スポット積み出し価格(FK:Free On Board Korea)のことであり、1トン当たりのドル価格で毎日査定されている指標になります。

なぜ、韓国出しの価格が基準になっているかというと、アジア域内で韓国からの輸出が最も多く、商いが活発であるためです。この相場はベンゼン、トルエン、キシレンといった製品ごとに存在していますので、海外ではアロマ相場はこれらの価格の平均値などで取引されることが多いです。

なお、現物だけでなく先物でも取引が可能で、シンガポール証券取引所(SGX:Singapore Exchange)では毎日、投機筋によって活発に取引されています。そのため、日々の価格変動は激しくなるきらいがあります。その点、ACP基準というのは月ごとや四半期ごとの価格となりますので、変動はある程度、緩やかとなります。これは、国産ナフサ価格でも同様です。

原油・ナフサ価格と連動しやすく、物価全体に影響

以上、国内と海外のアロマ相場について紹介しました。国内においてもアジア相場を基準に取引されることがありますので、業界紙やウェブページなどを活用しながら、国産ナフサ価格、ACP、そしてFKをウォッチしておくとよいでしょう。

昨今では円安の影響もあり、国内品も輸入品も高値の状況となっているアロマ相場ですが、一般的に原油やナフサの価格が上昇すればするほどアロマ価格も高値になりやすいといえます。さまざまな用途で社会に普及している石油化学製品の主要原料であるアロマが高値であるということは、もちろん日本の物価上昇にも影響をもたらしているわけです。

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また、業界の入門書『ナフサと石油化学マーケットの読み方』(化学工業日報社刊)も2021年に出版し、好評をいただいており、現在は第三版となっております。よろしければお手に取ってみてください。

柳本 浩希(やなぎもとひろき)

1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。その後、ナフサ取引の仲介や情報誌の編集責任を務め、2026年5月に炭化水素リサーチ株式会社を創業(https://hc-r.co.jp/)。ナフサと石油化学業界必携のNaphtha Portalを立ち上げる。