石油化学製品の価格の鍵は「ナフサ」にあり 【新任担当者必見の基礎知識! 】

2024/04/11
Image

Chematelsの好評シリーズ「石油コンサルタントがずばり解説」でおなじみの石油化学コンサルタント柳本浩希さんが、石油化学業界でこれから活躍しようとしている人たちに向けて、仕事を進めていく上でまず身につけておくとよい基礎知識を伝えます。

日本には石油化学を支える知も人もあるが、原料はない

春がやってきました。今回はこの時期にぴったりの、新任担当者向けの基礎知識をお届けします。ぜひ、職場に新たにやってきた方々にもお読みいただければと思います。最後に、私が講師を務めている研修のご案内をします。

日本で石油化学産業が本格的に興ってから、実はまだ50年程度の歴史しかありません。しかし、この間、非常に広い分野で企業や研究機関が革新的な技術開発を続け、新たな価値を創造しつづけてきました。それにより、人間の生活水準は格段に向上し、豊かな生活を送れるようになりました。足元では地球温暖化という大きな課題を抱えながらも、それを新たなイノベーションへの機会に変えることで、産業全体がメタモルフォーゼ、つまり変身を遂げている過程にあるといえます。

日本は化石資源のない国ですが、知的資源と人的資源によってこれまで成長を遂げてきました。しかし、こと石油化学のモノづくりという場面では、どうしても原材料となる炭化水素油を海外からの輸入に依存せざるを得ない状況にあります。ですから、この50年という短い時間軸において、日本は、他の東アジアの国々と同様、その相場や地政学的緊張によって何度も右往左往することになりました。

「ナフサ価格」の仕組みを知れば、石油化学業界の第一歩を踏み出せる

Image

図1:石油化学コンビナート

そうした日本の石油化学産業をめぐる状況を捉える上で、基本的だけれども重要となる知識と観点があります。ここからは、明日から役立つ業界の基礎知識をやさしく解説していきたいと思います。

ぜひ、得ておいていただきたいのは、ナフサ、つまり原油から得られる未精製のガソリンの「価格」についての基礎知識です。

「国産ナフサ価格」は、国内の石油化学製品を調達および販売する際に必ず関係してくる必須事項となります。これは文字通り、国内の製油所から生産されたナフサを石油化学企業に販売する価格となります。「国産ナフサ価格」を略して「国産ナフサ」と呼ぶことがあります。

なぜ「ナフサ」が重要かといえば、国産の石油化学製品の販売価格のほとんどがこの「国産ナフサ」によって決定されるからです。

「国産ナフサ」は輸入ナフサ価格にリンクしています。「国産ナフサ」は古くは石油企業の提示価格により決定されていましたが、現在は輸入ナフサ価格により決定されています。つまり、輸入ナフサの価格が「国産ナフサ」となるわけです。

輸入ナフサ価格は、日本国内で石油化学事業を営む会社がナフサを輸入するときの価格となりますが、毎日のアジア・ナフサ相場(ドル/トン)の平均値に、1トン当たり10〜30ドル程度のプレミアムが加算された額で多くの会社は輸入しています。そこで、アジア・ナフサ相場をチェックしておくことで、ナフサの輸入価格をだいたい推測することができます。アジア・ナフサ相場は日本到着価格(C&F JAPAN:Cost and Freight Japan)をベースに、シンガポールの平日であれば毎日査定されているため、日々のチェックに向いています。

Image

図2:原油を運ぶタンカー

輸入ナフサ価格そのものは毎月月末に発表される「貿易統計」で明らかになります。財務省(Ministry of Finance)が発表するので、その頭文字を取って「MOF価格」と呼ばれることがあります。そして、このMOF価格に桟橋の利用料やタンク代など輸入にかかる諸経費として1キロリットルあたり2,000円を足した価格を、国産ナフサ価格と呼んでいます。

国産ナフサ価格、MOF価格、アジア相場のそれぞれの関係をまとめると、以下の通りとなります。

・国産ナフサ価格(円/KL)=MOF価格+2,000円/KL
⁠・MOF価格=(アジア相場(ドル/トン)+プレミアム(10ドル~30ドル))×通関為替×実比重(0.68〜0.70)

この国産ナフサ価格は、日本の石油化学メーカーが製品を生産するのに必要な原料であるナフサの原価となります。そのため、国内で生産される石化製品の価格前提はこのナフサ価格によって変動するという仕組みが広く採用されているのです。国産ナフサによって変動していく価格決定方法を、「ナフサリンク」や「ナフサフォーミュラ」といいます。ぜひ覚えておくとよいと思います。

次回からも基礎知識について解説する記事を展開したいと思っています。Chematelsの会員になるとメーリングリストで記事のお知らせが届きますので、見逃さないためにもぜひ登録をお忘れなく!

石油化学をめぐる動向を、ぜひ「自分事」に

最後に、少し自己紹介をさせていただきます。私は、情報誌の執筆やコンサルティング、またナフサの仲介を長年にわたり行ってきました。そうした中で、石油化学産業で従事する方々に、世界の炭化水素油の状況や、マーケット、地政学的リスクに関心を持っていただき、自分事としていただくことで、経済的にも、お客さまや調達先との関係においても、良い結果が生まれるものと実感しています。

そのような観点から、新任担当者向けに相場の仕組みや見方、昨今のマーケット状況を理解いただく研修を展開しております。下記の内容をご覧の上、ご興味のある方はお申し込みいただければ幸いです。

講義内容

・石化産業と暮らし
⁠・ナフサとは?
⁠・国産ナフサ価格の歴史
⁠・国産ナフサ価格と石化製品との関係
⁠・石化製品の国内相場とアジア相場
⁠・普段の業務で見ておくべき指標、気を付けたいこと(マーケット情報を業務に活かす)
⁠「マーケットのサイクルを意識する」、「相場の見立てを持つ」、「国産ナフサリンクの潜在リスク」など
⁠・2024年の原油、ナフサ、石油化学品相場の展望

受講形式

・ベーシック講義(オンラインにて2.5-3時間程度)+確認テスト(オンラインにて提出)+テスト解説(15分)
⁠・希望されるお客様には対面でのご案内も可能です。対面では、内容について上記のほか、ニーズに沿ってアレンジすることが可能です。

金額

33,000円/人(税込) 
⁠※4名以上の場合は別途お見積もり

申し込み方法

下記申し込みフォームよりお申込みください。受講希望期間については、2024年4月1日から7月31日までの間で、5日間(月~金の間)を指定できます。お申込みにつきましては6月末で締め切らせていただきます。

Image

また、研修一般のお問い合わせなどがありましたら、hiroki_yanagimoto1@yahoo.co.jpまでメールをいただければと思います。

なお、業界の入門書『ナフサと石油化学マーケットの読み方』(化学工業日報社刊)も2021年に出版し、好評をいただいており、現在は第三刷となっています。よろしければお手に取ってみてください。

柳本 浩希(やなぎもとひろき)

1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。その後、ナフサ取引の仲介や情報誌の編集責任を務め、2026年5月に炭化水素リサーチ株式会社を創業(https://hc-r.co.jp/)。ナフサと石油化学業界必携のNaphtha Portalを立ち上げる。