トクホを開発するときの注意点、気になること【保健機能食品 第2回】
2020/08/03
特定保健用食品(トクホ)では、「お腹の調子を整える」「食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする」など、健康の維持および増進に役立つ表示ができます。トクホの許可を得るには、ヒトを対象にした摂取試験(以降「ヒト試験」)で有効性と安全性を確認してから消費者庁に必要書類を提出します。
今回はトクホの製品設計から、ヒト試験のデザイン、そして必要書類や開発費用と期間について解説します。
第1回はこちら:トクホと機能性表示食品の違いは?メーカー視点から比較する
成分が健康にいいことを証明する
トクホでは、特定の保健作用を持つ成分を「関与成分」といいます。商品開発においては、関与成分がなぜ保健作用を持つのか、細胞実験や動物実験などから明らかにする必要があります。これらの結果から、関与成分を1日に摂取して有効性と安全性が期待できる量(1日摂取目安量)を決定します。
ちなみに、トクホは「健康に寄与する食品」という性質上、塩分や糖類が過剰に含まれてはいけません。また、アルコール飲料もトクホとして認められません。
ヒト試験では有効性と安全性を確認する
ヒト試験は、原則として社外ボランティアを被験者とした第三者機関で実施します。試験デザインは、トクホ候補の製品とプラセボ※1を摂取する2群に分けた二重盲検比較試験※2です。被験者に体調の変化があったときにすぐ対応できるよう、医師の管理下で行います。必要であれば、ヒト試験を請け負う外部企業に相談するのがよいでしょう。
有効性を評価する試験期間は、通常は12週間以上です。なぜなら、有効性がはっきりと現れるのに時間がかかったり、逆に「慣れ」によって効果が弱まったりする可能性があるからです。ただし、お腹の調子を整えるもの(便通の改善)など、比較的短期間で効果が確認できる場合には、12週間未満でも問題ありません。
安全性については、有効性評価と同様に12週間以上行い、血液検査や尿検査、医師による診察で評価します。これとは別に、過剰摂取試験も行います。この試験では、1日当たりの摂取目安量の3倍(錠剤の場合には5倍)を1日で摂取することを4週間以上続けたときの安全性を評価します。なお、動物実験や細胞実験の段階で過剰摂取による悪影響が懸念される場合には、そもそも関与成分の候補から外すことになります。
被験者は、健康または疾病の境界域(肥満や骨粗しょう症など、いわゆる未病)の人と指定されています。何らかの病気と診断された人は対象外です。子どもや妊婦も除外されます。つまり、子どもや妊婦向けのトクホは存在しないことになります。
必要書類と提出先
申請に必要な書類は、消費者庁のWebサイトの「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」に記載されています。特に、有効性を検証したヒト試験の資料については、査読付きの学術誌に受理されていることが条件です。
書類の提出先は、「消費者庁食表示企画課」です。提出後には、製品の成分検査を国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所または登録試験機関に依頼します。検査結果が出たら、追って消費者庁食表示企画課に提出します。
書類を提出してから許可が降りるまでにかかる事務処理の時間は約5カ月です。ただし、この5カ月には審査の時間が含まれていないため、実際にはさらに時間がかかります。
実際にかかる開発期間と費用は
トクホの申請手数料は9800円。これとは別に、成分検査費用が16万6000円かかります(関与成分が食物繊維または培養試験が必要な場合は26万5000円)。ただし、これらの費用は、申請段階でかかるものです。当然ながら、商品の開発費用やヒト試験費用は別です。
2009年に医療経済研究・社会保険福祉協会が1556社に調査したアンケートによると、トクホ以外の機能性食品の開発コストは2000万円未満が最多だったことに対して、トクホ開発ではヒト試験にかかる費用だけで4000万円以上という回答が36%に上りました。1億円以上かかったというケースも12%ありました。

表1 トクホ申請及び開発費用
開発期間についても、トクホ以外の機能性食品では2年間が最多だったのに対して、トクホでは約70%のメーカーで3年以上かかったとのことです。
トクホではヒト試験に関する費用や期間がネックとなることを認識する必要があります。そのため、トクホ開発は比較的大手メーカーに限られてしまいます。また、こうした費用は商品価格に反映せざるを得ないため、トクホ製品はどうしても割高になり、消費者にとって購入のハードルが高くなります。そこで別の選択肢として、機能性表示食品の制度が生まれました。
次回は、機能性表示食品を開発するときの注意点、気になることを紹介します。こちらも楽しみにしてくださいね。
※1 本物と見た目や風味の違いがなく、関与成分が入っていない比較品のこと
※2 試験デザインの一種で、摂取するものが本物かプラセボか、被験者も医師もわからない方法のこと
【参考資料】
広垣 光紀「特定保健用食品(トクホ)表示が購買行動に及ぼす影響——アンケート調査による実証分析——」社会科学 (92), 41-56, 2011
島田 祥輔(しまだしょうすけ)
サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。
