高外観樹脂からマイクロプラ代替まで!次世代バイオマスの最前線― UBE/フタムラ化学【第17回 高機能素材Week レポート第1回】
2026/10/29持続可能な社会の実現に向け、化学・素材産業において最重要課題となっているカーボンニュートラルへの対応。今回の「高機能素材Week」でも、石油由来素材からの代替を目指すバイオマス材料の展示に多くの来場者が関心を寄せていました。今回は、環境負荷を抑えつつ従来材と同等の耐熱性や優れた外観性を兼ね備えたUBEの植物由来ポリアミド樹脂と、独自製法によって未利用資源の有効活用やマイクロプラスチック対策を実現するフタムラ化学のセルロース不織布・セルロースビーズ技術を特集します。
UBE:植物由来のバイオマス樹脂「PA56・PA510」のコンポジット材料
UBEのブースで注目を集めていたのが、ヒマシ油やトウモロコシ(非食用)といった植物由来原料を用いたバイオマス樹脂およびそのコンポジット材料です。主力展示の「PA56(ポリアミド56)」は、石油由来であるナイロン66の代替を狙う新素材として提案しています。PA56はナイロン66と化学構造が近く、同等の耐熱性や機械強度を発揮する点が大きな強みとして現場でもアピールされていました。バイオマス度はPA56で45%、PA510では100%に達しています。

バイオマス樹脂(PA56、PA510)の製造フロー図
(出所:配布資料より抜粋)
ガラス浮きを抑制し、優れた外観性を実現
開発過程で見出されたPA56ならではの最大の特長が「外観性の高さ」です。一般的に樹脂へガラス繊維を添加すると表面にガラスが浮き出てしまいますが、PA56はこの現象を抑制できます。ナイロン66と比べて非常に光沢度が高く、見た目が美しく仕上がると、来場する顧客からもすでに好評を得ているとのことです。意匠性が求められるパーツに最適なうえ、製品カーボンフットプリント(PCF)を従来材比較で約54%低減できる点も、環境対応を進める企業にとって見逃せないポイントです。

ガラスの浮き外観比較
(画像:UBE提供)
モビリティから家具分野まで用途を拡大
現在は実績のある自動車(モビリティ)分野を中心とした提案が進められており、ブースでは水素タンクライナー向け部材などの展示が目を引きました。今後はこの優れた外観性と環境性能を活かし、オフィスチェアの肘掛けといった家具分野など、自動車以外の新規領域にも積極的に展開していく狙いがあります。ハロゲンフリーの難燃剤を使用したグレードも揃えており、素材の際立った特長が活きるニッチな用途での採用拡大が期待されています。
フタムラ化学:業界初の独自製法「大垣法」を採用した環境配慮型セルロース不織布『NatureLace®』
フタムラ化学のブースで一押しとして紹介されていたのが、天然由来のセルロースを原料とした不織布『NatureLace®』です。最大の強みは、業界初となる独自製法「大垣法」を採用している点にあります。特殊な溶液にパルプを溶かして繊維化するプロセスにおいて、水と溶解液を繰り返し再利用できるため、排水や排ガスの発生を大幅に抑えられる環境配慮型の製法とのことです。
さらにブースで目を引いたのが、伊藤園とのコラボレーションによる開発品です。これまで廃棄されていた茶殻を不織布と複合化することで、茶殻に含まれるカテキンの力による優れた抗菌性(黄色ブドウ球菌への有効性)と、アンモニアに対する86%の消臭効果を実現しています。現在は、ペット用トイレシートやボディシートなどへの展開を目指し、鋭意開発が進められています。

伊藤園と共同開発品
(出所:配布資料より作成)
マイクロプラスチック規制に対応するセルロースビーズ『NatureSphere®』
もう一つの注目製品が、有機溶剤を使用しない独自製法「Rahcel™(ラーセル)法」を用いて製造されたセルロースビーズ『NatureSphere®』です。世界的なマイクロプラスチック規制の強化を背景に、脱プラスチックに向けた環境対応素材を探している来場者から多くの問い合わせが寄せられているとのことで、現場での注目度の高さがうかがえました。粒子径の小さなタイプ(約6マイクロメートル)は、ファンデーションやリップなどの化粧品において、なめらかなテクスチャーを生み出す感触改良剤として活躍します。一方、30〜120マイクロメートルといった大きめの粒子は、洗顔料などの角質除去スクラブ剤として使えるほか、塗料やインクへの添加材としても応用が可能です。幅広い分野でのプラスチック代替素材として、今後の展開に大いに期待が寄せられています。
環境負荷低減を前提としつつ、成形時のガラス浮きを抑えて高い意匠性を実現したり、廃棄茶殻を組み合わせて消臭・抗菌機能を付加したりと、「環境対応+αの機能的価値」を明確に打ち出している点が両社のアプローチに共通する強みです。コストや物性の妥協による採用ではなく、素材本来の機能的魅力によって選ばれるバイオマス材料の開発は、サーキュラーエコノミーへの転換を着実に後押ししています。
Chematels編集部
Chematels(ケマテルズ)では、化学業界に従事されている方へ、お役だていただけるコンテンツをお届けします。特集記事では、業界のトレンド情報や製品情報、基礎知識など、専門性の高い記事を配信しています。

