錠剤崩壊剤の成形性アップ! ダイセル/ヒアルロン酸がサラサラからプルンに キユーピー【インターフェックスWeek2023レポート 第2回】

2023/09/12
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2023年7月に開催された「インターフェックスWeek2023」をレポートしています。前回の「サプリにも求められる錠剤崩壊、解決の鍵は『寒天』 伊那食品工業」に続き、Chematels編集長が注目した、ダイセルとキユーピーの取り組みを今回お伝えします。ダイセルからは、独自開発した医薬品向けの添加剤を紹介します。またキユーピーからは細い針でも注射できるヒアルロン酸を紹介します。

口の中で溶けるOD錠向けの添加剤―ダイセル

ダイセル(本社・大阪市北区/東京都港区)は酢酸、半導体製造用の溶剤、エアバック用のガス発生剤など幅広い製品を扱う化学メーカーです。今回紹介するのはライフサイエンス事業で扱う医薬品向けの添加剤です。

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図1:ダイセルのブース
⁠(筆者撮影)

「口腔内崩壊(OD:Orally Disintegrating)錠という口の中で溶かして服用する錠剤には、口の中に入れるまでは錠剤として形を保ちながらも、口の中に入れた後は早く崩壊するという相反する性能が求められます。米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)では、30秒以内に崩壊することを推奨しており、製薬メーカーは、この『30秒以内』を満たそうとしています」と、同社ライフサイエンス製品営業部で博士(理学)の菅沼有希子さんは説明します。

口の中に入れるまで割れにくい錠剤をつくるには、打錠、つまり錠剤の成形のときの圧を上げ、錠剤の硬度を高くする必要がありますが、あまり強く打ち付けて固めると口の中で溶けにくくなってしまいます。そこで、錠剤の崩壊を助ける、崩壊剤を用いるのが一般的です。

OD錠用の添加剤「グランフィラーD®」と「ハイソラッド®」

ダイセルの崩壊剤は、複数種類の添加剤を組み合わせた「コプロセス添加剤」です。「グランフィラーD」と「ハイソラッド」という2製品があり、それぞれに特長があります。

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図2:OD錠用コプロセス添加剤の展示パネル
⁠(画像提供:ダイセル)

グランフィラーD」には、崩壊に関わる2種類の成分が含まれています。「カルメロース」(ニチリン化学工業製)は、水を錠剤に吸い上げる働きをします。「クロスポビドン」は水を含むと膨潤する性質があり、錠剤の崩壊を助けます。

「2種類の崩壊メカニズムが入っている添加剤は珍しく、崩壊性に優れます」と、同社主任研究員の橋川尚弘さんは説明します。

ハイソラッド」は、ダイセルが自社開発した添加剤です。独自の造粒技術で特殊な顆粒になっており、これが錠剤に水を導く「導水」の役割をしています。打錠圧が低くても成形できるという特長もあります。

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図3:「ハイソラッド」の顆粒形状と高含量性能
⁠(画像提供:ダイセル)

「原薬によって打錠に適した条件はさまざまです。グランフィラーDとハイソラッド両方をご検討いただくことが多いですね。どちらの製品も、原薬の含有量が高くても機能するので、錠剤を小さくできます」と橋川さんは言います。

動画1:「ハイソラッド」の崩壊の様子を紹介する動画
⁠(動画提供:ダイセル)

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2液を混ぜたらゲル化するヒアルロン酸―キユーピー

およそ100年前、1925年に日本で初めてマヨネーズを製造・販売したキユーピー(本社・東京都渋谷区)。マヨネーズには卵黄を多量に使いますが、卵黄以外の使途も見出したいと、1982年からファインケミカル事業も展開しています。

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図5:キユーピーのブース
⁠(筆者撮影)

「今回、インターフェックスWeekに新たな技術紹介を目的として出展しました。架橋ヒアルロン酸ゲルとレシチンオイルゲルのゲル2種をご紹介しています」と話すのは、同社ファインケミカル本部営業部部長の橋本崇さんと同部の杉坂亜里沙さん。

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図6:キユーピーの展示パネル
⁠(筆者撮影)

同社ファインケミカル事業の主力製品は、医薬品・化粧品・食品の各業界に提供しているヒアルロン酸です。キユーピーでは、マヨネーズの材料の一つ「酢」の発酵技術を応用して、乳酸菌を用いた発酵法で製造しています。

一方、医療用では、乳酸菌を用いた発酵法のほか、鶏の鶏冠(とさか)から抽出する方法でも製造しています。医療用は、ドライアイ用の目薬に配合されていたり、ひざの炎症を抑えるために膝関節に注射されたりします。そのほか、美容目的でも注射されています。

ヒアルロン酸ゲルを注射する場合、粘度が高いため太い針を使わなければなりませんでした。その問題を解消しようと見出したのが、本展示会で展示した「架橋ヒアルロン酸ゲル」です。

粘性の低いサラサラした液状のヒアルロン酸誘導体2種類を混ぜると、ゲル状のヒアルロン酸になります。ゲル化までの時間やゲルの硬さは「ヒアルロン酸誘導体A」「B」の化学修飾率によってコントロールできます。

これならば注射するときはサラサラの液体で、体内に入った後はプルンとゲル化させることができるため、細い注射針を使えます。

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図7:キユーピーの展示パネルと架橋ヒアルロン酸ゲル。写真にある左の2液を混ぜると右のゲル状になる
⁠(筆者撮影)

滅菌の課題も同時に解消

架橋ヒアルロン酸ゲルではこれまで、滅菌に課題がありました。加熱して滅菌すると、架橋構造が壊れてしまい、ゲルの固さが変化してしまうのです。0.2μm(μmは1000分の1mm)という非常に細かいメッシュのフィルターでろ過滅菌をする場合、多くの時間を要したり、フィルターがすぐに詰まってしまったりといった問題がありました。

「滅菌を容易にできる架橋ヒアルロン酸ゲルをどのようにしたらつくれるかと考えて開発したのが、この2液を混合する架橋ヒアルロン酸ゲルです」と説明するのはファインケミカル本部営業企画部一課で博士(工学)の藤川俊一さん。混合前のサラサラのヒアルロン酸誘導体ならば、従来のろ過滅菌の課題は解消できます。

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2回にわたり、「インターフェックスWeek2023」をレポートしました。いかがでしたでしょうか。第1回をお読みになりたい方は、「サプリにも求められる錠剤崩壊、解決の鍵は『寒天』 伊那食品工業」をご覧ください。

村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。