サプリにも求められる錠剤崩壊、解決の鍵は「寒天」 伊那食品工業【インターフェックスWeek2023レポート 第1回】

2023/08/22
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2023年7月、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で「インターフェックスWeek医薬品 化粧品 研究・製造展」が開催されました。医薬品製造ロボットや、医薬品・化粧品用の機能性材料の展示が多く見られました。今回は出展企業から伊那食品工業(長野県伊那市)を紹介します。「かんてんぱぱ」など寒天食品でお馴染みですが、常温でもさらっとした粘性を保つなど寒天の特性を生かし、化粧品や医薬品向けのファインケミカルズも開発しています。本展で新たに紹介した製品は崩壊剤「ファイバーサット」。機能性表示食品や健康食品にも医薬品並みの性能試験が義務化された中、サプリメント向け崩壊剤として期待が持たれています。製品の特徴や機能性食品に要求される規格について、大阪支店営業部の辻秀泰氏に聞きました。

サプリメントにも克服が求められる「30分の壁」

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図1:伊那食品工業のブース
⁠(筆者撮影)

国民生活センターが2019年に行った調査で、錠剤・カプセル状の健康食品100銘柄中42銘柄が、日本薬局方の定める崩壊規定時間に崩壊せず、体内で吸収されない可能性が示されました。この報告を問題視した日本健康・栄養食品協会は、適正製造規範(GMP:Good Manufacturing Practice)認定工場に対し「錠剤・カプセル状等の食品の崩壊試験」を義務化しました。

伊那食品工業大阪支店営業部の辻秀泰さんは、「『素錠の崩壊時間は30分以内』といった医薬品と同様の判定基準が、錠剤の健康食品にも適用されました。『30分の壁』を越えようとサプリメント用の崩壊剤に注目が集まり、弊社製品『ファイバーサット』への問い合わせも急激に増えました」と話します。

寒天の強みを生かした崩壊剤「ファイバーサット」

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図2:「ファイバーサット」の展示
⁠(筆者撮影)

ファイバーサットは特殊な寒天と食物繊維からできています。その特徴は「崩壊性」「安定性」「成形性」に優れていること。

崩壊性の高さは、ファイバーサットの崩壊メカニズムに由来します。崩壊剤の崩壊メカニズムは大きく分けて、錠剤の表面から水で膨潤することで崩壊させる膨潤型と、錠剤の内部へ水を導き崩壊を助ける導水型に分かれます。ファイバーサットは、その両方の性質を持つ「HYBRID型崩壊剤」です。特殊な寒天が膨潤し、食物繊維が導水を助けるのです。

安定性に優れるためには、機能性を持つ主剤と崩壊を促す崩壊剤が化学反応や相互作用をしないことが求められます。ファイバーサットの主成分は中性の多糖類であるナチュラルフードファイバーであるため、安定性に優れています。

成形性は、錠剤を成型する時の打錠圧力を上げて高めます。しかし、圧力を上げて成型すると、錠剤摂取時にも崩れにくくなり、崩壊性を犠牲にしてしまいます。その点、ファイバーサットに含まれる繊維状の結晶は互いに絡み合うため、比較的低い圧力でも崩れにくい錠剤をつくることが可能になります。

使用量制限なし、設計の自由度が高い

「食品に使える崩壊剤の種類が限られている中で、他とは違ったメカニズムで働くファイバーサットを2021年春から上市しています。他の崩壊剤で30分の壁を越えられなかったお客さまが『ファイバーサットで問題解決できました』とお礼を言いに、わざわざブースに立ち寄ってくださいました」(辻さん)

食品に使える代表的な崩壊剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca: Calcium carboxymethylcellulose)には、食品への使用量として2%以下の使用制限が設けられています。これに対し、寒天と食物繊維でつくられるファイバーサットには使用制限がありません。

「少量でも機能を十分に発揮しますが、使用量に制限がないので、お客さまの設計の自由度を高められていると自負しています」(辻さん)

次回は、その他の医薬品用錠剤崩壊剤や、使用用途を探索しようとしている食品会社が見出したユニークなファインケミカルを紹介する予定です。

村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。