【中国 上海特派員だより】ロックダウン緊急報告(後編)「我要物資!」の叫び、“上海離れ”顕著に

2022/06/15
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執筆:金盛貿易上海 糸賀 智行

中国・上海での新型コロナウイルス感染症対策として2022年3月下旬から5月末にかけて実施されたロックダウンの状況がどうだったかを現地から伝えています。前編では、「ゼロコロナ政策」の背景、ロックダウンの実施状況、そして市民が直面する飢餓の状況についてレポートしました。

後編では、さらにロックダウン期間中における上海の異様な状況を伝え、変わりゆく上海についての実感を述べたいと思います。

長期間外出不可で爆発する市民

ロックダウンが長期間続いたことにより市民の不満が爆発しました。まず4月にはいくつかの小区の各棟の住人が夜になると、こぞってベランダや窓から合唱したり、「物資をくれ!」という意味の「我要物資!(ウォーヤオウーズー)」という叫び声を上げたりして不満を吐露する光景が見られました。

コロナ陽性となった住人がペットを放棄

4月某日、コロナ陽性と判定された住人が隔離施設へ入ることになりました。その住人が飼っていたペットの犬が道路上で彷徨っていたところ、一人の防疫担当者に突然、撲殺されるという惨い事件が起きました。

飼い主は、家に犬を放置していても餌をあげられず、やむなく外へ放つしかありませんでした。犬も感染している可能性があり、他人へ預けることすらできなかったわけですが、後にSNS上では防疫管理者に対して大きな批判の嵐が起きました。

ただし、このようなことばかりではありません。とあるペットショップの家主も陽性者になり、店内で飼っていたペットを放置して、隔離施設に運ばれましたが、飼い主の「ペットたちに餌をあげてほしい」という思いが伝わり、献身的に面倒を見る防疫担当者もいました。

ビルの2階から長いロープを垂らして犬を散歩させている住人の光景も見られました。

無症状でも陽性者は隔離施設「方艙」送り

ロックダウン中にコロナ陽性者になると、たちまち臨時隔離施設に強制的に収容されます。無症状や軽症を問わずです。

この隔離施設のことを中国語で俗に「方艙(ファンツァン)」といいますが、増え続ける陽性患者に対処しきれず、既存の病院や隔離施設など各所の「方艙」がパンク状態になりました。そこで、浦東と浦西にある2つの大きな展示会場を暫定的に隔離施設とする処置がとられたのです。

各地区の隔離施設によってインフラ整備においても雲泥の差があり、シャワーがない、雨漏りがする、廃棄物が散乱してゴミ溜め地帯と化す、といったような劣悪な衛生環境もありました。

感染数が増え続けたため、莫大な床数が必要となった時期もあります。その光景は戦時中の負傷者収容施設を彷彿とさせました。

「上海離れ」も、変わり果てる巨大都市

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図1:上海。ロックダウンを経て、人々のこの巨大都市への見方に変化が生じている

5月中旬、上海市政府より段階的に6月中下旬にかけて全面的な封鎖解除を推進していく、という公布がありました。実際は6月1日に実質的な解除となりました。

武漢の時よりも長いこの封鎖は、すでにあらゆる市民の「上海離れ」を引き起こしています。この封鎖期間中、上海に住む多くの外国人や外地からの出稼ぎ労働者が上海を見切って去りました。

封鎖期間中の帰省や国境をまたぐ移動は相当ハードルの高いものとなっています。住民委員会や領事館など関係各所への特別な申請手続きが必要で、そこに行くにも48時間以内のPCR陰性検査証明が必要です。

また、空港までの移動にも当局手配車が必要で、その費用も高額です。例えば、浦西から浦東空港まで通常タクシーで約200元程ですが、封鎖期間中の当局手配車での移動は約2000元かかります。中には徒歩や自転車で空港や鉄道駅まで移動した人もいた程です。上海人社長で60歳過ぎの方でさえ、このような事態は人生初めての経験だそうです。

国が違えば国策も違うのは当然で、その国に住んでいる限り政策は遵守しなければならず、政策についてもの申すつもりはありません。

しかしながら、このゼロコロナ政策による長期ロックダウンがもたらした市民への影響は計り知れません。今後、ロックダウンが解除されても、あらゆる場面で「後遺症」は長期間続くことでしょう。

糸賀 智行(いとがともゆき)

金盛貿易(上海)有限公司にて勤務。