【中国 上海特派員だより】ロックダウン緊急報告(前編)食糧不足で飢餓も! ゼロコロナ政策が市民直撃
2022/06/08

執筆:金盛貿易上海 糸賀 智行
中国・上海では新型コロナウイルス感染症対策の一環でロックダウンが2022年3月下旬から2カ月強、続きました。上海に暮らす市民にとっては本当に過酷な状況だったといえます。ロックダウン開始から上海では何が起こってきたのか、振り返りながらその凄まじい光景を記したいと思い、筆を執ることにしました。
まず、中国におけるゼロコロナ政策とはどういうものであるか。なぜ中国はゼロコロナ対策を堅持するのか。これらのことに触れたいと思います。
完全ロックダウンで感染封じ込めを図る「ゼロコロナ政策」
中国では、コロナ発症者が一人でも出ると、その都市あるいは地域を完全にロックダウンし、すべての住民を自宅または専用施設に隔離させ、それによって感染を封じ込めようとします。「ゼロコロナ政策」です。結果的に感染の爆発などを回避できるものの、工場の操業や個人の消費などを妨げてしまう側面があり、日本では採用されない政策です。
背景には「超先進国と後進国の混在」の状況も
中国人から聞いた話を総括すると、14億人もの人口を抱える中国のうち、多くの人口を占める郊外都市や農村ではいまだに、「生活環境が発展途上国と同様に粗悪で、医療体制も十分整っていない」とのこと。感染が拡大すると多くのお年寄りや疾患を抱えた人々が医療サービスを享受できなくなるため、そのリスクを国として何としてでも避けることを政府は第一主義に考えているといいます。実際、中国は「超先進国と後進国、発展途上国が混在したような国」なので、この対策はやむを得ないとの見解でした。

表1:中国と日本の比較。各データは、モバイル決済市場規模の2018年を除き、2020年度のもの(内容筆者作成)
上海を2エリアに分け封鎖、PCR検査を実施
2022年3月27日20時、上海市は、同市のコロナ対策として、市内を2エリアに分けて約2500万人の全市民にPCRスクリーニング検査を実施すると発表しました。
黄浦江を境として、「浦東、浦南および隣接地区」を3月28日5時から封鎖してPCR検査を実施し、4月1日5時に封鎖解除、また「浦西地区」を4月1日3時から封鎖して同じくPCR検査を実施し、4月5日3時に封鎖を解除するというものです。

図1:上海全市民へのPCR検査における市内2エリアの区分け。2022年3月27日時点
「封鎖」の内容は次のようなものでした。
- 封鎖地区では、小区(社区)を単位に管理し、封鎖して住民は外出禁止
- 水、電気、通信、環境衛生、食材供給などの公共サービス類の企業を除き、封鎖地区内の全ての企業は生産停止、または在宅勤務
- 封鎖地区内のバス、地下鉄、タクシーなどの公共交通機関は、運行停止
ロックダウンは中国語で「封城(フォンチェン)」といいますが、まさしく城を封鎖するような徹底的な管理のしかたでした。各地区の人々は「4日間耐えればよい」と思いながらも、多くの人が「感染者が著しく減少しなければ延長もあり得る」と覚悟していたことでしょう。

図2:(左)PCR検査を受ける筆者(右)行列をつくり検査を待つ人々(写真筆者提供)
私は浦西地区の在住ですが、当時、4月1日の浦東地区が封鎖解除の時刻になっても解除されないことから、「西地区の解除もされず、やはりロックダウンは延長となるだろう」と考えました。それがなんと約2カ月も続いたのです。この間に受けたPCR検査や抗原検査は30回以上にも及びました。しかもPCR検査は事前に何の告知もなく実施されるもので、突然「すぐ来て!」と招集されたのです。
食料不足による飢餓に直面
ロックダウンの期間が想定外に長く延長されたことで、4月5日以降、食料不足となりました。当時、ネットスーパーで注文できるお店はほとんど閉鎖され、政府に許可されたほんの一部の野菜販売限定の店しか開いていません。そのため、ネット購入による「争奪戦」が始まりました。朝6時に販売開始のため毎朝5時30分に起きて準備していたにも関わらず、30秒も経たないうちに売り切れてしまい、まったく購入できない状態が続きました。
ここでいう「争奪戦」とは、携帯電話の画面を購入手前の状態にしておいて、開始時刻直後に注文ボタンを連打しまくるという早い者勝ちの競争です。現代社会において、真の意味の飢餓に直面することになるとは……。
このような状況で食べていけず、近隣住民との食料の分け合いや物々交換も行われました。その後、ネットで購入できる食品店は少し増えましたが、中国語で「団購 (トゥアンゴウ)」と呼ばれる団体購入が条件です。社区ごとにメッセンジャーアプリ「wechat」のグループをつくり、その中の団長がチャット内の住民に欲しいものを募る方式です。だいたい2~300人規模で、「肉団長」や「酒団長」もいます。
お店側は納品場所を1カ所に限り、最低でも30人分などと大量注文しか引き受けないため、規定人数に達しないと購入は成立しません。中国人の隣人や団長に感謝です。

図3:SNSに投稿された画像。上海の象徴である外灘の高層ビルが野菜に。「いまは食糧のほうが重要」との皮肉が込められる
政府からの配給も地区ごとに差別がある中で、この食料不足による調達難が今日に至るまで市民に対していちばん過酷なものであったことは言うまでもありません。
しかし、ロックダウン期間中に上海で見られた異様な光景はこれだけではありません。後編でさらに上海の実際の様子をレポートします。
糸賀 智行(いとがともゆき)
金盛貿易(上海)有限公司にて勤務。
