「‟カガクな”お悩み相談室」でバターダンスを見られる日も近い!? 五十嵐美樹さんインタビュー(後編) 

2022/02/09
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連載の目次

この2月オープンする予定のChematels動画コンテンツ「‟カガクな”お悩み相談室」。
⁠Chematels読者みなさんからお寄せいただいた「お悩み」に、「科学のお姉さん」ことサイエンスエデュテイナーの五十嵐美樹さんに、たくさん答えてもらいます。

「‟カガクな”お悩み相談室」に先駆けて、五十嵐美樹さんの人物像に前後編で迫っています。前回の前編では、「科学のお姉さん」誕生のきっかけなどを話してくれました。中学の授業で受けた実験をきっかけに理系に目覚め、そして大学生の時に優勝したミス理系コンテストで「科学のお姉さん」としての活動を開始した五十嵐さん。

しかし、序盤から順風満帆!…というわけにもいかなかったようです。私、サイエンスコミュニケーターの本田隆行がインタビューしました。

「おや」と立ち止まってもらうには……ダンスだ!

――ついに「科学のお姉さん」として活動を始めたわけですが、当初からうまくいきました?

それが、全然だったんですよ…。

最初はダンスもやってなくて、がっつりと科学の原理を伝える感じだったんです。科学館など科学目的で来てくださる方々の前でやると通用するんですが、商業施設だとまったく通用しなくて。そもそも人が来ないんです。

――お客の目的が違いますもんね。

そうなんです、科学うんぬんではなく、買い物が目的ですからね。

教室をする前に、「まずは足を止めてもらう必要があるなぁ」と思い、「それには自己開示する必要があるな」とダンスをしてみたら、足を止めてもらえるようになりました。

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五十嵐美樹さん。1992年東京都生まれ。東京大学大学院修士課程修了。幼い頃に虹の実験を見て感動し、科学に興味をもつ。学部在学時に「ミス理系コンテスト」でグランプリ受賞後、自身が科学に興味をもつきっかけとなったサイエンスショーを全国の子どもたちにむけて開催。現在は東京大学大学院学際情報学環客員研究員として研究を続ける傍ら、テレビやYouTube などで子どもたちに科学の楽しさを伝えている。 NHK高校講座「化学基礎」レギュラー出演。環境省浮体式洋上風力発電普及広報アンバサダー。国際科学オリンピック応援団。

考えてみれば、かつての自分もこれだったら確かに足を止めるなと思うんですよね。「お姉さんが踊っているぞ。おや、なんだか実験も始めたぞ…なんだ?」って。

「科学のお姉さん」の肩書きに「大丈夫?」と言われた日も

――関心を持ってもらう道具としてダンスは強力ですね。しかし会社員として働きながら続けるのは、大変じゃなかったですか?

大変でした。それはそれは大変でした。「科学のお姉さん」の仕事の合間に、会社員としての仕事をして、また「科学のお姉さん」をして、みたいな。

自分の首を絞めるのが好きだったんですかね。でも、スケジュールが空くとそれはそれで怖くって。

――体力的にはきつくても、目の前の子どもの反応は力にもなりますもんね。

だから、「もっと面白いものを届けたい」といろいろ考えましたね。ゾンビダンスをしながら巨大風船にリモネン(柑橘系の皮に含まれる精油成分)を塗って割ってみたり。ピコ太郎さんの「PPAP」が流行ったときは、「フェノールフタレイン(Phenolphthalein)とアンモニア(Ammonia)が水に溶ける現象(Phenomenon)じゃん!」と、思い立って実演してみたり。これは一部の保護者に受けましたが、子どもはポカーンとしてました(笑)。

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――そこまで力が入ってくると、つい本業を忘れがちになりませんか?

そういうときもあります(笑)。ただ、環境に関係なく科学の一端に触れるきっかけを創るという想いでやっているということは、ずっと変わらないです。

どんどんやりたいことが湧いてきちゃうんですよ、これが。湧いて出てきちゃううちは続けようと決めたら、2017年に、ついに本業を飲み込んでしまいました。

会社員ではなくなった当初は、社会からの信用を得るのが大変でしたね。職業欄に「科学のお姉さん」って書いても、「これはなんですか?」って聞かれたり、「大丈夫ですか?」って言われたり。

――大丈夫ではないですよね。

大丈夫ではないんですけど、でも自分を信じるしかなかったです。

「目の前には大喜びしてくれる子どもがいて、私がこの笑顔をつくっているんだ」と思って。だれに何を言われようが自分が自信を持つことが大事だと思っています。

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――いまは肩書きに「サイエンスエデュテイナー」という言葉も使っておられますが、これはいまの仕事にドンピシャな言葉ですよね。

そうですね、エデュケーションというほど先生の立ち位置ではないですし、ただのエンターテイメントだけでもない。子どもと同じ立ち位置に立って、教育寄りのテーマを扱うエンターテイナーという立ち位置なので。

自分のショーを研究活動にも生かす

――さらに、いまは活動の幅がさらに広がっているんですよね?

いまは大学院で研究を進める研究者でもあります。行っている研究は、日本の女性が理系に進まない原因の調査です。経済協力開発機構(OECD)諸国の中でも日本の女性理系進学率はとても少ないんです。

私のショーでは8割くらい女の子が見ていたりするので、その子たちに「こんなプログラムはどうだろう?」と実践してみては、そのデータを読み解くということをしています。

――自分の活動の評価を、そのまま研究に使うのはすごく効率がいいですね。

プログラム参加の前後でデータを取ってみたり、ショーがもたらす意味を考えてみたり、自分のサイエンスショーをやりっぱなしにしないというのが大事ですよね。

サンプルが偏らないようにするには、いろんな場所でいろんな考えを持つ子どもに合わないといけませんよ。そういうときは商業施設という場所がとってもよくて。

――お客さんが多様ですもんね。

そうです! 科学目的で来ていないという方々にも観てもらって、どんな効果があるのかを自分自身もいろいろ疑いながら改良しなければと思っています。

目指すは、あの大マジシャン

――いまではすっかり社会に認知され始め、信用も得はじめた「科学のお姉さん」の将来像はどんな姿ですか?

言っていいのかなぁ…「プリンセステンコー」を目指してるんです(笑)。

――それって、あの大マジシャンですよね?

はい。彼女はマジックを自分なりの表現で新しいものにしていて、生き方としてもかっこいいと思っています。私もショーの「表現」を磨いて、いろんな人たちが楽しんで、さらに学べるきっかけをつくれるようになりたいです。

――あくまでも勉強ではなく、科学に触れる「きっかけ」をつくりたい、と。

そうです。自分自身も楽しみながら全国津々浦々を回りたいですね。

科学とダンスは世界共通ですから、世界にも行きたいです。先日、中国の女子大学生に、中国の音楽を使ってバターダンスをやったら爆笑してましたから(笑)。可能性はすでに感じています。

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Chematelsの動画記事「‟カガク”なお悩み相談室」のオープンは2月16日(水)の予定です。楽しみにお待ちください!

本田 隆行(ほんだ たかゆき)

科学コミュニケーター 神戸大学大学院 自然科学研究科 地球惑星科学専攻修了(理学修士) 。大学時代の専攻は地球惑星科学。大学院時代に探査機「はやぶさ」理学ミッションに携わる経験を持つ。その後、地方公務員事務職(枚方市役所)・国立科学館勤務を経て、国内でも稀有なフリーランスの科学コミュニケーターとして活動中。展示プランニングや科学実演の実施・監修、大学講師やイベントファシリテーター、サイエンスライティングなど様々な仕事をこなす。著書に「宇宙・天文で働く」(ぺりかん社)

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