「‟カガクな”お悩み相談室」に登場する「科学のお姉さん」に迫ってみた! 五十嵐美樹さんインタビュー(前編)
2022/02/02
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連載の目次

  • インタビュー前編
  • インタビュー後編

2021年末、twitterで大流行りした「科学のお姉さん」の動画をご存知ですか? サイエンスショーの途中、突如全力のダンスを始めたと思ったら…あっという間にその手に握られたペットボトルの中でバターができるという動画です。

この動画に映るお姉さんこそ、今回ご紹介するサイエンスエデュテイナー五十嵐美樹さんです。Chematels読者みなさんにメーリングリストでお知らせした通り、この2月オープン予定のChematels動画コンテンツ「‟カガクな”お悩み相談室」で、みなさんからお寄せいただいたたくさんの「お悩み」に答えてもらいます。

今回は、「‟カガクな”お悩み相談室」に先駆けて、五十嵐さんの人物像に前後編で迫ってみたいと思います。唯一無二の科学のお姉さんは、どんな道を辿って今に至ったのでしょうか。五十嵐さん本人に、私、サイエンスコミュニケーターの本田隆行が伺ってきました!

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ずっとダンス! からの理系への目覚め

―「科学」の道へ進むようになったきっかけは?

中学生のとき授業でやった「虹をつくる実験」がきっかけなんです。プリズムを使って太陽光を分光するわけですが、ただ見ただけだと「ふーん」で終わってしまうところでした。でも、先生が「これが虹の原理なんだよ」と話した瞬間に、急に自分が知っていることと紐づいて「へぇー!」に変わったんです。

そこから急に、「この世のものは、すべて科学で説明できるんではないだろうか…」と考えるようになったんです。

――また極端ですねぇ。

ほんと、突如目覚めたんですよね。そこからは電車が急発進したら「これが慣性の法則か…!」って。そこからずーっと、中二病ですよね(笑)。

――それまでは、理系ではなかった、と?

そうです。ずっとダンスしてました(笑)。なので、その授業や先生の一言がなければ、いまの自分はいないでしょうね。

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五十嵐美樹さん。1992年東京都生まれ。東京大学大学院修士課程修了。幼い頃に虹の実験を見て感動し、科学に興味をもつ。学部在学時に「ミス理系コンテスト」でグランプリ受賞後、自身が科学に興味をもつきっかけとなったサイエンスショーを全国の子どもたちにむけて開催。現在は東京大学大学院学際情報学環客員研究員として研究を続ける傍ら、テレビやYouTube などで子どもたちに科学の楽しさを伝えている。 NHK高校講座「化学基礎」レギュラー出演。環境省浮体式洋上風力発電普及広報アンバサダー。国際科学オリンピック応援団。

「社会とつながる科学」を仕事にしたい

――以降の進路では理系に舵を切ったということですが、将来の夢とかはあったんですか?

すっかり周りにも科学好きな友達が増えて、大学にも理系進学しました。でも、大学に入った段階では、まだどんな職業があるのか、ピンときてなかったんです。

とはいえ、漠然とですが、「社会とつながる科学」に関係することがしたいとは考えてました。だから、大学では専門を決めきることができず、なんでもやる学部に入ったんです。電気も機械も、物理も化学もなんでも。いまとなってはいい選択だったと思ってます。

――でも、どこかで就職先を決めないといけないタイミングが来ますよね。

そうなんですよ! そこで、とりあえずインターンシップにいろいろ行ってみることにしました。大手メーカーさんとか、環境省とか。

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――そりゃまたチョイスの振れ幅が大きいですね。

「社会と科学がつながるところってどんなところかなぁ」と考えて思いついたところです。環境省は募集してなかったんですが、「行きたいです」と手紙を書きました(笑)。

結局、実際に規模の大きい社会インフラの技術を消費者に直接使ってもらえる部分に意義を感じて、大手電機メーカーに就職することになりました。

――ずっと「社会の姿」が頭の片隅にあったんですね。

研究者になることも考えたんですが、やはり社会に近いところへの興味が消えませんでしたね。ずっと「現場主義」なんですよね。人の顔が見えるのが楽しくって。

「科学のお姉さん」爆誕!

――なるほど。でもまだ「科学のお姉さん」の転機が出てきませんが…。

そう、それがちょうど大学4年生のときでした。自分の特技と科学の知識で競う「ミス理系コンテスト」というのが開かれて、私はダンスという表現方法で挑んでみたら優勝したんです。これがきっかけで、科学を社会とつなぐ「科学コミュニケーター」とよばれる人たちに出会うことも増えました。

そこで、まず自分でも子ども向けに何かやってみようと思い立ち、つながりのあった科学館で科学実験教室を始めたのが、「科学のお姉さん」誕生のきっかけです。

――コンテストがきっかけで、科学のお姉さんが目覚めたわけですね。

そうです! 実際にやってみたら、「楽しい!」って(笑)。

ダンスもそうですが、「自分で表現する」ことが好きなので、いままでの自分が培ってきたものが受け入れられるのがうれしかったですね。

「自分ができること」「やらないといけないこと」「社会に求められること」がガチッと重なった役割だと感じました。

――でも、しっかり就職はするんですよね。

そこはしっかり(笑)。

だから月曜から金曜までは会社員として働いて、土日は科学のお姉さんとして科学館や商業施設などで科学教室を開くというスケジュールでした。

――科学館以外でも教室を開いていたんですね。

活動をしているうちに、つながりが徐々にできてきて、貴重な機会をいただくことが増えるようになりました。

テレビなどのメディアもそうですし、毎度チャレンジだなと思いつつも、多様な企画を成功させたいと動くうちに、活動の幅は広がりました。

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ついに目覚めた「科学のお姉さん」!……しかし、うまくいくことばかりではなかった?
⁠後編に続く!

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本田 隆行(ほんだ たかゆき)

科学コミュニケーター 神戸大学大学院 自然科学研究科 地球惑星科学専攻修了(理学修士) 。大学時代の専攻は地球惑星科学。大学院時代に探査機「はやぶさ」理学ミッションに携わる経験を持つ。その後、地方公務員事務職(枚方市役所)・国立科学館勤務を経て、国内でも稀有なフリーランスの科学コミュニケーターとして活動中。展示プランニングや科学実演の実施・監修、大学講師やイベントファシリテーター、サイエンスライティングなど様々な仕事をこなす。著書に「宇宙・天文で働く」(ぺりかん社)

https://www.sc-honda.com/

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