そもそもHACCPとは何だろう?【今からでも知っておきたいHACCP制度(前編)】

2021/05/18

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2021年6月から、食品業界は大きく変わります。「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化」が行われるためです。本シリーズでは改めて、制度のポイントと具体的にやるべきことをおさらいします。

前編では、HACCPの考え方と、企業規模による取り組みレベルの違いについて紹介します。

HACCPはコストパフォーマンスの高い衛生管理方法

HACCPとは、Hazard Analysis(危害分析)とCritical Control Point(重要管理点)の頭文字をとった、衛生管理の手法です。もともとは1960年代のアポロ計画において、宇宙食を製造するときに考案されたものです。

一般的に食品の検査は、最終製品での抜き取り検査をもって行われていました。しかし、抜き取り検査では、食中毒を引き起こす病原体や異物が混入した製品を取りこぼす可能性があります。病院のない宇宙では限りなく100パーセントに近い安全性が求められるため、抜き取り検査では不十分なのです。

そこで、原材料の仕入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において、微生物や異物などが混入する可能性がどこかを分析し(危害分析)、それを防止するために徹底した管理を行う(重要管理点)、という考え方が生まれました。それがHACCPです。

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図 HACCPと従来方式での衛生管理方法の違い<br>(出所:厚生労働省HACCPウェブページなどを参考に編集部作成)

HACCPは宇宙食に限らず、あらゆる食品製造に有効な衛生管理方法です。なぜなら、重要管理点などのポイントを押さえることで、安全な食品を効率的に作ることができるからです。最初は煩雑と思われるかもしれませんが、衛生上の問題により出荷できない食品を廃棄する損失や、消費者に被害を与えてしまったときの対応の手間を考えれば、コストパフォーマンスの高い衛生管理方法といえます。

食品衛生法改正ですべての食品製造事業者に義務付け

海外では義務付けがされている国があるほど、HACCPの取り組みが進んでいます。日本でも、以前から自主的に取り組んできた企業もあります。そして2018年の食品衛生法の改正により、HACCP制度が2020年6月から施行され、さらに1年間の経過措置を経て2021年6月から完全施行となります。

改正された食品衛生法の第50条の2には、「厚生労働大臣は、営業(中略)の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置(中略)について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする」とあり、その一つに「食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組」があります。これがHACCPです。

対象は、基本的にはすべての食品製造事業者です。大企業の生産工場やチェーン店はもちろんのこと、病院などの給食施設、スーパーの店内調理場、個人経営の飲食店、観光地でのソフトクリーム販売店、さらにはコーヒーの量り売り店なども対象です。

企業規模によって2種類に分けられる

とはいえ、大企業と中小企業とでは、HACCPに掛けることができる時間と人材は圧倒的に異なります。そこで厚生労働省では、事業者を二つに分け、それぞれ取り組みレベルを変えています。分け方は厚生労働省の「HACCAP」ウェブページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html)をご覧ください。

一つは、大規模事業者、と畜場、食鳥処理場が取り組む本格的なもので、「HACCPに基づく衛生管理」とよんでいます。

もう一つは、小規模な事業者が取り組む、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」です。こちらは、少人数でも取り組める簡易バージョンのようなものです。各業界団体が手引書を公開しており、厚生労働省ウェブ内の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00007.html)から閲覧することもできます。各手引書は、テンプレートにしたがって記録用紙などを簡単に作成できるようになっています。

辛子めんたいこ、チーズ、はちみつ、味噌、ゆばなど、主要な食品製造などの手引書が一通り揃っています。各自、自分の業種に該当する(もしくは近い)団体の手引書を参考にしてください。

後編では、具体的な取り組み方を紹介します。どうぞお楽しみに。

島田 祥輔(しまだしょうすけ)

サイエンスライター 1982年生まれ。名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻修了。特に遺伝子に興味があり、遺伝子の研究によって医療や生活がどう変わっていくのかに注目している。また、腸内細菌検査サービス「マイキンソー」のオウンドメディア「Mykinsoラボ」の編集長を務める。