シビアな5G規格に対応する高機能素材【5G/IoT通信展レポート(前編)】
2020/12/23
期間:2020年10月28日(水)~2020年10月30日(金)
会場:幕張メッセ
第5世代移動通信システム、いわゆる5Gの時代を迎え、IoT(モノのインターネット)によるデータ活用が急速に進んでいこうとしています。スマートフォンなどの民間利用以外に、遠隔監視、予知保全、生産管理などの産業利用ではどんな変化が予測されるのか。これに迫るため、「第3回 5G/IoT通信展」で化学系の企業を中心にブースを訪れてみました。
■5G機器の電波透過率向上に貢献する発泡樹脂素材

図1 5G/IoT通信展での旭化成のブース
旭化成株式会社が5G向けの製品として強く推しているのは、発泡樹脂素材の「サンフォース®」です。内部に独立気泡構造をもつため軽量かつ断熱性を備えており、エンジニアリングプラスチックの変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)樹脂を主な原料としていることから、他の発砲樹脂と比較して耐熱性や難燃性に優れています。

図2 容器に入ったサンフォース®
「サンフォース®は一般的な発泡樹脂より高強度で薄肉成形に向いていることから自動車や航空用途の部材にも採用されていますが、低誘電率や低誘電正接といった良好な誘電特性をもつことから、高周波に対しても高い電波透過性を示します。このため、5Gスモールセル用アンテナカバーに適しているのです」(サンフォース事業推進部・松間一郎氏)
移動体通信システムでは1つの基地局やその電波エリアを「セル」と呼び、ビルや地下街、あるいは街中でも電波が届きにくいところは「スモールセル」という小さいエリア向けの基地局でカバーします。実は5Gの高速性はこのスモールセルの性能に大きく左右されるのですが、必要となる機材は、まだ開発中であり、樹脂素材についても検討段階にあります。
「5Gでは非常に波長の短いミリ波も使いますが、このような周波数帯になるとアンテナを樹脂カバーで覆っただけでも電波到達距離に支障を来します。この点、サンフォース®は最大で10倍発泡用のビーズまで用意されているので、薄肉化した樹脂と組み合わせることによって、より電波透過率の高いアンテナカバーを作成することができるのです」(松間氏)

図3 サンフォース®についての紹介
https://www.asahi-kasei.co.jp/infofoam/sunforce/index.html
■高周波損失が少ないフッ素樹脂製プリント基板材料

シリコーンゴムを基軸とした熱対策部品や電気接続部品、押出し成形品を製造する富士高分子工業株式会社も、5Gのシビアな規格に対応した低誘電タイプの新製品を出展していました。

図5 富士高分子工業の展示品
「waveSTRATE™という高周波低損失基材レスフッ素樹脂CCL(銅張積層板)は、特にミリ波など高周波数帯域において伝送損失が極めて低い他、比誘電率も低いことから、5G、Beyond5G製品用の基板素材として非常に有望です」(営業部営業戦略推進室・美馬久郎氏)
一般的にCCL(Copper Clad Laminate)は基材に絶縁樹脂を含浸させ、銅箔を張り合わせて積層した材料で、プリント基板用の材料として使われます。一方、富士高分子工業の製品は基材を入れずにフッ素樹脂のみで絶縁層を構成しているため、ガラスクロス基材などの誘電特性の影響を受けず、折り曲げることもできるので多様な製品に対応が可能です。
次回は、電磁ノイズ障害を防ぐソリューションや、展示会場で見つけたちょっと気になる製品について紹介します。
石川 憲二(いしかわけんじ)
ジャーナリスト、作家、編集者 1958年東京生まれ。東京理科大学理学部卒業。30年以上にわたって企業や研究機関を取材し、技術やビジネスに関する解説記事を書き続けている。扱ってきた領域は、電気・電子、機械、自動車、航空・宇宙、船舶、材料、化学、コンピュータ、通信、システム、ロボット、エネルギー、生産技術、知的財産、経営、人事、マネジメントなど。
