天然保存料カチオンポリマー「ポリリジン」を非食品用途に! 耐熱・透明・柔軟・接着の四拍子揃ったシロキサン樹脂「ネックレスポリマー™」の展示も―JNC【新機能性材料展レポート2026 第3回】

2026/04/28

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2026年1月に開催された「新機能性材料展」のレポート。最終回となる第3弾は化学メーカーのJNC(本社東京都千代田区)が出展するブースからお伝えします。同社は、機能性材料や化学品、ライフケミカル製品などを幅広く研究・開発・製造・販売しています。この記事では、「新規の需要を探したい」と展示していたユニークなポリマー2種を紹介します。天然由来で長く食品保存料に使われ、濡れ性向上や表面電荷調整などの機能をもつことから非食品用途の可能性もあるカチオンポリマー「ε-ポリ-L-リジン」と、シロキサン樹脂で耐熱性・透明性・柔軟性・接着性も兼ね備える「ネックレスポリマー™」を紹介します。

新規用途を探索中! 濡れ性アップ、中性でも効く抗菌性カチオンポリマー「ポリリジン」

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図1:「ε-ポリ-L-リジン」の展示。写真はポリリジン25%水溶液(左)とポリリジン50%・デキストリン50%の粉剤(右)。塩類を含まないので、塩の共存を嫌う環境でも使用可能。食品添加物以外に化粧品やウェットシートの防腐剤、静電気防止・キューティクル保護用ヘアケア製品での採用実績も

(筆者撮影)

食品の保存料として30年以上の実績をもつ、天然由来のカチオンポリマー「ε-ポリ-L-リジン」。ε-ポリ-L-リジンは、必須アミノ酸の一種であるL-リジンのε 位のアミノ基が、カルボキシル基とペプチド結合し、直鎖状につながったポリアミノ酸です(図2)。

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図2:ε-ポリ-L-リジンの構造。微生物発酵で生産しており、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)の一般安全(GRAS:Generally Recognized As Safe)認証も取得

(出所:JNC配布資料より抜粋)

製品ラインナップには、液剤および粉剤があります。JNC横浜研究所バイオ材料開発グループの太田里水さんは、「食品添加物以外の用途でもお使いいただけないか、お客さまの声をお聞きするために、展示会に参加しました」と言います。この安全性の高いカチオンポリマーは抗菌性だけではなく、濡れ性向上、それに表面電荷調整の機能をもちます。そのため、凝集剤、角層・毛髪への吸着剤、細胞の足場材としての利用例があります。

電荷調整剤としての特長について太田さんは、「弊社のε-ポリ-L-リジンは、pHが中性でもプラスに荷電する直鎖のポリマーというユニークな特徴を持っています。他のカチオン性薬剤が効きにくい条件でも表面改質剤として機能する可能性があります。国内でポリリジンを取り扱うのは弊社のみです」と説明します(図3)。

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図3:中性(pH7)でもプラスに荷電。各pHにおけるゼータ電位。値が高いほどプラスに荷電。シリカ表面にε-ポリ-L-リジン(PL)を吸着させるとオレンジ各点のようにプラス荷電への表面改質ができる

(出所:JNC配布資料より抜粋)

ε-ポリ-L-リジンを金属表面に処理すると、金属板の濡れ性を向上できます(図4)。

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図4:濡れ性の向上。銅板へ滴下した水がε-ポリ-L-リジン処理部では水滴が広がっており濡れ性が向上していると分かる。水で洗い流してもε-ポリ-L-リジンが吸着している状態を保つため、濡れ性の向上を維持できる

(出所:JNC配布資料より抜粋)

太田さんは、「展示会で、濡れ性向上の機能に興味を示してくださるお客さまが多いことが分かりました」と、手応えを感じている様子でした。

透明にして高耐熱にして柔軟にして高接着…シロキサン樹脂「ネックレスポリマー」

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図5:ネックレスポリマーのサンプルシート。Aは鎖の繰り返しnが3で、Bはnが4のグレード(図6参照)。どちらも高い透明性をもつ。Bはパイロットスケールで開発中

(編集部撮影)

JNCがもう一つ展示していたのがネックレスポリマーです(図5)。直鎖のシロキサンポリマーにかご型のユニットが繰り返し入った構造をしています(図6)。

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図6:ネックレスポリマー(開発品)の構造。ハードユニットとしての「かご」と、ソフトユニットとしての「鎖」という異なる性質をもつ構造が組み合わさっている。「かご」と「鎖」の割合を変えると物性が変化する。鎖の繰り返しnが3と4のグレードがある

(出所:JNC配布資料より抜粋)

JNC石油化学(本社千葉県市原市)高機能材料開発研究所で主務をつとめる廣田敬幸さんは、「ダブルデッカー型、つまり二層型のかご型ユニットでは、シリコン(Si)の4本の手のうち3本が酸素と結合し、1本のみが有機基と結合しています。そのため、無機物に近い特性をもちます。かご型ユニットの存在により100℃近く耐熱性が上がり、500℃という高い耐熱性を示します。透明性、柔軟性、接着性も併せもつ点が最大の特長です」と説明します。

汎用のシリコーン接着剤の接着強度は一般的に低いものですが、ネックレスポリマーはかご型ユニットがあるおかげで、シリコンウエハ-ガラス接着の場合、エポキシ樹脂と同等のダイシェア強度 30Mpa以上の接着性能をもちます。

また、これほどの耐熱性を示す場合、色が付いている樹脂が多いのですが、ネックレスポリマーは無色透明です(図5)。

「耐熱性が必要だけれど色が付いてしまったり、脆くて割れてしまったりといった課題を抱えているお客さまに試していただきたく思います。nの数をカスタマイズして特性を調整することもできます。高温になりがちな高出力発光ダイオードの接着剤や封止剤のほか、高温プロセスがある半導体用接着剤などにお使いいただけるのではないかと考えています。発光ダイオード用では、高透明性と高屈折率の両立が課題とされることが多いのですが、透明性が高く*1、屈折率も高い*2のが特長です」と、廣田さんは説明します。

カチオンポリマーもネックレスポリマーもユニークなポリマーといえます。これら材料の用途をいち早く見出して自社製品に採り入れた企業のモノづくり展開をつい想像し、期待してしまいました。

今回で2026年の新機能性材料展のレポートは最終回です。前回までのレポートをまだお読みでない方は、積水化成品工業を取材した第1回の記事【第1回の記事リンク貼る】、ならびにCHEMIPAZを取材した第2回の記事もぜひお読みください。

村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。