「細菌の会話」断ってヌメリ除去! 透明電極向け銀ナノワイヤも展示―CHEMIPAZ【新機能性材料展レポート2026 第2回】
2026/04/212026年1月に開催された「新機能性材料展」レポートの第2弾は、CHEMIPAZ(ケミパズ、東京都中央区)です。同社は2025年に星光PMCから社名変更したばかりの化学メーカー。展示ブースでは製紙用薬品の技術から派生した化学品を紹介していました。そのなかから、バイオフィルムでできたヌメリの防止剤、および銀ナノワイヤ分散液を紹介します。
ヌメリの原因「バイオフィルム」を防ぎ、取り除く

図1:抗バイオフィルム剤PAZCLEAR。2025年に発売のコーティング式の「AFシリーズ」(左1点)と、2022年より販売している多用途品の「BRシリーズ」(右4点)
(筆者撮影)
CHEMIPAZのブースに展示されていたのは抗バイオフィルム剤PAZCLEAR。すでに食品会社で採用された実績のある「BRシリーズ」などが展示されていました。同社が製紙工場向けのヌメリ対策として殺菌ではない新たな手法を検討するなかで、抗バイオフィルム剤を発見しました。
バイオフィルム(BF:Biofilm)の代表例は、あの浴室にできるヌルヌルした「ピンク汚れ」です。冷却装置の結露水を排出するドレンパイプや、食品工場の各種設備でもバイオフィルム対策が求められています。
CHEMIPAZサステナブルマテリアルズBU製紙用薬品営業統括部の野村健太さんは、「通常は、殺菌剤や洗浄剤を用いてバイオフィルム対策をします。一方、BRシリーズでは、まったく異なる機構も働いています。その機構とは、細菌が増殖する際に細菌同士が行うクオラムセンシング(QS:Quorum Sensing)と呼ばれるシグナル伝達を阻害するというもの。バイオフィルムができるのを防ぐだけでなく、できてしまったバイオフィルムを弱体化させることもできます」と説明します(図2)。

図2:抗バイオフィルム剤PAZCLEARの展示資料。洗浄剤や殺菌剤も配合した品番も。食品添加物組成のグレードはまな板や鍋などの調理器具での使用も可能
(出所:CHEMIPAZ配布資料を抜粋)
採用した食品会社からは「以前は次亜塩素酸を使っており、噴霧すると強い不快な塩素臭があったが、BRシリーズに代えてからはそれがなくなった」との声が寄せられているそうです。
野村さんは、「食品添加物に使われる成分で構成された製品もあります。これなら口腔内の歯垢対策にも使えるのではないかと期待しています。ほかにも、ハンドソープやお風呂の洗剤にバイオフィルム剤を配合すれば、手洗いや風呂掃除をして洗い流すだけで、自然にバイオフィルム対策ができます」と、アイデアを紹介しました。
展示ブースではほかに、バイオフィルム剤を入れたゲルの開発品も展示されていました(図3)。排水溝のゴミ取りメッシュの上におくことなどを想定したもので、ゲルからゆっくりと有効成分が出てくるため、長期間の持続的な効果が期待できます。

図3:バイオフィルム剤を入れたゲル(開発品)
(写真撮影:編集部)
銀ナノワイヤでペロブスカイト太陽電池の透明電極も
直径が20〜25ナノメートル程度、長さ10マイクロメートル程度の銀ナノワイヤが、水やアルコール系の溶媒に分散しているのが、銀ナノワイヤ分散液です(図4)。こちらは開発品で、銀ナノワイヤを細く一方向に成長させるところに、CHEMIPAZの製紙用薬品技術で培った技術が生きています。

図4:銀ナノワイヤ分散液(開発品)
(筆者撮影)
銀ナノワイヤ分散液を対象物の表面に塗布し、乾燥させることで透明導電膜にすることができます(図5)。

図5:銀ナノワイヤ分散液(開発品)の概要
(出所:CHEMIPAZ配布資料を抜粋)
新事業推進部の植田恭弘さんは銀ナノワイヤ分散液について、「導電性を付与するために塗工しても透明性を維持できるという特長があります。透明導電材料には一般的に酸化インジウムスズ(ITO)が使われていますが、この銀ナノワイヤであればITOとは異なり真空プロセスを使用しないためより広い面積での塗布で有利と考えています」と説明します(図6)。

図6:銀ナノワイヤ塗布による透明性および導電性の比較。「Ω/□」は表面電気抵抗値の単位。値が小さいほど導電性が高い。10Ω/□でも透明性を維持している
(編集部撮影)
さらに植田さんは、「その一方で、インクジェットを使えば数百マイクロメートル幅の細い導電経路も作成可能という自由度の高さも特筆すべき点です」と続けます(図7)。

図7:インクジェットで印刷した銀ナノワイヤ。ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)樹脂に250マイクロメートルの幅で印刷した例
(出所:CHEMIPAZ配布資料)
ITOでは折り曲げた際の割れが課題ですが、オーバーコートを施した銀ナノワイヤであれば、ITOよりも曲げたとき割れにくくなります。植田さんは、「フィルム状で曲げられるペロブスカイト型太陽電池の透明電極などにも応用できそうです」と期待を語ります。
銀ナノワイヤを塗工したフィルムの断熱効果を紹介する展示もありました(図8)。「お客さまの関心の高さを感じています」と植田さん。

図8:銀ナノワイヤによる断熱。銀ナノワイヤ(AgNW)塗工フィルムは市販遮熱フィルムなどより高い断熱効果を示している
(出所:CHEMIPAZ展示資料より抜粋)
製紙用技術を他分野に展開する技術力の高さを感じました。今後、どのような開発品が発表されるか楽しみです。
次回は、カチオンポリマーと分子ネックレスポリマーを紹介するメーカーの展示ブースよりレポートする予定です。
村上 華子(むらかみ はなこ)
早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。
