中国、輸出入危険化学品の検査を強化 上海でモデル試験、ラベル・SDSも改訂へ
2023/02/28上海税関が企業の危険化学品隠蔽を調査、行政事件に
最近、上海のある企業が「アクリル系粘着剤」を一括輸入し、危険化学品を隠すという違法的行為で疑われました。上海税関のリスク管理当局はリスク分析を通じて、この商品が海事部門から「可燃性液体」として申告されたものの、危険化学品の要件に沿って税関で申告されていないことを突き止めました。同税関は直ちにデータ検証を行い、不正の手がかりを選別。企業が申告を隠している疑いがあることを確認し、密輸防止部門に処理を委ねました。調査の結果、同社が危険化学品を隠蔽していたことが判明し、隠蔽額にして約12万人民元の行政事件として処理されました。
上海港は中国最大の危険物コンテナの輸出入通路で、輸出入量は全国総量の約50%を占めています。近年、化学工業製品分野の商品取扱量が多く、複雑で専門性も高いことなどから、上海税関は国境を越える貿易ビッグデータ・プラットフォーム役として対策を立てています。具体的には、危険化学品の申告・保存・輸送などの過程におけるリスク分析に関して、リスク予防の知能化とコントロールモデルの構築、また輸出入易制毒化工品・危険化学品の分類自動配置モデル確立などを通じ、その正確性を強化するというものです。実際、これら情報技術を中心に国境警備ラインが構築され、輸出入危険化学品が押収されています。
図1:上海税関
2022年の輸出入危険化学品の累計監督管理件数は約5万3000件に上りました。検査漏れ、不正確な申告など輸出入危険化学品の引き渡し案件は累計107件で、その危険化学品の重量は3025トンと報告されています。
上海税関は2022年7月末までに、リスク分析による検査を706件実施し、輸出入危険化学品の偽装・隠蔽128件を発見しました。摘発率は18.1%でした。
輸入危険化学品検査のモデル的試験を実施
上海税関は「長三角」(長江デルタ)と呼ばれる経済地域の多くの税関との協力関係を強化し、危険物監督の網を張り巡らせ、地域保護のための連携を密にしています。統計によると、現在6600社以上の各種経営主体から上海港における危険化学品の輸入の申告があり、うち約8割は長三角地域にある企業を受取人とするもの。一部の輸出関連の事件では、外地企業を調査して証拠を採取することが困難であることなどから、上海税関は長三角全体にわたる一体的なリスク予防・コントロール機構を擁して、属地の港と連動した危険化学品偽装リスクの検証を進めています。
図2:長三角(長江デルタ)経済地域
2022年以来、上海税関は南京税関、杭州税関、合肥税関と連携してこのメカニズムを通じた共同予防・コントロールを行い、危険化学品の輸出漏れについて行政立案の28件を調査しました。
そして同年11月25日には、「輸入危険化学品検査モデル改革の試験実施に関する通知」(关于开展进口危险化学品检验模式改革试点的通告)を発表しました。これは、税関総署の要求に基づき、上海税関で輸入危険化学品検査モデルの改革を試験的に推進し、輸入危険化学品の安全をさらに強化し、管理するための通知です。
通知の内容を紹介します。
- 試験期間:今回の試験作業は2022年12月1日から3カ月間。
- 試験対象:「100%審査書検証+港検査または目的地検査」モデルを実施し、危険化学品の属性とその危険貨物の包装タイプによって、輸入危険化学品の分類に検査の作業段階(場所)と比率を設定する。
- 試験範囲と実施手順:(上海税関に所属する)浦江税関からの輸入を申告された危険化学品を試験的に実施し、その後、試験状況に応じて上海税関の管轄下にある港から輸入された危険化学品に徐々に拡大する予定。
- 要求事項:危険化学品を輸入する受取人またはその代理人が税関申告時に、貨物の属性、検査検疫名称、危険種類・包装種類・国連危険貨物番号(UN番号)・国連危険貨物包装(UNマーク)といった危険貨物情報、目的地検査検疫機関などを正直に記入すること。税関に提出する申告資料は、「危険化学品及びその輸出入検査監督関連問題に関する公告」(税関総署公告2020年第129号)に従うこと。
危険公示ラベルと安全データシート、今後改訂へ
図3:コンテナが数多く並ぶ上海港
この通知は、2023年2月時点では試験期間中ですが、今後、中国へ危険化学品を輸出する際は、中国語での「危険公示ラベル」と「安全データシート」の確認がますます重視されていきそうです。現在、「化学品安全ラベル作成規定」(GB15258-2009)に基づいた危険公示ラベルと、「化学品安全技術説明書編集マニュアル」(GB/T17519-2013)に基づいた安全データシートの規格は2024年を目標に改訂中であり、今後、内容の見直しも必要となってきます。
「危険化学品及びその輸出入検査監督関連問題に関する公告」(税関総署公告2020年第129号)のうち、中国国内への輸入品に関する概要を説明しておきます。
- 税関は『危険化学品目録』(2015年版)に含まれる危険化学品の輸出入に対して検査を実施する。
- 危険化学物質を輸入する受取人またはその代理人が税関申告するとき、記入事項は危険種類、包装種類(バルク製品を除く)、国連危険貨物番号(UN番号)、国連危険貨物包装マーク(包装UNマーク、ただしバルク製品を除く)などが含まれ、以下の材料も提供しなければならない。
(1)「輸入危険化学品企業適合性声明」(2)抑制剤や安定剤を添加する必要がある製品に対する、実際の添加抑制剤や安定剤の名称、数量などの状況説明(3)中国語危険公示ラベル(バルク製品を除く、以下同じ)、中国語安全データシートのサンプル
- 輸入危険化学品検査の内容については、下記項目が本公告の規定に合致しているかを見る。
(1)製品の主要成分/成分情報、物理的および化学的特性、危険カテゴリーなど(2)製品の包装における中国語危険公示ラベルの有無、中国語による安全データシート添付の有無(3)輸入危険化学品用の包装に対する、包装型式、包装マーク、包装種類、包装規格、単品重量、包装使用状況など
今後、上述の試験の結果を踏まえて新たな指摘項目が出てくる可能性もあります。中国に危険化学品を輸出している日本企業は中国の関税をめぐるこれからの動向に注意が必要です。
林田 輝昭(はやしだ てるあき)
上海息交企業管理有限公司 熊本大学大学院修士課程修了(専攻は化学)。卒業後、チッソ(現JNC)に就職。定年を機に上海で化学品のコンサルタント業務を上海息交企業管理有限公司
に帰属し活動中。
