【化学業界の基礎知識】包装材・容器の特徴を心得て選ぶ出荷形態

2022/04/21
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ご好評いただいてきたChematelsの連載「化学業界の基礎知識」も残すところあと2回となりました。今回のテーマは「出荷形態(包装材・容器)」です。化学製品にはそれぞれの性状に適したさまざまな種類の包装・容器があります。それらの特徴・メリット、関連法規などについて説明します。

「出荷」とは製品を出すこと、「形態」とは荷姿のこと

「出荷形態」の「出荷」とは、自社の製品を荷物の形で、物流(モノの流れ)を通してユーザーや市場へ出すことをいいます。「形態」とは、その荷姿であり、包装・容器および梱包状態のことをいいます。中の製品は固形、液体、気体のいずれかの性状を持ちます。

包装材・容器の役割は破損の防止と積載の容易化

包装材・容器の役割は、基本的に製品の破損や汚染を防止すること、また、積載や保管しやすい形状にすることです。化学製品の包装材・容器においては、法に基づき安全を確保することが特に重要です。

以下では、次の区分と内容で説明します。なお、ダンボール、木箱、パレットは省略します。

固形製品包装:フレコン、紙袋
⁠・液体製品包装:バルク輸送、ISOタンクコンテナ、タンクローリー、ドラム缶、一斗缶、UN缶
⁠・気体輸送用途の容器:液化ガスを含むガスの容器

なお、ISOタンクコンテナは固形品や気体の輸送にも利用されます。また、ドラム缶には固形品に対応した製品もあります。

関連法規は国内の消防法など、海外の国際海上危険物規程も

化学製品は、危険物や毒劇物、高圧ガスに該当する場合が多く、包装材・容器の仕様や積載方法、移動方法について、国内外の該当する法規・基準を遵守する必要があります。適用される法規は、製品に添付される「化学物質等安全データシート」(SDS: Safety Data Sheet)の記載内容から確認します。

国内の法規・基準関連では、危険物は総務省管轄の「消防法」、高圧ガスは経済産業省管轄の「高圧ガス保安法」、毒劇物は厚生労働省管轄の「毒物及び劇物取締法」が適用されます。

危険物の輸送は、その方法によって「運搬」と「移送」に区別されます。「運搬」とは、車両、つまりトラックなどによる輸送のことをいい、「移送」とは、法規上「移動タンク貯蔵所」に当たるタンクローリーによる輸送のことをいいます。運搬では、危険物が指定数量以下でも消防法が適用されます。

海外の法規・基準関連では、危険物の輸送については「危険物の輸送に関する国連勧告」に規定されています。この勧告の下、国際海事機関が海上輸送の容器基準などを定めたものが「国際海上危険物規程」(IMDG Code:International Maritime Dangerous Goods Code)であり、物質ごとに国連番号(UN no.:United Nation Number)、等級、梱包方法などを定めています。

詳しくは各法規を参照してください。

粉粒体の大量輸送向け包装材 -フレコン-

ここからは、固形製品の包装材・容器を紹介します。

フレコンとは、フレキシブル・コンテナ・バッグ(Flexible Container Bag)の通称です。フレコンは、粉やペレットなどの粉粒体を大量輸送するための包装材です。折りたたみ可能な柔軟性のある素材で袋状につくられ、吊り上げ用の吊り部と、内容物を充填・排出できる開口部を備えたコンテナです。規格は日本産業規格の「JIS Z 1651」で規定されており、工業薬品、合成樹脂、飼料、食品などの輸送に利用されています。

素材は主にポリプロピレン樹脂で、充填重量は一般的に300kg~3,000kgとなります。湿気や静電気防止品、危険物対応品もあります。

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図1:フレコンの全体像と各部位名称

フレコンを大別すると、繰り返して使用することを目的としたランニング用と、1回から数回の使用を目的としたクロス用があります。貯蔵袋としての機能もあり、段積み保管により倉庫を有効利用できます。

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図2:フレコンを保管しているところ

多段積み保管が容易な包装材 -紙袋-

紙袋(かみたい、かみぶくろ)とは、主に粉・粒体(ペレット)の輸送に用いられる紙製の袋状容器です。充填重量は、一般的に20?30kgです。国際的な規定では、国連勧告危険物容器基準で最高50kgです。使用用途により形状や構成は異なり、特に充填口の封緘の方法(止め方)は、ミシンによるものやホットシール(ピンチ)式とよばれるものなどさまざまです。

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図3:紙袋と保管風景

紙袋のおも主な要求機能は、外気の湿気・水分からの保護です。そのためアルミフィルムやポリエチレンの内袋を使用したり、ラミネートコーティングを行ったりして防水・防湿機能を持たせています。その他、ガスの透過を抑制するガスバリア品や、危険物用のUN規格適合品などの特別な用途のものもあります。

紙袋の表面は滑りにくい仕様となっており、多段積み保管が容易なため倉庫スペースの有効利用が可能です。

荷物をそのまま目的地まで -バルク輸送-

次に、液体製品の包装材について紹介します。

バルク輸送とは、液状・粉末状の荷物を、タンクローリーなどを使い、そのまま目的地まで運ぶ方法のことです。「バルク」は、「大きさ、容量」などの意味の英語由来の言葉であり、かならずしも「バルク=液体製品」ではありません。なお、化学分野で「バルク」は、「医薬品原料」や「中間体」の意味で使われることもあります。

石油類や化学薬品などの液体品は「リキッドバルク」、鉄鉱石、穀物、セメント、塩などは「ドライバルク」といいます。

荷卸しは、タンクローリーに直接パイプやホースをつないで行うので安全で、品質管理面で優位性があります。また、包装を必要としないため環境にやさしい輸送手段といえます。

積み替えなしに海外への運送も可能 -ISOタンクコンテナ-

ISO(アイソ、アイエスオー)タンクコンテナは、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)の規格に準拠した貨物輸送用の世界標準コンテナです。内容物の積み替えなしに海外へも運送可能なため、需要が拡大しています。

ISOタンクコンテナには、次に示すような経済性、利便性、安全性、環境対応に優れた特徴があります。

・世界共通の規格のため、安全性や機能性が高く、簡便に世界各国へ輸送が可能である。
⁠・海上、道路、鉄道輸送の複合一貫輸送に対応でき、一時保管設備としても利用可能である。
⁠・一度に大量の輸送が可能で、最大26kL(ドラム缶120~130本)積載可能である。
⁠・副包装資材が一切なく、パレットなどの廃棄物が発生しないなど、環境にやさしい輸送容器である。
⁠・積み替えなしで出荷倉庫から顧客倉庫までの輸送が可能で、漏洩リスクを抑えられる。
⁠・内部洗浄により、反復かつ長期間利用が可能。また異なる液体の輸送も可能である。

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図4:ISOタンクコンテナと主な輸送貨物

ISOタンクコンテナの管理・運用は、上述の国際海上危険物規程(IMDG Code)に則り厳格に行われます。海上輸送上の危険物の場合、タンク内の充填率は原則として80%以上95%以内に収める規定があります。充填率が80%以下となる場合は、防波板付のタンクコンテナを使用する必要があります。

また、フォークリフトの使用は厳禁とされているほか、2.5年ごとの中間検査、5年ごとの定期検査の受検が必要です。

移動タンク貯蔵所の扱い -ローリー-

ローリーとは、イギリス英語で「トラック」と同じ意味です。タンクローリーは、トラックでは運ぶことのできない大量の液体や気体を運ぶことができ、積載物は引火性があるものや毒性ガスなどの危険物が中心です。

消防法では、危険物輸送のタンクローリーを「移動タンク貯蔵所」といいます。タンクローリーの種類ごとに容積制限の有無や数値が設定されています。例えば、危険物ローリーには30kL以下のタンク容量制限がありますが、食品や飼料を運ぶ非危険物ローリーには容量に関する制限はありません。高圧ガスを運ぶ高圧ガスローリーの場合、可燃性ガスは18kL未満、アンモニア以外の毒性ガスは8kL未満の制限があります。

材質としては鋼、ステンレス、アルミニウムが多く、腐食に耐えられるように厚さ3.2㎜以上のものが使われます。

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図5: 典型的なタンクローリー(左)とセミトレーラータイプのもの(右)

オープンとクローズの2種類 -ドラム缶-

ドラム缶は、金属や繊維板でつくられた円筒形の容器です。最も一般的なのは容量200Lのものであり、容量45L以下の小さなものは「ペール缶」と呼ばれます。

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図6:さまざまな寸法のドラム缶

ガソリンや灯油のような燃料油や、塗料、溶剤、化学薬品、医薬原料などの工業材料とその液体製品の運搬・貯蔵に用いられます。内容物が水分、塩分、酸、アルカリなどを含んでいる場合は、必ず内袋としてポリエチレン製などの樹脂袋を用い、ドラム缶の内面に内容物が直接触れないように配慮します。

ドラム缶には、オープンドラムとクローズドラムの2種類のタイプがあります。オープンドラムは粉体・固体用で、クローズドラムは液体用です。危険物・劇毒物を船舶で輸送および貯蔵する場合は、容器性能試験に合格した「UN検査証」(UNマーク)が表示されているドラム缶を使用します。

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図7:オープンドラム(左)とクローズドラム(右)

JISで18L缶と定義 -一斗缶-

一斗缶(いっとかん)は、尺貫法の単位である「1斗」(約18L)からの俗称ですが、日本産業規格(JIS)Z1602:2003で18L缶として定められている容器のことをいいます。化学原料、塗料、インキ、試薬、食品・食油などの容器に用いられており、市場に流通するものの多くには、内容物や注意事項などがラベル印刷されています。

缶の素材には、ブリキ(錫メッキ鋼板)と耐候性のあるティンフリースチール(電解クロム酸処理鋼板)があります。侵食性のある内容物に対しては、耐食性のある塗料を缶内面に塗装した内面コート缶があるほか、内容物に応じて、プラスチックフィルムを缶内面に貼り付けたラミネート缶もあります。

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図8:一斗缶。(左)主に液体を入れるのに適した一般タイプ。(中)固形物や粘度の高い内容物を入れるのに適した天切タイプ。(右)主に固形物を入れるのに適した押し蓋缶

缶の充填口には、形状によってシール、クラウン、グリス、クリンプなど、さまざまな種類があります。

世界の輸送機関に通用 -UN缶-

「UN検査証」(UNマーク)が表示されている容器をUN缶といいます。UNマークは、日本舶用品検定協会が国際基準に基づいて行う容器性能試験に合格したものに与えられるものです。

危険物・劇毒物を船舶で輸送および貯蔵する場合、UNマークを表示した危険物容器は国際的に認められていることから、原則として世界の船舶・航空・陸上すべての輸送機関に通用します。

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図9:UNマークの表示例

高圧ガスをボンベに封入 -気体輸送-

各種の産業ガスは、気体、または液体として製造され、容器に詰められますが、気体の場合は、高圧に圧縮されて高圧ガス容器に、液体の場合は、ほとんどが超低温容器に詰められます。これらは「高圧ガス」と呼ばれ、「高圧ガス保安法」の規制を受けます。

気体(ガス)にはアセチレンやブタンガス、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)などの可燃性ガス、酸素や窒素などの非可燃性ガス、塩素などの毒性ガスなど、さまざまなものがあります。以下に高圧ガスの詳しい区分を参考に示します。

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表1:高圧ガスの区分

高圧ガス容器は、一般にボンベといいます。高圧ガス保安法では、「容器とは、高圧ガスを充填するもので、地盤面に対して移動できるものをいう」と定めています。容器の種類には、継目なし容器、溶接容器、超低温容器、繊維強化プラスチック複合容器などがあります。

以下に形状から見た容器および集合体について、名称と内容を説明します。

・マニホールド方式:ガス使用量が比較的少ない場合に使用され、複数の高圧ガス容器を用い、高圧導管に連結管で接続し、使用圧力に応じて減圧供給する集合設備
⁠・カードル方式:ガス使用量が多い場合に使用され、複数の高圧ガス容器を枠組みし、固定した供給装置(カードル)からガスを供給する集合設備
⁠・超低温容器:温度が-50℃以下である液化ガスを充填するための容器

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図10:形状から見た高圧ガス容器の分類

鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net

1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。