今すぐ役立つコミュニケーション術 「伝える」と「伝わる」はちがう?!
2021/01/21
今みなさんにご覧いただいているサイト「Chematels」(ケマテルズ)は、いわずと知れた「化学品専門の情報ポータルサイト」です。日々、「ケミカル」で「マテリアル」な話題をお届けしています。
しかし、しかしですよ!
化学品専門のサイトだからといって、白衣を着てガラス器具と日々向き合っている人や、化学プラントで機械が動く音に囲まれている人、計算機の前で数値シミュレーションをしている人ばかりが利用しているわけではありません。
原材料の価格推移や業界のトレンドなどが気になる営業担当や経理担当の方、化学業界に飛び込んでこれから大きく羽ばたくために自己研鑽したい事務担当の方にもご覧いただいています。
そこで今回は、普段のお仕事にも役立ち使える「ちょっとしたコミュニケーションのポイント」をお届けします。テーマは、「その話、伝わってる?」です。
熱く話したのに相手には…
皆さん、人と話をするときに「この話、伝わってるかなぁ…」と思いながら話をすることは、どのくらいありますか? おそらく何気ない雑談や普段の会話くらいであれば、そんなことを考えずに話すことがほとんどですよね。
でも、話すことがらがとても大事なとき、あるいは深刻なときは「伝わるかどうか」がとても重要になります。一世一代の大仕事を賭けた社外プレゼンテーションで、精魂込めて準備した内容を余すところなく伝えたい!! ところが、熱く話したのに相手にまったく伝わってなかった、なんていうことになったら、どれほど落ち込むことでしょう。恐ろしくて、考えたくもないですよね。
「伝える」と「伝わる」の違い
ここで注目していただきたいポイントが、一つあります。それが「伝える」と「伝わる」という言葉の違いです。おなじ漢字で送り仮名が違うだけですが、その意味するところには大きな違いがあるのです。
それは、「相手」の存在です。
たとえ、どれだけ自分が伝えたい内容を抱えていて、伝えるテクニックを持って、情熱的な伝え方を実践していたとしても、「伝える」には相手の存在がどこにもありません。
一方、「伝わる」という状況を考えてみましょう。そこには、必ず相手の存在がありますよね。自分と相手の間でやりとりされる情報が合致したとき初めて「伝わる」という状況が成り立ちます。
「伝わる」という状況を言い換えると、「文脈を共有する」と表すこともできます。「文脈」とは、脈略や背景、前後関係という意味で使われる言葉です。たとえば、「ちょう」という言葉を音だけで聞くとさまざまな意味があるので、その中から一つを特定するのは難しいですよね。でも「ちょうがひらひら飛んだ」「ちょうがおかしくて入院した」と文章で示されれば、その単語の前後にくる語句から本来の「文脈」を理解することができ、「蝶のことだ」「腸のことだ」と特定することができます。
「当たり前じゃん!」と思われるかもしれません。でも、当たり前ともいえません。
ずっと日本語を使いこなしている人からすれば他愛もないことかもしれませんが、日本語を習っている海外の人からすれば、「おなじ『ちょう』なのになぜ違う意味になるのですか。言っている意味がわかりません!」などと混乱してしまい、言いたいことが伝わらない可能性だって少なくないはずです。
「文脈」の理解は人それぞれ

日本語がいくら堪能な人とやりとりしていても、すべての言葉を相手が知っているわけではありません。さらに仕事でよく使う化学の専門用語となれば、相手が知らない可能性は大きいはずです。相手がこちらとおなじ文脈を持っているとはかぎりません。むしろ一人一人が違う文脈を抱えていると考える方が自然ですよね。何気なく話しているとついつい忘れがちになるのですが、伝えたい文脈をいかにして相手と共有するか。「伝わる」ように「伝える」には、相手が持つ文脈を思いやり、理解し、できるだけ先に把握しておくことが肝心なのです。
ということは、相手に伝わるように話すのに必要となるのは「上手に話すテクニック」ではないですよね。それよりも、話をする相手への「思いやり」や「心配り」の方が、ずっと大事になるのではないでしょうか。
普段、あなたが人と話をするときを思い返してください。
・自分ばかりが熱っぽく話していませんか?
・相手はどんな気持ちでその話を聞いていますか?
・その話を聞いて、相手はどんなことを想像するでしょうか?
あなたがこれから人に「伝える」話は、目の前の相手にどのくらい「伝わる」でしょうか。こればかりは秘策も特効薬もありません。日々のコミュニケーションを実践する中で、頭の片隅に「相手の文脈」への意識を感じながらトライ・アンド・エラーを重ねてみてください。
それでは皆さん、Have good communication with everyone!
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本田 隆行(ほんだ たかゆき)
科学コミュニケーター 神戸大学大学院 自然科学研究科 地球惑星科学専攻修了(理学修士) 。大学時代の専攻は地球惑星科学。大学院時代に探査機「はやぶさ」理学ミッションに携わる経験を持つ。その後、地方公務員事務職(枚方市役所)・国立科学館勤務を経て、国内でも稀有なフリーランスの科学コミュニケーターとして活動中。展示プランニングや科学実演の実施・監修、大学講師やイベントファシリテーター、サイエンスライティングなど様々な仕事をこなす。著書に「宇宙・天文で働く」(ぺりかん社)
